それぞれの思い〜ハル視点〜
離れゆく冬夜の背中をぼんやりと眺めながら、姿が俺の視界から完全に見えなくなったのを確認すると、家へとの帰路に向かった。
経験が無さすぎて、付き合うって何をすれば良いのかが漠然としすぎていて分からなかった。
今より親しい関係なんだろうか………
考えれば考える程に混乱してきて家に付いた頃には考える事を諦めた。
ただいまと、玄関を開けるとそこには見覚えのある革靴が揃えられているのが目に飛び込んできた。
約1年ぶりにみた、その革靴に思わず涙が溢れてきた。
「ハル、おかえり。」
お腹に響く低くて心地よい声の主が目に入ると同時に俺は勢いよく抱きついた。
「父さんおかえり。」
父さんは、大きくなったなと俺の頭をなでつつ、まだまだ甘えたい時期なのにゴメンなと俺を抱きしめてくれた。
部屋の奥から、母さんがご飯が出来てるから早く手を洗ってきなさいと言う声が最近は聞いたことないぐらいに嬉しそうな声色だった。
父さんの服に涙をなすりつけると、手を洗ってくるからと手洗い場へと向かった。
急いで手を洗い荷物を片付け居間へと向かうと、テーブルの上にはいつも以上の品数の夕ご飯が並べられていた。
俺は父さんの向かいに座り父さんの顔を見ると、ふと疑問が浮かんだ。
「この時期に父さんが帰ってくるのは珍しいね」
思ったと同時に声に出ていた。
あっと思った時には、父さんの表情が曇った感じがした。
「ハルはまだ、聞いてなかったんだな……」
そう話す父さんの声がワントーン落ちた感じがして、何か良くないことが起きてるのではないかと、胸が締め付けられるようだった。
父さんは、母さんと目を合わせると母さんは笑顔で頷いていた。
「ハル、来年にはハルはお兄さんになるんだよ」
父さんの発言に、自分でも何処から出たか分からない声とも言えない変な音が出た。
お兄ちゃんになる
嬉しさを噛み締めつつ、父さんへと顔を向けると他にも何か報告がありそうな顔をしていた。
こう言う時の感はなんとなく当たる、注意深く顔色を伺っていると少し困ったような表情をして、1つため息を付いた。
「実はな、父さんは診療所に戻る事になったんだ今より少しだけ、お給金が減ってしまうんだけれど、お産婆さんも来てくれる事になっているんだ」
その言葉を聞いて疑問を抱いた、何故いま居る大きな病院から離れてお給金が減ってまで、こっちに戻ってくるのだろう?
母さんの、お腹に赤ちゃんが居る事だけが理由では無さそうだけれど………
不安な気持ちが表情に出ていたのかもしれない、父さんは表情がふわっと柔らかくなった。
「源さんがな、腰を痛めてしまって父さんも見たことのある症例だった事もあって戻ることにしたんだよ。
時々あっちの病院に行く事はあるけど、これからは母さんとハルと父さん一緒に暮らせるんだよ」
そう話す父さんは嬉しそうだった。
「母さんや源さんが、何か悪いことが起きてる訳ではないんだよね?」
そう問いかけると、そんな事はないよと答えてくれた。
その言葉を聞いて、さっきまでの不安な気持ちはふわっと消えていた。
母さんの方を向くと、今まで1人で頑張ってきた母さんが見たことの無い程に穏やかな顔をしていた。
そして母さんを見つめる父さんの顔も幸せそうに見えた。
そんな2人の姿をみて漠然と、どんな恋愛をして今に至るのかが気になった。
ねぇ父さん、聞きたいことがあるんだ………
父さんは、男同士の話の誘いかな?と笑顔で首を傾げた。
俺が頷くと、少し合わない間に見たことのない表情をするようになったなと、目を細めると食事の後に話をしようと言ってくれた。
母さんは、そんな俺達を見て何故か嬉しそうにしていた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
次回も読んで頂けると嬉しいです。




