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3話 お出かけ

「カイン!起きて!今日はお外に出かけますよ!」

セフィアは嬉々として、朝早くから俺の部屋へ入ってきた。


母様の喜ぶ姿を見て朗らかな気分になりつつも、

昨日の今日でまだ筋肉痛が・・・・・・あれ?


もう筋肉痛がない。


これまで運動もすることが出来ない体だったからか、初めて経験する筋肉痛が治るのに、

どれくらいかかるのかも分からなかった。

1日寝れば治るものなのか、と少し拍子抜けしつつも安心した。



「母様、分かりました。ところでどこへ出かけるのですか?」



「よくぞ聞いてくれました!今日はお弁当作って街に出てからピクニックに行くわよ〜」




「街に行けるんですか!?じゃあ冒険者ギルドにも行ってみたいです!!」



俺の夢は冒険者になって大冒険に出ること。

長男のハルク兄さんが跡継ぎとして筆頭だし、

自分で言うのもおかしいけど今までの死に損ないな貴族の次男に跡継ぎ候補としてあがることは考えられない。

つまり俺は自由に夢を追いかけることが出来る。


それに生き返ったあとから頭の奥でモヤがかかるようになった。

何かしなくてはいけないんじゃなかったか、という曖昧な記憶だけがある。

それが冒険の先にあるのではないか、何故かそう思わずにはいられなかった。




「冒険者ギルドか〜、今日は外から見るだけにしましょ。あそこは貴族が行くと厄介者扱いされるだけよ〜。今日はシールも連れて行くからね」



そうか、幼いシールが居るとなると荒くれ者も多くいるらしい冒険者ギルドには連れていけないな、とカインは納得した。






屋敷から馬車に乗り街へと出発した。

俺はほとんど屋敷から出たことがなかったし、

視力も弱くて外の景色なんてぼやけた水彩画のようにしか写っていなかった。

千里眼のおかげで世界を視ることが出来るようになって初めての景色は、

木や土、草原や空や建物が鮮明に色鮮やかだった。


本当に世界は綺麗だ、そう思わずにはいられなかった。




「ふふふー、カインお兄ちゃん嬉しそう!」

妹のシールこそなんだか嬉しそうに話しかけてくる。



遊びたくても遊べない、そんな兄弟の仲を引き裂いていた呪いに少なくない怒りが秘かに点っていた。



「シール、あれはなに?ねぇ、あっちは?」

と妹に世間を教えてもらう微笑ましい姿に母親のセフィアは目を濡らしていた。




しばらくすると領地内にある街に到着して馬車から降りると、そこには色々な形の建物が並んで人も多く賑やかだった。

5人の護衛が少し離れた位置でついてきているが

ちょうど良い距離感で窮屈な感じがしない。




「さぁカイン、どこに行ってみたい?」

セフィアの問いに、もちろん!という表情で



「冒険者ギルド!!」



「じゃあ冒険者ギルドの方を歩いて見ましょうね〜、その後はシールの行きたいと言っていたお菓子屋さんね」



わーい、とシールはウキウキ顔でカインと手を繋いでいた。




少し歩いても冒険者の身なり、武器や防具をつけた人が行き来している。まだ午前ということもあってこれから出発する人が多いみたいだ。




「あれがそうよ」とセフィアに言われてみた方角には、剣と魔物と金貨が描かれた看板が掲げられた大きな建物があった。



「ここが憧れの、冒険者ギルドかぁ」




「おう?こんなところに貴族様がなにか用か?」

冒険者ギルドから出てきた筋骨隆々で大剣を背負った男が声をかけてきた。



護衛たちがすぐに駆け付けて、

「無礼者め!気安く話しかけるな!」と叱責を始めてしまった。



「良いのです、この方はAランク冒険者のガルマン様ですわ。プロメテア家からも指名依頼させて貰っている方ですから」




「プロメテア家の夫人様でしたか、わっはっは。こりゃどうも失礼しやした」

ガルマンは余裕の表情で大きく笑った。


「ところで本当になんで夫人様方がこんなところに?」



セフィアがこちらを覗くように見る。




「俺が冒険者ギルドに来たかったからです。いつか冒険にでたいなぁって」



「なるほど、お坊ちゃまが冒険者にねぇ、でも確か体が弱かったんじゃなかったか?それに危険もいっぱいで貴族の生活の方がよっぽど楽しいかもしれないぞ?」



「体はだいぶ良くなったのでこれから鍛えます!」



「ほ〜う、そうか。ならいつか強くなったら一緒に冒険に行こうじゃねえか!」



「ほんとですか?やった!Aランクの冒険者となんて夢みたいだ!」


無邪気に喜んでいるとガルマンはポリポリと頭を掻きながら、

「まあ、坊ちゃんがBランクになったら、だけどな!わっはっは」



「えぇぇー。じゃあすぐ行ける訳じゃないのか。でもありがとうございます!まずはBランクになれるように頑張ります!」



最後に「おう」とだけ言って手を挙げて去っていくガルマンの姿は、俺が憧れていた冒険者像そのままで、当面の目標が出来た。




「じゃあ次はお菓子屋さんに行くわよ〜」



そう言って3人と護衛達も冒険者ギルドを離れたのだった。

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