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前編

 私は貧しい子爵家の娘です。15の年に学園に通うのが貴族の義務でございますが、我が家にはそんなお金はございません。

 そんな時は高位の貴族令嬢のメイドとしてお仕えして入学するのが常でございます。


 私は親戚筋の侯爵家の御令嬢のメイドとなって入学いたしました。学園でお嬢様に付き従い、寮に帰ってからも身支度をお手伝い致しますと、学園の学費と寮の使用料は侯爵家で負担していただけます。


 私のお仕えするお嬢様は美しい方でいらっしゃいます。艶のある赤毛を縦ロールにお巻きになって大きなリボンをつけていらっしゃいます。侯爵家で他のメイドがお似合いになっていませんから髪型を変えましょうと進言しても、頑としてお変えになりません。あの髪型にこだわりがお有りになるようです。そして時々悪役令嬢なんだからこれでなきゃと呟いておられます。


 そしてそんなお嬢様の婚約者は、侯爵家令息のフレデリック様です。お嬢様より二つ年上でいらっしゃいます。優秀でいらっしゃるから第一王子殿下の側近候補で長身で見目麗しく学園で憧れている令嬢は少なくありません。

 

 私は侯爵家でフレデリック様がお嬢様をお迎えにいらしたときに一目惚れいたしました。もちろん誰にも漏らせませんし、態度に現すなどあり得ません。自分がフレデリック様とどうにかなるなどと身分を弁えないことを考えたこともありません。


 学園の入学式の際お嬢様はどなたかをお待ちでした。中庭でベンチの陰に隠れておられました。私もお供として一緒に隠れておりましたが入学式が始まる時間になっても、お嬢様のお目当ての方はいらっしゃらないようでした。イベントが無いなんておっかしいなぁと呟きながら入学式に遅刻して参加いたしました。



 壇上ではこの国の第一王子殿下が在校生代表で挨拶されておられました。遅刻して入場したお嬢様と私は第一王子殿下に睨まれてしまいましたので、そっと隅の椅子に座りました。

 お嬢様はヒロインどこ?と呟いておられまして、ピンクの髪の子いなかった?と私にお尋ねになられましたが、ピンクの髪など見たこともございませんので、そう申し上げるとあれぇと首を傾げていらっしゃいましたました。


 またお嬢様は入学式で誰か倒れなかったか、周りの学生達に聞き回っておられましたが、そんな人はいなかったようで、同じく第一王子イベントなのにおっかしいなぁとおしゃってました。

 お嬢様は時々訳のわからないことを呟かれますが、使用人にもお優しくてお仕えしやすい方です。


 私はいったい誰をいじめればいいの!などと恐ろしいこともおっしゃるので、お嬢様のような方はいじめなどお出来になりませんよと言わせていただきました。


 入学後の試験で一年生の一番に私がなってしまいました。生徒会に入るように誘われたのですが、私は使用人ですのでお断りをさせていただきました。

 ですがフレデリック様や第一王子殿下にお嬢様も生徒会に入ってもらうので一緒にと言われてしまいました。

 お嬢様も是非そうしなさいと仰りお嬢様の仰ることには逆らうことなどできないので従わせていただきました。


 生徒会ではフレデリック様と生徒会活動でお話させていただく機会が多くて、嬉しくて嬉しくて毎日が天国のようでした。

 お嬢様も第一王子殿下とお二人でお話されることも多く仲良くされているようでした。


 お嬢様はヒロインはフラグ放棄なの?誰ルートなの?イベントは起きないの?と首を捻っておられました。お嬢様の独り言はよくわかりません。


 フレデリック様は私のような下々のようなものにもお優しい方です。お嬢様に花束をお持ちになったときに必ず一輪私にもそっと贈って下さいます。

 お嬢様のお好きな赤い薔薇の大きな花束に比べますとたった一輪の赤い薔薇でございますが、私にとって宝石にも当たる贈り物でございます。いただいた後は押し花にしております。いつか集まって花束のようになったら、青春のほのかな初恋の形見としてトランクの底にしまいましょう。



 第一王子殿下と側近方、そしてフレデリック様のご卒業の日がやって参ります。フレデリック様がご卒業されたらもう私はフレデリック様とお話することなどできなくなります。

 私は卒業したら子爵家領地に戻り親の決めた方と婚姻することになるでしょう。

 それまでの短くも儚い私の初恋ございます。


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