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朝ご飯は大切です

このお話はフィクションですが、作者が見聞きした内容を参考にしている所があります。

 別に悪いことをしているわけでは無いけれど、なるべく足音を立てずに玄関へと向かっていると、後ろから声をかけられた……

 まさに辞の如く、心臓が止まりそうだった。

おそる、おそる後ろを振り向くと、にこにこ?いやニタニタした笑顔を顔に貼り付けた父さんがそこに居た。


「朝飯ぐらい食べていったらどうだ?」


 そう言い終わると口元がによによ、と動いているのを見て、俺の行動が父さんには分かっていたのかと思うと急に恥ずかしくなってきた。

 なんとなく顔を合わせづらくて、そのまま居間へと向かうと、ちゃぶ台の上には既に朝食が用意されていた。


 なんだよ……父さんだけではなくて母さんまでも分かっていたのか……。


 泣きそうになりそうな気持ちを、ぐっと抑えながら席に着くとオニギリを頬張った。


「ハルが早く行きたい気持ちも分かるけれど、今日も暑くなりそうだ、お腹の中に少しでも何かを入れておいたほうが良いんじゃないか?」


 父さんの話を聞いて、確かにその通りだと納得しながら何気なく時計を見ると、もうすぐ6時を告げようとしているところだった。

 やっぱり、まだ少し早かったかもしれない……冬夜も昨日の事があって、まだ寝ている可能性が高いかもしれない……


 まだ気温が上がりきっていない朝、父さんが新聞をめくる音と鳥のさえずりしか聞こえなかった、それだけで俺の心を落ち着かせるには十分だった。


「ハル、父さんはハルに人として、男として、そして冬夜君の大事な人として、お互いに納得できるまで話をして受け入れる事が出来ると良いと思ってる。」


 父さんの言い方に違和感を感じたのが顔に出ていたのか、父さんは話を続けた。


「勘違いしてほしく無いんだけど、今すぐどうこうと言う事では無いけれど、きっと2人がおじさんになっても一緒に居られる可能性は今の医療では極めて少ない。」


 父さんの顔は真剣だった、これが現実なんだと思うと胸のあたりが重く苦しくなった。

 けれど、今すぐの事ではないと聞いて少しだけ救われた気がした。


 早く冬夜に会いたいな……


 ゆっくり、ゆっくりと食事を取り、時計が7時を回ったのを確認していると、父さんはまだ早いんじゃないかと笑っていた。

 俺は冬夜に会いたいと思ってから1時間も我慢した、今直ぐにでも行きたい気持ちを我慢して、あとどれくらい待てば迷惑にならないかと父さんに尋ねた。

 ほぉ〜と言いながら何かを考えていた父さんは、30分ぐらい食休みをしてから行っても良いと思うぞと言われ、俺は大人しく30分の休憩を取って冬夜の所へと急いだ。


 ✽✽✽✽


 「冬夜!おはよう!」


 冬夜の家に着いた俺は、部屋にいるだろう冬夜へと届く大きさの声で挨拶をした。

 俺の声に気付いた、おばあちゃんが笑顔で出てきてくれて冬夜の部屋まで案内をしてくれた。


「冬夜君、あけるわよ。」


 おばあちゃんの問いかけに中から冬夜が、どうぞと返事をしたけれど、扉が開くまで俺は悪い考えが頭から離れなかった。


「あれ?ハル来てくれたの?」


 目に飛び込んで来たのは布団の上に居たけれど、いつも通りの冬夜がオニギリを口に運ぼうとしていた所だった。

 良い方に予想外だった事から面食らっていると冬夜は俺を手招きしていた。


「ハル、色々と迷惑をかけてゴメンね……」


 眉をハの字にした冬夜の顔をみてなぜだか分からないけど涙がでそうだった。

冬夜は自分の隣をトントンと叩き俺に座ることを促しながら、穏やかな笑みを浮かべていた。

 隣に腰を下ろすと、冬夜にオニギリをすすめられたけれど、朝ご飯にいつも以上のオニギリを食べていた事を伝えると、朝ご飯は大事だもんねと笑っていた。


 その時、窓の所から涼を感じる音が聞こえてきた。


 あの時の風鈴……


「綺麗な音でしょ?」


 そう言って風鈴を見つめる冬夜の顔からは、病気なんて事は微塵も感じ取ることができないくらいに、いつも通りの冬夜だった。


「……ハル、おじさんから僕の事を聞いたよね?悩まないでと言いたいけど優しいハルなら難しいよね……あの風鈴の事ハルは覚えてる?あの時のひまわりの絵付けがされている風鈴だよ、僕ね調べたんだけど風鈴って魔除けなんだって!だから僕はまだ大丈夫だよ、だからハル……そんな顔をしないで……」


 この時の俺は涙を堪える為に、見るに耐えない顔をしていたに違いない。

 

今回も最後まで読んで頂きありがとうございます。

次回も読んでもらえると嬉しいです。

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