平成のはじまり
時代に
「平成」
と名がついた時のことは覚えていない。
ただ、TVが特番続きで、神妙な顔のニュースキャスターと、バタバタした雰囲気の政治家たちがずっと放送されていた。
陛下の崩御前後に新しく覚えた言葉は
「宮内庁」「官房長官」
彼らがメディアに出づっぱりだったからだ。
話は2月に飛ぶ。
天皇陛下の国葬
「大喪の礼」
が2月24日に行われることが決まった。
数日後、両親が仏教系の団体の熱心な信者の友人から
「親も大喪の礼で支部にいくから一緒に行こうよ」
と誘われた。
「天皇陛下って終戦前は神様だったみたいだけど、神様の葬儀に別の神が弔ってもいいのかな…」
と頭でっかちは考えたが、友達と一緒にいるのが楽しかったので、参列することにした。
当日、極力黒めの服で団体の支部に行き、大人たちは無言で何かの支度をしていて、子どもたちは支部の建物の中で遊んでることになった。
友人のお母さんから千円札を渡され、これでお菓子を買って、大喪の礼の最中は静かにしててね、と言われた。
友人と2人そのまま近くのスーパーでしこたまお菓子を買い、TVや遊び道具のない建物の中で、ダラダラ喋りながらお菓子を食べていた。
大人が解散して帰ると声をかけられるまで、正直暇過ぎた。
雲が厚く雨さえ降る、陽は全く射さず暗くてとても寒く。
国葬らしい天気の日だった。