本当に怖いのは
「ハルごめんね」
教室に入るやいなや、冬夜は俺の席まで来て何度も何度も誤っている。
そんな、やり取りを見ていた雷が、もう許してやったらと声を掛けて来た。
心配してくれて居るのは分かる………分かるけど………
「雷には関係ない………」
そう言葉を零してしまった。
発したと同時に、悪気は無かったにしろ変な言い方になってしまった事に気付いて、雷に謝ろうとした。
けれど、それよりも早く雷が口を開いた。
「そうだよな………ゴメン。俺が源さんに謝りに行った時と重なってしまってさ………確かに俺は関係ないな」
そう言いながら頭を書いて見せる笑顔が、雷が傷ついているのを隠している笑顔だと直ぐに分かった。
雷に何を言わなければ………
今、話しかけたら言い訳っぽくないか?
考えだしたら、体が動かなくなってきた、なんだこれ。
俺を中心にして変な空気になってるのが分かる。
視界の端に映る冬夜は自分のせいと、いやおうなしな表情をしていた。
他の学友達は、どう思っているんだろう?
なんだか息がしずらい………
この変な空気を変えたのは、この状況を誰よりも冷静に見ていた風だった。
俺の背中にバシッと1発、平手が飛んできた、と同時に息が楽になった。
「ハルは、あとで俺と2人で話をしよう。」
俺が頷いたのを確認した風は冬夜に何かを話しかけた後に席へと戻っていった。
冬夜は複雑そうな表情を浮かべながら自分の席へと戻っていった。
授業を始めるチャイムと同時に先生が入ってきて何かを離しているけれど、まったく頭に入っていかない。
✽✽✽✽
「ハル今日は全然集中していなかったな、もうすぐ夏休みだからと浮かれていると期末で泣くぞ。」
そう言いながらガハハハと豪快に笑いながら教室を出ていった。
ボーーっとしていたら、1日が終わった………
風が雷と話しているのが目に入る……雷、楽しそうに笑ってる。
俺は、関係ないと言ってしまった事を改めて反省した。
雷は風に何度か頷くと荷物を持って教室を出ていってしまった。
謝れなかったな………
風は雷を見送ると俺のもとに来て、話しするからと有無を問わず釘を刺して、今度は冬夜の元へと向かった。
風と話をしている冬夜は【僕は機嫌が悪いです】という感情を隠す事など、さらさら無いらしく誰もが見ても不機嫌なのが見て取れた。
そして大きなため息を落とすと、荷物をまとめて居た。
俺が不貞腐れた事でことが大きくなってしまったと思っていると。
大きな足音を立てながら冬夜が俺の元にやってきた。
「凄く不愉快だし、風の言う事を聞きたくないないけど、今日は先に帰るね、朝は本当にごめんね明日も一緒に学校行こうね、約束!」
そう言いながら机の上に乗せていた俺の手に指を絡ませながら。
本当は一緒に帰って仲直りしたかった。
冬夜はそれだけ言うと、絡めた指を解き一度も振り返ること無く教室を出ていった。
✽✽✽✽
「ハル、どこで話をしようか?」
振り返ると、全てを悟ったような表情をした風が立っていた。
えっ怖い、風の表情がいつもと違って怖い、何を何処まで把握しているんだろう?
風に向けている俺の表情は、ひきつっているに違いない。
胸の中で【露営の歌】を歌いながら自分を励ましていると。
風は早く行こうと俺に笑顔を向けた。
いや笑顔と言って良いか分からない………
一見笑顔に見える………が目の奥が笑っていない。
友だちに対してこんな事思っては駄目だと感じながらも、風が怖すぎる。
そもそも何に対して怒っているか分からない。
俺が教室内の空気を悪くした事を怒っているのだろうか?
ハル、さぁ行こう………
風の言葉に背中がゾクリと震えた………
俺は無事に家に帰ることが出来るのだろうか……
いつも最後まで読んで頂きありがとうございます。




