第6話 鍛錬初日
練兵場に着いた俺たちはルイスさんの指示に従って騎士たちが鍛錬の最初に行うメニューを軽くしたものを行った後に似通ったクラスごとに集まり騎士達から手ほどきを受ける事になった。剣士などの近距離戦闘がメインとなるクラスの人は武器の握り方や基本となる構えなどを、弓系のクラスの人は弓の扱いなどを教わっている。支援系クラスの人は身を守る技術を教わることになり、勇者のクラスを持っていた正俊は騎士団長自らが指導を行なっている。
俺はと言うと
「かなり精度が上がりましたね。」
副団長のカイルさんと射撃精度を上げる特訓をしていた。銃皇のクラス補正のおかげか初めて使う銃も何度も撃っているうちに扱いに慣れてきた。また弾丸を撃ち切ったらすぐに空薬莢を収納して銃弾創造でシリンダーに弾を生成していく事を繰り返したらかなりスムーズにできる様になった。(魔力が足りなくなったらカイルさんの持つ魔力譲渡で回復した。)
「銃の方はここまでにして次はあなたのスキルにある武器を使ってみましょう。」
そう言ってカイルさんはいくつか武器を渡してきて、
「蓮さんは向こうの世界で武術を習っていたそうですね。かなり動きも良いですし今渡した武器を使って私と模擬戦をしましょう。ステータス差があるので魔道具で下げますしね。」
準備しますねと言って模擬戦用の武器を装備し始める。
実力者揃いである王国騎士団の副団長、つまり並み居る騎士団員の中から実力を認められた。そんな人と模擬戦が出来るそれだけでもありがたいことだと思う。ここは彼の胸を借りて色々学ばせてもらおう。
そうやる気を出しているうちに準備が終わったみたいで軽鎧を着て左右の腕に腕輪をし、剣を腰に刺したスタイルのカイルさんがいた。
「やる気十分な様だね。それじゃあ始めようか。最初だし、このコインが地面に落ちたら開始って事で。」
そう言ってカイルさんがコインを上に打ち上げ、2人とも武器を構える。
そしてコインが地面に着いた途端に二人共動き出した。
ほぼ同じタイミングで動き出したのだが今までの技術の差が出て俺が数歩動いた時には目の前にいて剣を振り下ろすところだった。
ガキン
ギリギリ剣で受け止めたが完全に相手のペースになってしまった。右、左、上と振るわれる剣を防ぎながら隙を伺うが
(俺のつける隙がない。)
(流れ木葉)
全くと言っていいほど隙が見つからない。このままではまずいと思い相手の攻撃で後ろに下がる事で間合いを空けてこちらから攻撃を仕掛けてみようとしたが、下がっている間カイルさんが剣から弓に替えて矢を引き絞っているのが見え、
(やばい!投落)
とっさに短剣を投げて放たれた矢を撃ち落とす。
「いやぁ驚いたよ。ここまで私の攻撃をしのぎきれるとは思ってなかったよ。」
(相手のいる間合いや持っている武器、戦闘スタイルによって武器を替える。これはかなり戦い難い。最も恐ろしいのは複数の武器を使いこなせるカイルさんの実力か。)
そう思いながらもう一度借りた武器を頭の中で確かめながら構える。
「それじゃあ続きといこうか。」
途中休憩を挟みながら訓練の時間の最後まで俺はカイルさんと模擬戦を続けた。結果?一度も攻撃を当てることが出来なかったよ。
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勇者たちの戦闘訓練初日終了後
「どうだったかい」
「団長。なかなか筋のいい子が多いですよ。何より教え甲斐がある。」
「それはいいことだ。引き続き担当は任せる。」
「はっ。」
「副団長。君に頼んだ子はどうだい?」
「あの子はかなりの腕前ですよ。彼自身の技術はスキルレベルと合っているとは思えないほどです。魔道具使って彼より少し強いくらいのステータスで相手したのですが私の特殊スキルの警鐘が無かったら相手出来なかったですね。恐らくステータスが私達騎士団と同じくらいだったら勝てるとしたら団長かぎりぎり私くらいでしょうね。」
「そんなにかい⁉︎」
「ええ、剣術についてはそこまで高くはないですが刀術、投擲術についてはかなりのものです。刀と投げナイフを使っている時、動き始めの一瞬だけ認識出来なくなることが模擬戦の中何度かありました。」
「それはすごいね。確かに私か君しか対応できないだろう。」
「これからが楽しみですよ。ところで団長の方は如何でしたか?」
「勇者のクラス持ちかい?まだ原石だけど磨けば凄い逸材になるだろうね。私の助言をどんどん吸収していってくれるから今日だけで基本が大体出来るようになってた。いずれは私を軽く超えるんじゃないかな。」
「いずれ団長を超えるかもしれないって凄いですね。」
「そうだね。彼らに魔王の討伐という私たちの世界の問題の解決を任せるんだ我々も出来る限りの手助けをしないとな。」
「ええ。」