悪鬼羅刹があらわれた
「さぁ、話をしようか」
連行されるように学校の近くの公園へとやってきたが、俺の前には鬼がいる………
優しく冷静な姿形はしているけれど、纏っている空気が違いすぎる。
キィキィとブランコを揺らしながら何かを考えてい居るようだった。
「ハルも隣に座りなよ」
そう言われて言葉短めにハイと応えると、風の隣のブランコに腰を下ろした。
暫くの沈黙が流れた後、耐えられずに風に声を掛けたと同時に。
「少し黙ってて」
そうピシャリと言われてしまった。
どれくらいの時間が流れただろうか………
俺の中では数日間がすぎたような疲労感を感じたその時。
「よし、理解した。」
そう風が言葉を発したが俺には、風が何を理解したかを理解する事が出来なかった。
「ハルは人として未熟すぎる、今まで亜樹ちゃんが先回りしてフォローしていた事に気付いていなかったんじゃない?」
そう言われて思い当たる事があって返す言葉が見つからなかった。
確かに亜樹ちゃんはしっかりしていて頼り甲斐があったから、ついつい頼り過ぎてた所があったと思う。
「ハルは、こなっちゃんにフォローされてた事も気付いていなかったんだろうね。」
風の言葉に思わず、驚いてしまった。
暴走系で夢見がちでな、こなっちゃんにフォローサれていたなんて………。
「そういう所だよハル、周りが全然見えていない。」
風にそう言われ、自分が気づかない所で皆にフォローして貰っていた事に気づかなかった事に、恥ずかしくなった。
「まぁ、そんな事はどうでも良いんだけどね」
俺は風の発言に耳を疑った、風が何を言いたいのかが本気で理解が出来なかった。
「ハルが自分で気付くのを待つのも悪くないと思ったんだけどさ、さっきのアレは俺の中の許容範囲を超えてきたからね………まぁハルに俺の気持ちは分からないと思うけど。」
そう話す風の顔を、なんとなく見ることが出来ない。
風は俺が周りが見えてないと言った、風を怒らせる何かをやらかしたのは間違いなさそうだ。
きっと朝、教室に入ってから授業が終わるまでの間。
もしかして………雷に対する態度………
確かに、さっきの雷に対しての言い方は俺が悪かった。
双子にはお互いの気持が共有する事が有ると聞いた事がある。
雷が傷ついた感情を風が共有したのだろうか?
視界の端で風を盗み見ると、口角を上げて感情が読み取れない目で俺のことを見ていた。
本当に怖い………そう思うと指先がカタカタと震えていたことに気付いた。
「風、雷を傷つけてごめん………」
頑張って絞り出した声が指先と同じく震えていた、身体全体が震えていたのかもしれない。
「ハルは俺が怖いから謝るの?」
そう言うとブランコから降りて俺の前に、しゃがみこみ、俯いている俺の顔を下から覗き込んだ。
「本当に反省したんじゃなくて、俺が怖いから謝ったの?」
そう問いかける風の顔は、さっきまでの鬼の形相ではなく、いつもの風だった。
ただ悲しさや寂しさを含んでいる様な気がした。
「それは違う!確かに気付くきっかけになったのは風が怖かったって言うのも有るけど、改めて自分が周りを見ていなかったって気付いたよ。」
風はそっかと言うと一瞬、何かを考える素振りを見せた後に、口を開いた。
「ハルは今、冬夜と付き合っているの?」
不意打ちの質問に動揺した俺は、ブランコから落ちた。
風は、ふはははと笑うと分かりやすく目尻が下がっていた。
なんで気付いたのと聞けば、空気感が変わった気がしたと答えてくれた。
風に手を貸してもらい立ち上がり、ブランコを囲む柵に2人で腰を下ろすと、真剣な面持ちになった風が口を開いた。
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