気付かなかった気持ち
俺の目を見て、好きだと言う冬夜の眼差しは真剣そのものだった。
その真っ直ぐな眼差しに俺の頭は真っ白になってしまい時間だけが、ただただ過ぎていった。
ハルを困らせるつもりは無いんだ………
気持ち悪くて、ごめん………
冬夜の口から言葉がこぼれたと同時に考えるよりも先に体が動き、冬夜の事を抱きしめていた。
「気持ち悪くないから、冬夜の事を今まで1度だって気持ち悪いなんて思ったことは無いから」
そう声を掛けると、思っていたよりも薄い冬夜の体がビクリと震えたのを感じ抱きしめていた腕に力を入れずには、いられなかった。
✽✽✽✽
冬夜の事を好きかと言われたら間違いなく、首を縦に振るだろう。
けれと、それが恋愛として好きなのか友人として好きなのかが曖昧だった。
前に冬夜が源さんの事を、強くて優しいと言った時に感じた胸の痛みや、先日思い切り避けられた時の苛立ちの正体が冬夜に対しての【恋心】だとしたら、辻褄が合う。
俺の中にまだ芽生えたばかりの【恋心】に正直に向き合いたいと思った。
✽✽✽✽
「俺も冬夜の事が好きだ」
俺の言葉に、腕の中から見上げてくる冬夜の瞳から、みるみるうちに、涙が溢れて落ちた。
「これって、現実なのかな………」
声にならない声でそう問いかけてきた冬夜に、現実だよと伝えると下を向いて体を震わせ声を殺して泣いているようだった。
そんな姿を見ると守ってあげたいと言う、気持ちが湧いてきた。
冬夜が落ち着くまで背中をトントンと優しく叩いていると俺自身の頭の中もクリアになっていく。
これ以上、言葉を発したら引き返せなくなると分かっては居ても、自分の中で芽生えた気持ちを押し殺すことは出来そうになかった。
「冬夜、俺達付き合わないか?」
顔を上げた冬夜の顔は涙で濡れていて妙な色気を感じさせた。
何を言われたか理解出来てなさそうな冬夜に、もう1度
俺達付き合わないかと問いかけると、瞳が大きく開くき、嬉しいとだけ呟いた。
俺は今一度、冬夜を強く抱きしめながらも頭のなかの1部はどこか冷静で、風や雷や亜紀ちゃんに対しては1度も抱きしめたいと言う気持ちになったことがなかった事、女の子の小夏ちゃんに対しても、冬夜に対するような気持ちになった事が無かった。
冬夜だから、冬夜だったから俺の中に芽生えた感情なんだと思うと少しくすぐったいような、ふわふわとして気恥ずかしかった。
おれが、そんな事を考えてるとは知らずに冬夜は、ありがとう少し落ち着いたと俺の腕の中から抜け出てしまった。
腕の中にあった温もりが消えて、言いようのない不安な気持ちになった。
ハル!
名前を呼ばれ冬夜へと視線を向ければ、夕日に染まった笑顔をたたえていた。
この笑顔をずっと守ってあげたい、そんな事を考えていた。
「遅くなりそうだから、もう帰ろう」
ベンチから立ち上がり、どちらかとも言わずに手を繋いだ。
冬夜は何故かベンチの方を向いて動かなくなったから、どうしたのかと声をかければ、チューリップが咲いていると答えた。
日に日に暖かくなってきて、春めいてきていたのだろう。
「あのチューリップもハルっぽいけど、やっぱり向日葵の方がハルっぽくて好きだな」
そう笑顔を向けられると、なんとなく気恥ずかしい気分になりつつも向日葵みたいって言葉が凄く嬉しかった。
他愛もない話をしながら道を歩いていても、今までと違うと思うと不思議な気分だった。
気付いた時には、いつもの分かれ道に着いてしまっていた。
もう少し話していたかったな……
そんな思いとは裏腹に、冬夜はまたねと笑顔を向けると歩いていってしまった。
離れゆく冬夜の背中を見送り、姿が見えなくなったと同時に一気に力が抜けたように、そのばに座り込んでしまった。
そして1つの疑問が頭をよぎった。
付き合うって何をすれば良いんだろう………
最後まで読んで頂きありがとうございます。
ゆっくりですが、更新していければと思っています。




