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覚悟

「ハルには思っている人が居るのかい?」


 はぁ?第一声がそれ?父さんが何を言いたいのかが分からず向き合ったまま沈黙が続いた……


 どれくらいの時間、この状況だっただろうか……ニコニコしているだけで話を振る姿勢が見えないまま時間だけが過ぎていった。


「いるよ……」


 無言の圧力に耐え切れずに口を開くと、父さんは目尻を下げながら、ハルにそういう相手が出来たことは喜ばしい事だなと言った。


 俺の中で、相手が冬夜だと知っても、父さんは喜ばしいと思ってくれるのかと言いようのない不安が襲ってきた。

 俺は冬夜と居ると素のままで居る事が出来、冬夜を思う気持ちすら自分にとって無くてはならない感情だと確信していた。


 恥ずべき事ではない……


「冬夜だから……」


 そう言葉にするも、父さんはさほど驚く事はなかったけれど両目を瞑り、そうだったんだな……と声を漏らした。

 父さんの反応が、いまいち良く分からずに出た言葉は。


「俺って気持ち悪い?」


 父さんは、そんな事はないハルにそんなに大事に思える相手が出来た事に成長を感じて感無量だったんだと、またしても目尻を下げた。

 その言葉に、今まで悩んでいた事などが馬鹿らしくなり父さんに救われた気がした。


 父さんは自分の中で何かを考えた後、俺にきちんと向き合い、口を開いた。


「ハルが知りたいのは、冬夜くんの今の現状かな?」


 さっきまでの表情とは違い、打って変わって仕事中の顔になった父さんにゴクリと喉が鳴った。

 俺が頷くと、父さんは俺は医者だけど神様ではないと前置きをした後、俺にも分かりやすく説明をしてくれた。



 父さんの話は、俺が考えていた以上に笑撃的だった……

 冬夜は、どれだけの事を自分の胸の内に隠していたんだ……

 それと同時に、その事に気付けなかった自分の不甲斐なさに涙を止めることが出来なかった。

 俺が落ち着くまで、ただ側に居てくれた父さん……口には出せなかったけど嬉しかった。


「ハル、父さんが話したのは医者としての話だ、きっと冬夜くんはハルにしか話せない事、そしてハルには話辛い事があるのではないだろうか?ハルが知りたいことは、直接冬夜くんと話をすることが、今のハルに出来ることではないか?」


 俺は、はい……としか言葉が出なかった。


 父さんは、無理に大人びる必要はないよと言いながら俺の頭を撫でると部屋を出ていった。


 ハルと話をして、さっきの話が現実だと思い知らされた時に俺は、冷静さを保てるのだろうか?

 俺に、冬夜と支えることはできるのだろうか?

考えれば考えるほどに頭が、こんがらがり無意識に涙が溢れてきた……俺って、こんなにも涙もろかったかな……そんな事を漠然と思っていると部屋の襖を叩く音がした。


 襖に背を向けて返事をすると、母さんが襖を開けて中には入らずに声をかけてきた。


「眠れないのなら眠らなくても構わない、布団に横になって目だけでも瞑って居るだけでも、体を休ませる事は出来るわよ……今日は母さんが布団の用意をしても良いかしら?」


 俺は泣き声が漏れないように頷いた。


 母さんはテキパキと布団の用意を済ませると、俺に横になるように促した。

布団へと横になったのを確認すると、1人で考えても答えが出ないのなら、明日だれかと話しをしてみてはどうなの?今ハルがするのは、きちんと休んで明日に備えることだと母さんは思うわ。

 そう言うと母さんは部屋を出ていった。


 今日の明日で、冬夜に会いに行っても良いのだろうか?

不安はあるのものの、会いに行かないという選択肢はなかった為、なるべくいつも通りの俺で会いに行こうと決めた。


 夢の中なのか……それとも起きていたのか……自分でも感覚が分からなくなった頃、空が白んで来たことに気付いた。


 冬夜に早く会いたい……


 気持が急いているのには十分気付いて、いたけれど会いたい気持ちを抑えることは出来なかった。

今回もさいごまで読んで頂きありがとうございます。

次回も楽しんで頂けると嬉しいです。

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