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順調な報告


あきらはシャチこと来里らいりを視界に捉えた。

どうやら甲虫かぶとむしと戦闘中らしい。


『おぉ?

 ライが【白巨牛ナンディン】になってる!

 インドラと同じ進化なのかな?』


第二段階に進化した来里は甲虫の突き刺し飛翔攻撃をその両角で跳ね上げ、


強力になった【煌炎】で燃やし晶の眼前で勝利を収めた。



「あ、姉ちゃん!

 見て見て!僕なんか白くなってない?」


「なってるなってる。

 昨日会ったインドラみたいな白い牛になってるよ。

 でもインドラより少し小さい気がするけど。」


「へぇ、そうなんだ。

 あ!でね、さっきね、また巨大蛾モスマンに襲われちゃって、

 【煌炎】で何匹か倒したんだけど、

 体当たりされたら身体がビリビリ痺れて動けなくなってやられちゃった。

 それでね、キャラメイクしてアイテム使ったら進化したんだよ!」


晶は来里の進化の過程を確認すると、スキルが増えてないか尋ねた。

どうやら【聖慈雨】というスキルが増えたらしい。



「ほぉ、聞いたことないスキル。

 どれどれシャチ君、使ってみたまえ。」


「はい、先生。」


はしゃいだ様子で来里は応えたが急に動きを止め晶に問いかけた。


「え?どうやって【聖慈雨】って発動させるの?」


「ふぇ?知らないよ。

 お腹すくまで色々試すしかないでしょ。」


晶は自分も新スキルを手に入れるたびに発動方法を模索したことを来里に伝える。



「なるほど、自分で色々やってみるしかないのかぁ。

 インドラさん何か知らないかな?」


「うーん、【聖慈雨】ってのは聞いてないなぁ。

 白巨牛の時は【白色の炎】メインで戦ってたみたい。

 今は象になって、なんか雷のスキルと近距離攻撃のスキル取ったみたいだけど。

 一応聞いてみる?」


「そうだね、メッセージ送ってみてよ。」


言われるがまま晶はインドラにメッセージを送る。

反応が無いところをみると戦闘中かもしれない。


「シャチ君、歩きながら試そうか。」


「そうだね、あ!【甲虫の角】取れてる!」


「へぇ!ライめちゃくちゃ運いいじゃんか!

 あ、っと・・・

 シャチ君、幸運に恵まれとるね、普段の行いがよいのだな、うん。」


「ちょっと姉ちゃん、気を付けないと。

 HCヒュージコンピュータから警告来ちゃうよ?」


「わかっとるわかっとる、みなまで言うな。

 キミはシャチ君、ワタクシはアスラ、わかっとるよ。」


「うん、次行こうよ。

 時間的にまだまだ出来そうだよ。」


移動時にまた晶が来里の背に乗って困らせていたが、

前回と違い来里は晶を乗せたまま林地へ移動することが出来た。



「シャチ君、強くなってきてるじゃないの。」


「ホントですね、先生。

 自分でもビックリです。」


「残る未取得アイテムは【大鷲の爪】と【猛虎の牙】である。

 つまりこの【林地】と向こうに見える【森林】が修行の場なのである。」


「どちらも取れれば第三段階に進化できるし【武器】もゲットですね、先生!」


「その通りじゃシャチ君!気合入れてこー!」


「はいっ!」



晶の発破に応える来里。

既に空腹感が襲ってきている二人は獲物を探す。


「あ、あの金属のトリくんだ。

 シャチ君、あの敵だとワタクシはお腹の足しにならん。

 キミが戦いたまえ。」


「わかりました!先生!」


晶がサッと後ろに退き、来里が進み出る。


上空に金属の翼を輝かせる鳥が一羽近付いてきていた。


来里が【青銅鳥スチュパリデス】の攻撃を待ち構える。



青銅鳥は大鷲ほどの高度は飛べないらしく、充分に目視できる。


白巨牛は旋回する青銅鳥から目を離さずカウンターを狙う。


やがて白巨牛の斜め後方から青銅鳥が金属の爪を煌めかせ滑空する。


白巨牛はそれを察し垂直に飛びあがり、その大きな身体を捻りながら着地させる。


青銅鳥の滑空攻撃を正面に見据えた白巨牛はその両角で真っ向から受け止める。


金属の爪が白い両角の【追衝波】込みの【嵐角撃】で弾き飛ばされる。


低空を転がるように離れる青銅鳥に白巨牛は追い討ちをかけた。


全力での体当たり、【弾丸突破】から【跳躍】しての【嵐角撃】だ。


その一撃により青銅鳥は一瞬で姿を電子の塵に変えられてしまった。


白巨牛は得意げに背後を見やる。


しかしそこにいるはずの人狼の姿が見えない。



『えぇぇ?姉ちゃんどこ行ったの?』


慌てる来里は脳内パネルに残るメッセージに気付いた。

晶は空腹を満たすため別の敵を探しに行ったらしい。


自分の雄姿を又従姉に見せられなかった来里は少し気落ちしたが、

本来の目的であるアイテム取得に勤しむことにした。


『もっと強くなって姉ちゃんと闘えるぐらいにならなきゃ!

 でないと姉ちゃんは僕を見てくれない!』


来里は自分を強くしてくれる【強敵】を求め林地を歩き出した。




その頃晶は来里がいる場所からさほど離れていないところで戦っていた。


「ピュイピー久しぶりじゃーん!

 元気してたー?」


「ピュイ!」


空から襲い来るハルピュイアの鉤爪攻撃を躱しながら錫杖を振るう晶。

ハルピュイアは錫杖を投げつけても届かぬ絶妙な距離を保ちながら旋回する。


「ピュイピーってもしかして頭良くなってる?

 私の話も理解出来てるんじゃないの?」


「ピュイ!」


「ピュイ以外は言えないってことかな?」


「ピュイ!」


ハルピュイアは前回見せなかった羽毛を針のようにして降らせる攻撃を始めた。


「これは前に使わなかっただけ?

 それとも段々強くなってるの?

 どっちなのピュイピー?」


「ピュイ!」


晶はなんとなくハルピュイアが後者を示したような気がした。


「じゃあここで【鬼殺し】みたいなスキル取っても、

 またピュイピーに会えるよね?」


「ピュイ!」


「よーし!いっくぞー!」


「ピュイ!」


晶は錫杖をバトントワリングのように回転させたのち、石突で地面を叩いた。



「ウォォォ―――――ン!!!」


仁王立ちの人狼が力強い咆哮を上げる。


女面鳥ハルピュイア】は怯む様子を見せ動きを一瞬止めた。


その隙を見逃さず人狼が【二段跳び】で宙を駆け昇り勢いよく錫杖を投擲する。


錫杖の槍先は女面鳥の翼を穿ち突き抜けていく。


バランスを崩すがなんとか空中で姿勢を立て直そうとする女面鳥。


しかし人狼が再度宙空に躍り上がり両手を叩き合せた。


「ピュイッ!」


轟音と共に炎の蛇が螺旋を描き女面鳥を燃やし尽くす。


「またね、ピュイピー。」


人狼は女面鳥が消えていくのを最後まで見つめていた。





時折フレコールで来里の様子を聞きながら晶は林地で戦い続けた。

来里は順調に【大鷲】や【青銅鳥】を倒しているらしい。

晶の方も群れをなす【蒼翼鹿】を次々【直接打撃】で撃破している。


しかし何度目かのフレコールで晶は来里の悲鳴を聞いた。


「うわぁ―――!

 姉ちゃん助けて―――!

 『いつまでいつまで』言う怪物が追っかけてく・・・・・・」



そこで来里のフレコールは途絶えた。


『うん、次は【逃げ足】スキルを鍛えてあげなきゃだね。』


そんなことを考えていた晶に来里からメッセージが届いた。

HCにゲーム終了を【推奨】されてしまったらしい。

急激に強くなり戦闘に次ぐ戦闘をこなしたのだ、

来里の体力は限界なのだろうと思われた。



『うんうん、無理をしないように、と。

 今日の訓練は以上、明日も今日と同じ予定だよ、と。』


晶はにこやかに微笑み来里にメッセージを送信する。

メッセージの最後で来里の今日の成長を褒めておいた。

実際に晶は来里の成長具合に満足できるものを感じていた。



『これで明日アイテムを全種揃えられたら、

 足手まといは卒業だね。

 ライも私の【強敵】になるのかなぁ、ふふふ。』


すると晶の【強敵】のうち一人からのフレンドコールが表示された。


「おーっす、インドラ!

 調子はいかが?」


「順調だよー、そっちはどうかな?

 シャチ君の教育はどんな感じ?」


「それがねー、ビックリするほど順調なのだー。

 えっとね、聞いて聞いて、あのね・・・・・・」


晶は本日の来里の成果をインドラに楽しげに伝える。

聞いているインドラも楽しそうに相槌を打つ。


殺伐とした魔界の中で、珍しく穏やかな時間がこの空間を支配していた。



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