13 重なる偶然は意図しないもの
短め
「今どこ?」
俺が体育館から出て、寮の自室で荷物の整理をしていた時に紗綾からメッセージが届いた。
寮の自室にいる、と返信するとほとんどノータイムで返事が返ってきた。
「何番の部屋?」
これ、施設で知ったストーカーになるやつのセリフじゃないのか?
まあ、もしストーカーになられても、個人情報をばらまかれなければいいし、ハッキングの技術も身に着けているので、何とかなる。
そもそも、襲われても対応できるはずだし、盗撮も気配で気づけるだろう。
「え、271号室?私、270号室だよ?もしかして私達隣部屋になったの?」
大丈夫だろうと判断した俺が271号室だと送ると、衝撃の事実が返ってきた。
本当に隣部屋か確認しに、隣の部屋の扉に書かれている番号を確認すると、270号室は当然のごとくあった。
始業式のときの席といい、この寮の部屋といい、本当に偶然だろうか。
しかし、誰かが仕組んだものだとして何の意味がある?
そう考えれば、自然と偶然、もとい紗綾の言葉を借りれば、運命なのか。
「ちょっと待っててね!すぐに行くから!」
少しだけ間をおいてメッセージが送られてきた。
どちらにしろ、荷物も片づけたいので、すぐに部屋から出るつもりはないが、念を押すようなメッセージに複雑な感情が含まれている気がした。
それから数分後に俺の部屋のインターホンが鳴り、モニターに紗綾の顔が映し出される。
応答し外に出ると紗綾は間を置かずに口を開いた。
「ほんとに隣部屋なんだね。なんか偶然なんて感じがしないな」
「ああ、それこそさあっきお前が言った運命みたいなものかもな」
「そうだね、これでいつでも櫂斗に勉強教えてもらったりできるんだ」
体育館で見た、紗綾の表情がなんとなく気になって、どのワードがあの表情にさせたのか探りを入れたが、運命という言葉自体ではなさそうだ。
となると、単語に意味があるわけではなく、あの一言自体が原因だろう。
「いきなりで悪いが、お前、人と会う、もしくは接することが苦手だったりするか?」
施設にいたせいで、コミュニケーション能力が人より低い俺が言えたことじゃないが、どうも紗綾の負担になっている気がして聞いてみた。
「ど、どうしてそう思ったの?」
やはり、体育館のあの表情が見えた。
俺の推測は当たっていたらしい。
「いや、お前、体育館で俺と話してた時に、もしかして運命、だったりして、って言ったの覚えてるか?」
「うん…」
「そのとき、お前若干暗い表情になったから、なんかあるんだろうなとは思ってた」
少しづつ、ゆっくりを心がけて説明を始めた。