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踊る打合せ


「ドラゴン!?見たの?

 どんなだった?」


ゲームでお馴染みの空想上の生物、

有名過ぎるほど有名なその名前にタモン以外の四人の目が輝く。


あきらの感性の基準では気色悪いキャラばかり作るHCヒュージコンピュータ

その手腕はドラゴンという題材をどう扱ったのか気になるところだ。


「うん、ドラゴンの中でもワイバーンだったね。

 空を飛ぶことに特化した細いやつだったからさ、

 皆の想像してるものとはちょっと違うかもね。」


「あぁー、ドスンドスンってきて炎を吐くやつじゃなくて、

 空をぴゅーって飛ぶタイプの奴だ。」


「そうそう、でもすごく強かった。

 一瞬で噛み砕かれたから大体の大きさとかしか分からなかった。」


タモンの説明に晶は少しだけ落胆した表情になる。

もっとファンタジーで奇異な生物を期待したがそうではないらしい。

HCは無難な造形にしたようだ、晶は何故か残念な気持ちになる。


タモンの出会ったワイバーンは一般的に想像されるそのものの姿らしい。

細身の肉食恐竜は体色が黒で、両腕は蝙蝠のような翼となった、

空飛ぶ巨大な爬虫類という外見をしているようだ。


「アイテムを6種集めて死んでもいい状況になったからさ、

 沼地のウィッカーマンに一人で挑んで偵察しようと思ったんだ。

 岩場から飛び立って少し進んだら大きい黒い影が山の方から迫ってきた、

 それがワイバーンだったんだ。」


「強くなると新しい強い敵がどんどん現れるね。

 HCが判断してるのかな?それともスキルとかに連動してる?」


「新しい敵って?

 アタシは今までアスラから聞いた強敵しか知らないな。」


そこで晶は昨日今日で出会った新たな強敵たちの話をする。

【鬼殺し】や【蛾の天敵】などのスキルについても併せて説明した。




「うーん、なるほど。

 HCがプレイヤーに合わせたNPCの調整の一部かもなぁ。

 まだそうだと決まったわけじゃないけどね。」


「タモンさん、あとアスラ姉ちゃんの話で気になることがあるんです。

 【卑怯な真似をしたから罰が当たった】と言ってたプレイヤーの話です。」


「あぁ、まだ詳しく聞いてないな。

 どんな話?教えてもらってもいいアスラ?」


そこで晶はタブリス一味の件やプルフラスの話を伝えた。

さらに自分の抱いた疑問、姿の変化は進化ではないのでは?という件も話した。




「進化、というか変化の条件は空腹を満たし続けることやアイテム取得以外に、

 何か【特別な条件】があるみたいだな。」


「たぶんですが、弱い敵を倒し続けたりプレイヤーにだまし討ちしてたりすると

 特定の邪悪なキャラに変化してしまうようですね。」


「アタシは【気配遮断】でよく不意打ちしてるんだけど。

 それっていいのかな?」


「どうだろう?HCの判断は人間では計れないからなぁ。」


「実際に強くなれてるし大丈夫じゃない?

 気配を殺して先制攻撃は野生の世界では普通のことだと思うよ。」


強くなるための話になると討論は俄然活気づいたものになる。

ひとまずの結論としては

【強敵に挑み続ける】のが強者への近道ということになった。




「さ、じゃあ明日の共闘について話し合おうか。」


タモンが本日の最重要課題を口にすると皆真剣な表情に変わった。

明日その【強敵】に挑むのだから気合も入るというものだ。


「挑むのは沼地の【ウィッカーマン】でいい?

 俺はそれが一番無難かなと思うんだけど。」


「アタシは今日ウィッカーマンに挑んできたよ。

 さっきタモンが言ってたけどアタシもアイテム6種揃えてすぐ挑んだ。

 でも正直ラミアだと相性が悪いように感じたね。」


「えぇー、ナッキィあんなに強いのに。

 すぐ負けちゃったの?」


晶の言葉にナッキィは少し嬉しそうに微笑んだが、

すぐに真面目な表情に戻り話を続けた。


「ま、アタシの話を聞きなって。

 沼地でウィッカーマンを見つけたアタシは真っ直ぐ近付いたんだ。

 不意打ちなんて意味無いだろうからね。

 そしたらスケルトンがわらわら湧いてきて囲まれた。」


「私の時とおんなじだー。」



「うん、お決まりのパターンなんだろね。

 アタシは尻尾でスケルトンを薙ぎ払いながらウィッカーマンに近付いた。


 そしたらアイツ体内からゾンビをドバドバ出してきてさ、

 数で来られるとアタシはキツイよ、単体攻撃のスキルばっかだからさ。


 毒針なんか効きゃしないし逆にゾンビから麻痺攻撃喰らうしさ。


 もうやってらんないっての。

 最後は痺れてるところをウィッカーマンに殴られておしまいさ。」



ナッキィの話に四人はなるほど、としばし黙考した。

それぞれが戦略を練り始めたのだ。


「どうだい?

 力を合わせりゃなんとかなりそうかい?」


ナッキィの問い掛けに真っ先に応えたのは晶だった。


「うん、単純な案なんだけどいい?」


ほか四人が頷くと晶は話し出す。


「作戦ってほどでもないんだけどね、

 シャチが毒とか無効化する【浄化牙】ってスキルがあるの。

 だからシャチ以外の四人でウィッカーマンに特攻して、

 麻痺とか毒を喰らったら後退してシャチに浄化してもらうの。

 それでどうかな?」


「アスラー、それはホントに作戦じゃないってーの。」


ナッキィが呆れて晶の頭をわさわさと撫でる。

仮想現実なのでお互いに感触は無い。


「いや、でも大筋としてその案で行くしかないだろうな。」


「そうですね、あとは皆さんの攻撃スキルを使ってみて、

 ウィッカーマンにいかにダメージを与えられるかが鍵ですね。」


「じゃあお互いに現状繰り出せる技を再確認しようか。」


そうして五人は所持スキルを確認していった。

それぞれの【武器】も併せて教え合う、それがなかなかに盛り上がった。




「へぇ~、じゃあナッキィの【ハルバード】もいい感じだねぇ。」


「僕はタモンさんの【宝棒】とか姉ちゃんの【錫杖】が羨ましいなぁ。」


「インドラの【金剛杵ヴァジュラ】ってのはどんなんだい?

 アタシは聞いたことがないよ。」


「ほほほ、象の鼻で振るしかないから使いどころが限られる武器なの。

 分かり易く言うなら両端が尖った短いハンマーかな。」


「うわ、わっかんねー。」


「俺は逆にシャチの【象鞭杖アンクーシャ】が欲しいな。

 衝撃波が出るんだろ?俺の【宝棒】はただの槍だからな。」


「タモン、私の【しゃくじょー】はどんどん強くなってるし便利になってるよ、

 使い込むと【宝棒】も色んな力を見せてくれると思うよ。」


「うーん、そうなのかな?」



【武器】の話が落ち着くと真面目に明日の共闘の打ち合わせを始めた。

しかし共闘するにしてもお互いの技がよくわからない。

結局晶の案がそのまま採用されることになってしまった。



「じゃあアスラ・インドラ・タモンの三人がウィッカーマンに特攻、

 シャチは後方で待機、ナッキィがシャチを守りながらスケルトンを逐次迎撃、

 そんなとこかな?」


「そうだね、それで誰がウィッカーマンにトドメを刺しても恨みっこなし。

 別にイケそうなら最後ナッキィでもシャチでも突っ込んで行っていいからね。」


「ホントかい?

 んー、でもウィッカーマンはデカ過ぎて【ヴァイスプレス】出来ないよね。

 【キラーソニック】も効かないだろうしなぁ。」


「あぁ、あの巻き付きとか超音波かぁ。

 確かにウィッカーマンと相性悪そうだね。

 【ハルバード】でぶん殴るしかないかもね。」


晶とナッキィがまた作戦にならないようなことを言い合っていると、

現実路線のタモンと来里が話し合う。


「ウィッカーマンから生み出されるゾンビっていうのは無限湧きですかね?」


「わかんないなぁ、けどスケルトンは無限湧きっぽいな。」


「やはり炎の攻撃が効き易いでしょうか?」


「そうならアスラの【迦楼羅炎】に期待だな。

 インドラは【白色の炎】が【天上の白炎】に進化したばかりだから。

 俺が一番文字通りの火力が弱いよ、【天狗火】だからね。」


「あぁ、姉ちゃんの進化前の・・・、

 でも他のスキルで【毘風撃】なんて強そうな感じですけど?」


「まぁね、でも風の攻撃がウィッカーマンに効くかなぁ?

 もしかしたら俺もナッキィと一緒にシャチを守る役に回るかもね。」


「うーん、頑張ってくださいね。」


来里が表情を暗くするタモンに困っているとインドラが助け船を出してきた。


「ほほほ、シャチ君、明日ワタシきっといっぱい攻撃されちゃうの。

 象の身体は大きい分だけ的になっちゃうからね、避けられないの。

 いっぱい回復お願いね?」


「はい!頑張ります!

 僕は僕の出来ることをやりますから!

 アスラ師匠の教えを守り頑張ります!」


「ほほほ、アスラは良いお弟子さんをお持ちだね。

 すごく羨ましい、アスラ、ワタシにシャチ君頂けないかな?」


「ふぇ?ダメだよインドラ、人を物みたいに言っちゃ。

 シャチは面白象人間だけど物ではないよ?」


「あら、アスラはシャチ君のことには真面目になるね。

 うーん、やっぱりすごく羨ましいよ。」


「ふへへ、だってよシャチ君。

 インドラに羨ましがられるとなんだか誇らしいね。」


「えー?僕はなんだか恥ずかしいなぁ。

 あと今は象人間じゃないからね?」


「ほほ、シャチ君、明日頑張ろうね。」


「はい!」




明日は初めて多人数で共闘しエリアボスに挑む。


晶はそれがとても楽しみで胸を躍らせる。



『これってみんな【友達】ってことだよね?』


晶は夢が現実になったような、そんな幸せを噛み締めていた。




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