05 激動を起こす前兆は静かなもの
100PV超えました!
俺は運よくユニークスキルを手に入れた。
複刀流。イレギュラーな戦い方だ。おそらく、二刀流まででとどまるのではなく、自分に合った本数を所持できるということだろう。
早速ユニークスキルを使ってダンジョンを攻略していく。
先ほどよりも明らかにクリア速度が上がっている。
100個目までのダンジョンをつぶすのに2時間もかからなかった。
ゲーム内の掲示板を見ると、今までの最高累計クリア数はソロプレイヤーが276個、ギルドプレイヤーが296個だった。そして、俺が今100個。もしかしたら追いつけるかもしれない。
少しだけ夢中になってプレイする。さらにクリア速度が上がり、ダンジョンがみるみるつぶれていく。
自分でも気づかないうちに複刀流の扱いにも慣れ、脳内で完ぺきにシュミレーションできるようになった。
190個のダンジョンをつぶし、170レベルにまで上がった。
自分でも信じられないくらいに楽しく、没頭している。
まさか、俺がゲームにはまるとは思っていなかった。
もう一度キーボードに手を置こうとした瞬間、スマホのアラームが鳴る。ゲームに集中している間に7時になったようだ。
もともと、睡眠時間をそこまで必要としない身体なので、まったく眠くない。
急いでクラウド上に保存し、ほかのデバイスでもプレイできるようにパスワードだけ設定して画面を閉じた。
このゲームはVR版やフルダイブ版が発表されてから大幅なアップデートを行うと同時に、クラウドを用いてインターネット上に各プレイヤーのデータを厳重に管理するようにした。
そのため、一度クラウドに保存しておけば自分が持っている様々なデバイスでログインできるようになったらしい。
ゲームの間にパソコンについてもいくつか調べておいたので、《ソード・イルガリアス》を始めた時よりはパソコンに詳しくなっていると思いたい。
個室の中で新品のシャツと詰襟に腕を通す。独特なにおいと締め付ける感じが、俺が高校生になったのだと物語ってくるように感じる。
荷物をまとめ、ネットカフェから出る。長時間狭い空間に居たためか、外に出た瞬間に解放感を味わう。もしかしたら、施設から出たことに対する解放感なのかもしれないが。
学校への道のりはナットカフェにつくまでにマップで覚えたので、迷うことはないだろう。
学校でなくともこの街の中なら迷う可能性は限りなく低い。
周りには豊穣学園の制服を着た生徒がかなりいる。
大体は数人で仲良く春休みにあったことや近況などを伝えあい、話に華を咲かせている。
まあ、俺は話すことがないし、前提として話す相手がいない。
周りとぶつからないように意識しながら、《ソード・イルガリアス》のプレイする際のコツや隠しコマンドなどを調べていた。
「ねえ、キミ一人?」
一人の少女に話しかけられる瞬間までは。
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