春光(しゅんこう)
いつもよりも早く、家を出たこともあり人の姿はまばらだった。
特に約束をした訳ではないけれど昨日のベンチで待っていたら冬夜に会える気がすると思うと顔が綻んだ。
昨日の時点では、冬夜に対する気持ちが【恋心】かが分からなかった。
父さんと話をして、気持ちにわざわざ急いで名前を付ける必要は無いだろう?と言われたのが、俺の心にしっくりときた。
と言いながらも父さんは母さんを一目みてすぐに恋だと感じたそうだ。
十人十色、誰かがそうだからと言って自分もそうで無ければならないと言う決まりはないよ。
笑顔で離す父さんの言葉は色んな意味で胸に刺さった。
✽✽✽✽
ベンチに腰をかけ、ただただ春の日差しと柔らかな感じていると、寝不足な事もあり襲い来る睡魔に抗う事が出来そうになかった。
「………ル?………ハル!」
微睡みの中で誰かに呼ばれ優しく体を揺らされてる感じがして目を開くと目の前には冬夜の顔があり思わず変な声が出てしまった。
ハルいつから寝てたの?風邪をひいてしまうよ?と心配そうに眉が下がった冬夜に、俺はそんなにやわじゃないよと言うと、そっかと今度は目尻を下げた。
冬夜に手を引かれベンチから立ち上がると、そのまま手を繋いだ状態で歩き出した。
あまりにも自然な流れすぎて、前の学校でも手を繋いで歩く相手が居たらと思うと、なんだか面白くなかった。
繋いだ手を少しだけ引き寄せ冬夜が俺の方を向くように促し、繋いだ手を冬夜に見せながらコレと言葉を発すると。
少しだけ何かを考えた素振りを見せた後、繋いだてをつなぎ直し射るような視線を向けてきた。
「僕、ハルだから手を繋ぎたくなったんだ、まったく離す気ないけどいいよね?」
そう満面の笑みで言われたら、嫌だとは言えなかった。
そもそも、冬夜と手を繋ぐ事が嫌なのでは無くて周りに見られるのも、手に汗をかいてるのを冬夜に気付かれるのが嫌だった。
ただ単に恥ずかしいだけだ。
「ハル、僕と付き合ってくれてありがとう」
冬夜に目を向けると泣きそうな笑顔を俺に向けていた。
そんな表情を見て、手を離したいなんて気持ちは無くなってしまった。
小さな頃は男女関係なく手を繋いで歩いていたことを思い出した、いつの頃からか誰かと手を繋いで歩く事が無くなった。
冬夜にてを繋がれた時は恥ずかしかったけれど、今は恥ずかしい気持ちが薄れてきたからか、悪くないなと感じた。
そんな事を考えていると、冬夜が何かを言いたげに俺のことを見ていた。
俺は繋いだ手を少し持ち上げ冬夜に見せながら、初めは恥ずかしかったけど、冬夜だから大丈夫と伝えると。
無意識は罪だよと言葉を溢し俺から顔を背けた。
言い方を間違えたのか?でも嫌そうな表情ではなかった、むしろ艶っぽいと言うか何と言うか………
その表情は男の俺から見ても美人だなと感じた。
✽✽✽✽
俺の見た目は父さん似だ。
細く柔らかい色素の薄い髪、大きな目に茶色の瞳、身長は父さんに似れば伸びるはずだけど、性格と体格は母さんに似ているから過度な期待はしないほうか良さそうだ。
逆に冬夜は、コシの有るサラサラとした黒髪に、長い睫毛の切れ長の瞳、最近やたら身長が伸びて俺より高い。
あの時、無意識のうちに自分とは正反対の容姿を持つ冬夜に目を奪われたんたと、今だから確信を持てる。
✽✽✽✽
「ハル、ぼーっとして大丈夫?」
そう聞かれ、冬夜は美人だと改めて確信したと伝えると。
「ハル、そういう所だからね無意識に言ってるんだと思うけど、ドキドキし過ぎて僕の心臓が止まってしまったらどうするの?」
そう話す冬夜の頬は桃色に染まっていた。
大人っぽくて、冷静な冬夜が俺の前では面白い程にクルクルと表情を変えるのが特別っぽくて嬉しかった。
それと同時に、何故か桃色に染まった顔を俺以外には見せてほしくないと思うと同時に、全身の血が顔に集まったかのように熱くなった。
そんな顔を見られたくなくて、冬夜の手をひく形で学校へと向かった。
校門を目に捕らえたと同時に繋いでいた手を離し冬夜と向き合い………
「俺の方こそ、付き合ってくれてありがとう!」
そう、きちんと冬夜に伝えることが出来た。
「ほんと、そういう所だよ………もう絶対に手放せなくなる……」
そう言いながら、両手で顔を覆いしゃがみこんでしまった。
きっと冬夜の顔は桃色よりも濃い色へと色付いてそうだった、なぜならば冬夜の耳が真っ赤になっているのが目に飛び込んだから………
冬夜、学校に行こう!
俺達2人は赤い顔をして教室へと向かった。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございます。




