まだ成長期ですから
そよそよとした風邪を感じて目を開くと、こともあろう事か、俺は冬夜の膝枕をさる団扇で扇がれていた。
「ハル!気がついた?」
心配そうに俺の顔を覗き込む冬夜の顔を見て一気に現実へと戻された気がした。
ゴメンと言いながら起き上がろうとするも、まだ顔色が悪いからもう少し休んで居なよと優しく体を戻された。
「ハルごめんね……なんて言うか……理性が抑えられなかった。」
そう言いながら少しだけ困った笑顔を浮かべる冬夜に、なんで謝るんだよ……としか言い返す言葉が見つからなかった。
涼し気な音色を奏でる風鈴へと目を向けた時、窓の外の風景が思っていたのとは違い、おもわず変な声が出た。
「俺どれだけ、気を失っていた?」
冬夜の3時間くらいかな?との返事に言葉を失っていると、ハルのお母さんが今日は泊まっても良いと言ってたよと笑顔の冬夜を見て、自分の知らない間に数時間が過ぎて、色んなことが決まっていることに頭が混乱しながらも冬夜へと目を向けると、バチリと目が合った。
「ハル今度は優しくするから、また口づけても良い?」
冬夜の溢れ出る色香に、あわてふためいた俺は冬夜の腰に抱き、出た言葉は今日はダメ……だった。
そんな俺の態度に冬夜は今まで見たことがない程の大きな声を出して笑っていた。
そして少し落ち着くと、俺の髪を弄びながら、それなら明日なら大丈夫だねと、断る選択肢を認めないと言った言い方をした。
冬夜に髪を撫でられていると次第に睡魔が襲ってきた……。
「ハル……ねちゃった?今日は口づけはダメと言ったけど、おでこなら良いよね?さきに寝たハルが悪いんだからね……」
そんな風に冬夜が問いかけて来た気がして、おでこに何かが触れた感覚を感じたと同時に意識を手放した。
❇❇❇❇
チリリーン、チリリーンと奏でる風鈴の音で目覚めると、眼の前には冬夜の顔があった。
まじまじと見ると、長く艶めいた睫毛が呼吸に合わせて動いていた。
少し乱れた浴衣から覗く鎖骨が見ては行けないものを見てしまった背徳感からか、全ての血流が顔に集まったかのように顔に熱を帯びたのを感じた。
「ハル……起きたの?」
目を擦りながら話しかけてき冬夜の色気に、言葉通り開いた口が塞がらなくなった俺は、なんとも間抜けな顔をしていただろう。
そんな自分の考えを悟られないために、風邪が悪化するよと冬夜の襟元を正しながら胸の高鳴りが治まるのを期待したけれど、期待とは裏腹に更に胸がドキドキと鼓動を早めていた。
俺の胸が落ち着きを取り戻したのは、登校する時間になってからだった。
「今日はハルと一緒の朝餉で楽しかったな。」
そう隣で笑顔を見せる冬夜に俺は意を決して冬夜へと言葉を投げかけた。
「冬夜、今度は俺が!冬夜の事を抱きしめるから。」
俺の言葉を聞いた冬夜はニコニコしていた顔が、みるみるうちに朱色へと色付き目が大きく見開かれその瞳が俺を捕らえた。
そして俺を捕らえていた瞳が水鏡が写すそれと同じに見えた時、この状態は見られたくないのではと思い、冬夜の手を引き歩みを進めた。
「冬夜、俺はまだ冬夜よりは小さいけど成長期だし、今後は色んな意味で大きくなるから、その時には俺は抱きしめたいし冬夜を甘やかしたい。」
そう話すと、後ろから鼻をすすりながら楽しみにしてるねと声が聞こえた。
その後はお互いに無言が続いたけれど気まずさを感じることはなく、俺には安らぐひとときだった。
初めて俺が冬夜の手を引く状況になって、なんとなく冬夜の気持ちが分かる気がした。
「ハル、昨日はダメって言ったけど今なら口付けしても……」
冬夜の質問を最後まで言わせては駄目だと本能的に察して、遮るようにダメと言うと続けて帰りまで待ってと言葉を続けると、繋いだ手が熱を帯びた気がした。
「帰りに……約束だよ。」
冬夜の問いかけに俺は頷いた。
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