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非道な実験を受けた俺は高校生活で何気に成り上がる  作者: 聖なる悪の株式会社
1章 学園入学編・1年生編
17/23

17 涙の後にあるもの

 ピッ。


 自販機に《Filear》をかざして料金を払い、温かいココアと冷たい炭酸飲料を買った。

 今は春ではあるが、普通の人からすれば若干肌寒いと感じる人と、少しあったかく感じる人がいる。


 紗綾がすっきりしていたとして、俺は何と声をかければいいのだろう。

 答えのないものについて考えるのは、施設でもなかった。


 「後悔はないんだがな、どうすればいいかが分からない。俺も人のことを言えた立場じゃないな」


 自嘲気味につぶやきつつも、広大な学園の敷地内を歩いて回る。

 さすがに広大とはいえ、街の一つが入るとか、そんな大きさはないものの1日ですべて回るのは簡単ではないだろう。


 とはいえ、初めにもらった案内図がかなり精巧だったので大体の構造は理解している。


 10分くらい歩いて部屋に戻る。


 できるだけ音を立てないようにして扉を開け、キッチンに置かれている冷蔵庫に炭酸飲料を入れ、保温庫にココアを入れた。


 妙に静かだと思い、こっそりとリビング(寮の部屋は、キッチンとリビングの二つに分かれていて、リビングにベッドが置かれている)をのぞいてみると、泣き疲れたのか安らかな顔をして眠っている紗綾がいた。

 風を引かれても困るので、そばにあった毛布を掛ける。


 「んぅぅ……」


 もぞもぞと毛布の中にもぐりこんだ紗綾は、起きる気配が全くない。


 俺はできるだけベッドから離れた場所に座り、《Filear》を取り出す。

 とはいえ、何もすることがない。


 どうしようか考えていると、紗綾が起きた気配がした。


 「あれ?私なんでここに……ってここ櫂斗の部屋じゃん!?って櫂斗もいる!?」

 「起きたか。で、ちゃんとすっきりしたようだな」


 顔を見てみると、目のあたりが赤く腫れている。


 「そっか、そうだった。うん、すっきりできたよ。すぐに忘れることはできないけどね」

 「そう、だな。また苦しくなったらいつでも言いに来い。話ぐらいは聞けると思う」

 「いいの?」

 「あんな話聞いて後戻りできるかよ。もう、俺も一緒にその過去を背負ったも同然なんだぞ」

 「うん」

 「ココアと炭酸飲料、どっちがいい。悪いが、そのどちらかしか無い」


 もう一つぐらい買っておけばよかったかもしれないと思いつつも、選んでもらう。


 「じゃあ、ココアもらうね」

 「ああ、ちょっと待ってろ」


 保温庫からココアを取り出し、温まっていることを確認しつつ、紗綾に手渡す。


 「あったかいな。ありがと」


 紗綾はココアを両手で包み込むようにして、胸元で抱きしめるようにする。


 そのまま何も会話することなく10分ほどたち、俺と紗綾の《Filear》に同時に着信が入る。

 そこには、学園から食堂か、外、もしくは各自で用意して、夕食を済ませるようにとの指示があった。


 外を見てみれば、いつの間にか暗くなっていた。


 「櫂斗は夕飯、どうするの?」

 「食堂で済ませるつもりだが、それがどうかしたのか?」


 俺は、施設ではさすがに料理までは教えられなかったので料理ができない。なので、食堂で済ませるつもりだった。というか、食べなくてもいいかもしれないとすら思っていた。


 「じゃあさ、私が作ってあげる。今日は結構お世話になっちゃったし、お礼も込めてさ」

 「俺はお世話をしたつもりはないぞ。ただの自己満足だ」

 「いいの!私がそう思ってるんだから素直に受けなさい!」


 前かがみの姿勢で人差し指をピッと立てて俺を叱るようにしている。


 「分かった。じゃあ、ありがたくいただくことにする」

 「よしっ」


 素直に受けようとしたら、紗綾はガッツポーズを掲げていた。なぜだ?

 まあ、深刻なことではないし、あまり考えないでおこう。

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