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情報は大切


「んもぉー、今日はいっぱい強くなったよ!

 それにライも頑張っててすんごい快進撃!

 明日はみんなで協力してエリアボスに挑むの!

 この後で色々話すの!すんごく楽しみ!」


あきらは夕飯を食べながら家族に本日の成果を報告する。

家族もそんな嬉しそうに笑う晶を見て微笑んでいる。


「【SRシックスロード・リィンカーネーション】は奥が深いよ。

 HCヒュージコンピュータの意図がいっぱい詰まってそう。」


「あぁ、インドの小僧が言ってたやつか。

 でもHCは本当に意図を持って作ったのか?

 こっちが深読みし過ぎなんじゃねーのか?」


「えー?でもじぃじ、HCが全人類に向けてメッセージを出したんだよ?

 絶対なんか目的があるんだって。

 よくわかんない景品まで用意してるんだよ?

 何の意味も無いって考える方が無理あるよー。」


「確かにアキラの言う通りかもね。

 ばぁばも【SR】にはHCの重要な意図があると思うよ。

 だからあんまり無茶しないでね?」


「うん!わかってるよばぁば!気を付ける!」


夕飯を終えた晶がハンナの言葉に応えにっこりと歯を見せ笑う。

そんな晶に心配げなエリーゼが声をかける。


「アキラ、ホントに大丈夫?

 何に気を付けるか分かってる?」


「うぇ?んー、んーと、

 HCに【警告】とかされないように気を付けるから!

 大丈夫大丈夫!」


晶は誤魔化すように勢いよく答えて椅子から立ち上がる。

「フォーラム行かなきゃ!」と大根芝居で独り言を呟き居間を出る。


『ふひぃー、ママの心配性にも困ったもんだよ。』


そんなことを思いながら自室に戻りポッドに沈み込む。

健康診断をクリアし、再び電子世界に没入した晶はフォーラムへ移動した。





「あ、姉ちゃん。

 いまタモンさんとNPCの知性について話してるんだ。

 タモンさんは別の疑問があるみたい。」


フォーラムについて合流するなり来里が今日のトロールの話題を振ってきた。

それに対し晶が考えようと虚空を眺めると今度はナッキィが話しかけてくる。


「アスラ、それよりシャチが回復スキルを手に入れたんだって?

 それって激レアスキルじゃないか?

 アタシは聞いたことないよ?」


「あー、そうなんだ。

 やっぱ珍しいのかなー。」


ナッキィの熱量に対し緩い反応を見せる晶。

そんな晶にさらにインドラが勢いよく問いかける。


「アスラ!ワタシとシャチ君は同じ【白巨牛ナンディン】だったのに!

 ワタシ【聖慈雨】獲得しなかったよ?ナンデ?

 人によって成長違う、何が違うの!?」


よほど回復スキルが欲しかったのかインドラが珍しく興奮している。

そんなインドラを宥め、タモンがゆっくりと皆を見渡し話し始めた。


「ちょっとみんな落ち着けって。

 でさ、落ち着いたところでよく考えて欲しい。

 いま俺たちって【SR】について疑問がいっぱいあるよね。

 でもそれがなかなか解消されない、それは何故か?」


「え?【SR】が奥深いからでしょ?

 そういうことじゃないの?」


タモンの質問に素直に答える晶。

それをフォローするように来里が答え始めた。


「姉ちゃん、それもそうなんだけど、

 タモンさんが言いたいのは別のことだと思うよ。」


「おや?シャチはもうタモンの質問の答えがわかってんの?」


「ワゥワ、シャチ君頭いいんだね、ワタシまだわからないなぁ。」


年上の女子二人に褒められ照れる来里。

からかいたげな又従姉の視線を浴びつつ来里は話し出す。


「タモンさんが言いたいのって【SR】の攻略情報の少なさについてですよね?

 【少ない】っていうか【秘匿されてる】っていうのが正しいかもですが。」


「【秘匿】?秘密にしてるってこと?誰が?」


「なんだいアスラ、まだ気付かないの?

 アタシはわかったよ、【HC】が情報統制してるってことだろ?」


ナッキィの言葉にタモンと来里が頷く。


晶がインドラの方を見ると少し気まずげな顔をしていた。

それが答えがわからなくてのものなのか、晶を気遣ったものなのかわからない。


晶が再びぼやんとした顔になるとタモンが説明を始めた。


「今までならVRに限らずゲームの攻略情報はどんどん拡散されてしまう。

 フォーラムで話した内容が記録され、検索すればすぐに見ることが出来た。

 でも【SR】は違う、

 こうして仮想現実内で直接コンタクトをして話さないと情報共有出来ない。」


「アタシは他のグループの話も聞くから分かるけどさ、

 もう配布日から一週間経つのに全然攻略情報は進んでないよ。

 みんな進化の方法が分からないんだ、変なのに進化するやつもいるし。」


ナッキィの言葉に晶はプルフラスやタブリスが思い出される。

進化しているのに強さがあまり感じられなかった人たちだ。

あれは本当に【進化】だったのだろうか?晶には疑問に思えた。


「ですよね。

 僕も検索してみたんですが【SR】についての情報はほとんど出ませんでした。

 ゲーム開始時の説明やHCからのメッセージ以外はほぼ不明となります。

 HCが情報統制してるのは間違いないと思います。」


「俺も同じだ。

 親戚でインドラの他にもう一人【SR】をやっているのがいるんだけど、

 いまやっと第二段階だそうだ、俺からアイテム情報を聞いてね。

 そこでさらに疑問が生まれる、

 【なぜHCは情報統制をした?】ということだ。」


「そりゃー【SR】を長く楽しんで欲しいからじゃないの?

 え?違う?」


タモンの質問に再び素直に答える晶。

また来里がそれをフォローする。


「姉ちゃん、たぶん広い意味で言えばそういうことだと思うんだ。

 でも今はもっと細かい意味でさ、HCがどんな意図を込めたか?って話。

 僕は情報を遮断することで今の僕たちみたいに直接的な

 【人間同士の交流を増やしたかった】んじゃないかって思うなぁ。」


来里の意見に興味深そうに頷くほか三人。

晶も慌ててうんうんと頷く。


「なるほどね、俺は別の意見だな。

 アスラがトロールと意思疎通したかもしれない、という話を聞いているよね?

 それってHCが機械に人間との交流を望んでるんじゃないかな?

 コンピュータに人間の感情や行動原理を学ばせているんだ。

 攻略情報が広まると人間の行動は単一になる。

 だから情報統制してるんじゃないかな?」


「なるほどねぇ、タモンはいつも難しいこと考えてるねー。」


タモンの意見にインドラがホホホと笑っている。


「なんにしろ情報が少ないってことは間違いないんだろ。

 アスラみたいに情報が無くても強くなるやつはどんどん強くなる。

 他にもアスラみたいなやつはいっぱいいるんじゃないか?

 それも分からないかな?」


「うーん、ナッキィさん。

 それに関しては他グループの情報を知るナッキィさんが

 この中だと一番詳しいんじゃないかと思います。」


「俺も他プレイヤーのことはあまり分からないなぁ。」


「今いるエリアに限定すれば私わかるよー。」


晶の発言にタモンと来里がギョッとした表情で晶の方を向く。


「え?姉ちゃん何がわかるの?

 他のプレイヤーの話だよ?

 あ、アルマロスさんって人の話?」


「ううん、知らない人も含めて。

 私の【心眼】スキルで強さはなんとなく分かるから。

 あ、でも私がスタフインする時間帯の問題もあるかー。」


「アスラ、その【心眼】で強さを認識出来るのは分かった。

 それで今いるエリアの中でアスラ並みに強いプレイヤーはどれぐらいいるんだ?

 わかるなら教えてくれないか?」


タモンが難しい顔をして晶に問いかける。

そんなタモンに晶は楽しげに答えた。


「そうだねー、細かくわかるわけじゃないけどね。

 第三段階の強さがある人はわかるかな。

 ここにいるみんなと、アルマロスと、あと三人ぐらいかな?

 草原、岩場、沼地、砂漠、林地、森林、行ったことあるエリアだけの話ね。」


「え?僕も強い人の中に入るの?」


「うーん、まぁ少し物足りないけどまぁまぁかな。」


「うぇー、なにそれ。」


緊張感のない二人のやり取りにタモンも眉間のシワをほぐす。

さらにナッキィも晶の意見に同調する。


「そうだね、アタシも気配に関しては敏感な方だと思うけどさ、

 アスラほど強そうなプレイヤーには出会ってないね。

 遠目から強そうなやつを何人か眺めたことはあるけどね、

 アスラほどじゃなかったよ。」


「でへへー、照れますなー。」


にししと笑う晶に他の面々も笑いを零す。


「でもさ、ヒーシィんとこみたいにアタシらとは違うエリアもあるわけだしさ、

 とんでもなく強い奴がいる可能性はあるよね。」


「ワゥワ、楽しみだね。

 どんなキャラなんだろ?」


「違うエリアってどこだかわかりますか?

 山方向ですかね?それとも逆方向?」


「いやー、それ結構話したんだけどさ、全然話が噛み合わないのさ。

 向こうには川とか滝があるみたいだよ。」


「へぇー、いいなぁー、早く行きたいね。」


晶の言葉に来里が疑問を挟む。


「姉ちゃん、行きたいって言ってもどうやって行くの?」


「そりゃー強くなったら山を越えたり砂漠を越えたり出来るでしょ?

 いま私たちって際限無く強くなっていってるんだから。」


「なるほどー、姉ちゃんはすごいね。」


「シャチ、俺みたいに空を飛べるようになればもっと話は簡単だぞ?」


タモンの発言に晶は目を輝かせる。


「そっか!タモン【烏天狗】になったんだよね?

 もう山には行った?」


「いや、それがまだ遠出はしていないんだ。」


「えー、なんで?

 私だったらビュンビュン飛び回るなぁ。」


晶の言葉にタモンは苦笑を漏らす。

さらに来里やナッキィも晶の意見に同調するとタモンは再び口を開いた。


「うーん、あまり長く空は飛んでられないんだよ。」


「へ?なんで?」


「空の王者に見付かっちゃうから。」


「空の王者?グリフォンとか?」


「いいや、違う、」


ここでタモンは思わせぶりに言葉を止め、みんなの顔を見回す。



「【ドラゴン】だよ。」




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