何がムリだか分からない
今日は、なんだか時間が過ぎるのが遅く感じる。
幾度となく教室の時計へと目を向けた所で、一向に針が進んでいるようには見えなかった。
「ハル大丈夫?」
雷にそう声を掛けられて大丈夫だよと答えてみたものの、本当は全然大丈夫ではなかった。
「冬夜と何かあったんだよね、話せる時になったら俺は聞く事はできるから頼って」
そう話す雷は本当に、俺と同じ年なのだろうかと思えてくる。
風は今日は休んでいるし、雷も色々と心に思うことがあるんではないか?
俺は雷に、ありがとうとだけ笑顔を浮かべ伝えた。
雷とやりとりをしつつ、今日は何故か冬夜と目が合わないどころか、まったく接点が無かった………
話しかけようとしても、ふらりと教室から出て行ってしまい為す術もなかったからだ。
色々と答えの出ない事を考えていると今日の全ての授業を終えることを伝えるチャイムが鳴った。
なんとも言えない変な空気に気付いた雷がハルと俺の頭をグシャグシャと撫で回しながら笑顔を向けてきて、周りに気づかれないように耳元に口を近づけてきた。
「ハル、今俺の背中に冬夜の視線が刺さってる感じがするよ」
苦笑いをしている雷の言葉を聞いて雷の肩越しに冬夜を盗み見ると、今までに見たことのない表情をしていた。
「きちんと話し合って、お互い納得の行く決論がでると良いな」
雷の言葉に頷くと、今日は冬夜と2人で帰るよと伝えた、雷はガンバレと肩をポンと叩くと荷物をまとめて帰って行った。
俺は雷もガンバレと言い逃してしまった………
✽✽✽✽✽
俺は無造作に教科書を鞄に突っ込むと冬夜の元へ向かい帰ろうと伝えた、冬夜の瞳が揺れた様に感じたと同時に目線を逸らされた。
冬夜の行動の意味が分からなかったけれど、きちんと話せる様に、冷静に冬夜の観察をしていたが重い空気に耐えられずに一方的に意味のないことを喋りまくってしまった。
うんうんと相槌は打ってくれるものの、やっぱり今までと違う気がするのは気の所為では無いと分かる。
冬夜の準備が終わったのを確認すると、行こうと声をかけた。
いつもは隣を歩いていて気づかなかったけれど、向かい合った状態ではハッキリ分かる。
明らかに冬夜が俺より背が高くなっていた。
一体なにを食べたらこんなに大きくなるんだと羨ましく思いジーっと見つめてしまった。
えっなになに?と言いながら冬夜は顔を腕で隠してしまった。
「身長いつの間にそんなに伸びたの、まじで羨ましい」
無意識に出た言葉に冬夜はクスクスと笑いながら、そんなに変わらないよと言った。
学校を出て歩いているが、無言が続いてなんとも耐えられない空気が流れていた。
「最近は、暖かくなってきたよな」
そんな何気ない言葉を紡いでも、冬夜はうんうんと空返事をするだけだった。
このまま、歩き続けても何も変わらない………
この場所から近い、ゆっくり話せる場所は………
あの場所しか無い。
しかし、その前に冬夜に確認したいことがあったから隣を歩く冬夜の前に立ち向き合った。
「冬夜は目的があって歩き続けてるの?」
俺が尋ねると何故か俺から視線を外して遠くをみながら何かを呟いた。
俺は聞き取れなかったから冬夜の口元に耳を近づけ、もう1回いってと言い終わるや否や冬夜はピヤッと変な声を上げた。
子猫のマネでもしているのかと思い冬夜の方に顔を向けると不可抗力だったが、鼻と鼻がぶつかってしまった。
俺は悪いと思い謝ろうとしたと同時に、冬夜の顔はみるみる内に朱色へと色づいていったように気づいた時に、冬夜はムリムリムリと言いながら手で顔を覆うと、しゃがみこんでしまった。
しばらく待っていたが、冬夜がその姿勢を崩すことがなかったので俺は、行く場所が決まってないなら近くに座ってゆっくり話せる場所があるから行かないかと尋ねると何度か頷いては居たが、相変わらず目は合わせてくれないし、少し心配になってきた。
「ハルが先にいって………」
そう言うも立ち上がる素振りも見受けられなかったから、大丈夫?立てる?との問いかけに大丈夫、大丈夫と壊れたラジオの様に繰り返していた。
「ちゃんと、付いていくから先に行って」
絞り出したような声で言われたら、先を歩くしか無かった。
ジャリッジャリッと規則的な音が後ろから聞こえるから冬夜が後ろから付いて来ているのが分かる。
ただ、昨日から変わってしまった冬夜の気持ちは分からない。
俺達に何か変わった事はなかったはずだ………
もしかしたら、気付かないだけで俺が何かをしてしまったんだろうか?
そんな事を考えていると、目的地である赤いベンチが目に飛び込んできた。
「冬夜、座ろうよ」
そう声をかけた時、冬夜は目の前に広がる向日葵の苗に目を奪われていた、その横顔がなんとも言い難い美しさを湛えていた。
思わずため息が漏れたその時、冬夜と目があった。
「ハル、ここって」
冬夜は目を煌めかせながら俺の答えを待っていた、俺は笑顔で頷くと、冬夜は溢れんばかりの笑顔を俺に向けた。
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