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涼を呼び寄せる鈴とした音色Part1

 どれくらいの時間、冬夜を抱きしめていただろうか……

体感的には長い時間、癒やされていた気もするけれど実際は数分なんだろうなと思っていると顔を上げた冬夜と視線が交わった。


「ハル、僕は今のこの状態は凄く幸せなんだけど本当は、されるよりする方が好きなんだ。」


 冬夜が言い終わらないうちに、俺と冬夜の位置が違和感もなく入れ替わった。

 冬夜の腕の中に、すっぽりと納まって、さっきまでの癒やされ感とは違う安心感に包まれた。

 もう少し、このままで居たいと思った時、ふいに冬夜の腕に力が込められた気がした。


「ハル大好きだよ、僕はハルが居てくれるだけで毎日が幸せな気持ちになれるんだ。」


 そう耳元で囁かれ顔が熱くなるのを感じた。

冬夜と目を合わせ、俺もと答えると冬夜は眉尻を下げながら頷き、今日もベンチで話してから帰ろうと言われた。

 ここ最近は毎日、開花したら沢山のひまわりが見渡せる花畑の近くにある。


【あのベンチ】


 俺達に意味のある、その場所が見渡せるベンチに座りながら時間の許す限り話をするのが日課になっていた。

 話す内容は本当に些細なことばかりだけれど、冬夜の事を色々と知ることが出来た。

 俺のことが、どれだけ好きかと話す時は恥ずかしくて居た堪れなくなる事もあるけれど同時に嬉しくもあった。

 冬夜の素直さに俺も感化され、恥ずかしさから上手く言葉にすることが出来なかった冬夜への思いも今は伝えることが出来るようになった。


 冬夜に手を引かれて、いつもの道を歩いていても今はもうカエルの声は聞こえない。

 トクトクトクと、いつもより早めにリズムを奏でる俺の鼓動しか分からなかった。

 お互いに、話しかける切っ掛けを探っているのか、無言の時間が続いていたけれど、不思議なことに嫌ではなかった。


「ハル」


 そう呼ばれてベンチに着いたことに気付き、洞爺の隣に腰を下ろした。

 ひまわりが咲き誇るのは、もう少し先になりそうだと考えていると視線を感じ、冬夜の方へと視線を向けると、眉を八の字にした冬夜が口を開いた。


「ハル覚えてる?あの日、僕はハルにここで声をかけれた。」

 

 俺は頷くと、繋いだ手に力を込めた。


「覚えているよ、冬夜を初めてみた時、なんて綺麗な子なんだろうと思ったら、思わず声をかけてしまったけど、素っ気なくて嫌がられたのかと思ったよ。」


 今なら違うと分かっていても、初対面の時は少し冷たいなと感じたのも事実だった。


「あの時の僕は自分の判断だけで、色々なことを諦めていた時期だったから、そう受け取られても仕方ないよ。」


 苦笑にがわらいを浮かべる冬夜は、出会った頃と比べると本当に色んな表情を見せてくれるようになった。


「あの頃と比べると、冬夜は冬夜は背も伸びたし髪も伸びたね、身長は完璧に俺を追い越してどこまで伸び続けるのか気になってきた。」


 俺の話をニコニコとした表情で聞いている姿を見ると、その表情の1つ1つが可愛く見えるから、なんとも不思議な感覚を覚えた。


「身長は気付いた時には伸びてたんだよ、関節が痛いなと思うと次の日に伸びてる気がする、髪は実は願掛けしてるんだ、叶った時に切るつもり。」


 俺と話す時の冬夜は優しくて穏やかで、まるで夕凪のようだ。


 チリーンチリーン


 遠くから、聞き覚えのある音色が近づいてくる。


「ハル、この音がなんの音だか分かる?凄く心が落ち着く音色だよね。」


 そうか冬夜は見たことが無いのか……不定期的に現れる、おっちゃんが来たら冬夜はどんな反応をするのかが楽しみになり、少し待っててみなよと少し含みをもたせた言い回しで声を掛けた。


 チリーンチリーンと徐々に近づいてくる音色と車輪が回転する音と共に、だんだんとその正体が目に飛び込んできた時、冬夜の瞳がキラキラと星空の様に輝いていた。

 この時の冬夜の瞳の輝きを俺は忘れる事は出来ないだろう。


「ハル!なにこれ!凄く綺麗だね。」


 想像以上に喜ぶ冬夜の姿に頬の筋肉が緩むのを止めることが出来なかった……。






 

 今回も最後まで読んで頂きありがとうございます。

少し長くなりそうでしたのでPart1、Part2に分けて更新します。

次回は少し短めになるかもしれませんが、読んで頂けると嬉しいです。

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