手紙
白い家の近くまで行くと、門の所で1人の女声が立っている事に気付いた。
優しそうな顔をした、なんとなく雰囲気が冬夜に似ている、その人は間違いなく冬夜のおばあちゃんだろう。
小夏ちゃんと雷と風は到着したことに達成感を感じているのか、やったぁ〜到着!とはしゃいでいた。
俺は冬夜に似たおばあちゃんを見て、早く冬夜と遊びたいという気持ちが沸々と沸き上がってきた。
そんな中、亜樹ちゃんだけは冷静だった。
「いきなり大勢で押しかけてしまって、スミマセン僕の名前は白石亜樹と言います。僕たちは夏休みの時に冬夜君と仲良くなったのですが連絡先を交換していなかったので、良かったら教えて頂けませか?」
そう亜樹ちゃんが話すと、冬夜のおばあちゃんは、冬夜くんが話してくれてた、お友達が来てくれたなんて嬉しいわ立ち話も疲れてしまうからどうぞ中に入ってと、お庭へと案内してくれた。
お庭には色とりどりの花が植えられており小夏ちゃんが好きなジャンルの本に出てきそうな場所だった案の定、小夏ちゃんは目をキラキラと輝かせていた。
おばあちゃんと目が合った瞬間、もしかしてあなたがハル君?そう尋ねられて、なんとなく気恥ずかしくて俺は小さく頷いた。
本当に冬夜くんが言ってた通りねと微笑むとお庭の中心にある椅子へと案内してくれた。
俺たちは、おばあちゃんが出してくれたお菓子とお茶を頂きながら色々な話を聞かせてもらった。
おばあちゃんの話によると、今は忙しくしているみたいで返事を書けない可能性が有ること、ただみんなからの手紙が届いたら、物凄く喜びそうとの事だった。
俺たちは、おばあちゃんから連絡先を教えて貰いお菓子とお茶のお礼を言っておばあちゃんの家から家路へと向かった。
帰り道で、手紙は各自で書いて纏めて送ることにした、亜樹ちゃんからの提案で送り主の住所と名前は俺になった。
みんなの手紙を封筒に入れてポストに投函後は、返事が来てないかと家のポストをドキドキしながらチェックしていた、が思いとは裏腹に東京から返事は来なかった。
「ハル、やっぱり冬夜は忙しいのかもしれないね」
そう亜樹ちゃんに言われて、確かにおばあちゃんも返事が書けないかもと言っていた事を思い出す。
返事は来ないかもしれない、分かっては居るけど何故か胸の奥がモヤモヤした。
「ハルちゃん!亜樹ちゃん!」
俺のモヤモヤを吹き飛ばす様な大きな声で叫びながら小夏ちゃんが小走りで、こっちに向かってきた。
そして亜樹ちゃんの目の前で漫画のようにおもいきり転んだ。
そのまま動かない小夏ちゃんに亜樹ちゃんは近づき、小夏ちゃん、前はちゃんと見て歩こうねと優しく声をかけつつ、小夏ちゃんを起き上がらせる亜樹ちゃんは、本当のお兄ちゃんのように見えた。
小夏ちゃんは俺たちの姿を見て、冬夜からの返事が来たか気になりすぎて思わず小走りになってしまったみたいだった。
まだ返事が来てないと伝えると、分かりやすく表情が崩れたが、すぐにいつもの明るい小夏ちゃんに戻っていた。
「冬夜くん、やっぱり忙しいのかもしれないね」
そう話す小夏ちゃんは、やっぱり何処か少し寂しそうに見えた。
その後は期末テストだったりと、みんながみんな忙しそうにバタバタしていた事もあり、冬夜から返事が来ないとモヤモヤする事は無くなって居た。
そして、亜樹ちゃんと小夏ちゃんが卒業した今
短かった春休みが終わりを告げ、この学校の最後の1年が始まる。
「ハル、俺たちが高校生になっても遊ぼうな!」
そう笑う亜樹ちゃんに少しだけ救われた気がした。
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