第3話 召喚3
閉じていた目を開けると貴族っぽい服装の人たちと彼らを守るように立っている騎士たちその奥に見上げるほどの高さの壁があった。
(豪華な装飾の壁、貴族と思われる人たち、彼らを守る騎士たちから推測するにここは城の中だろう。)
そう考えながら周りを見るといきなりのことでどうすればいいのか分からずキョロキョロしているクラスメイトがいた。いつも冷静でクラスのまとめ役の一宮 正俊も軽くパニックになってるのは珍しいことだ。
「なあ蓮、何が起こったんだ?」
近くにいた拓磨が小声で話しかけてくる。
「どうやらあそこにいる魔法使いっぽい人に呼ばれたっぽいね。」
「呼ばれたって?」
「魔法を使って召喚された、悪く言えば拉致られたってとこ。」
「ひでぇ言い方だな。っていうかお前声そんな高かったっけ?」
「おそらく事実でしょ。あと声は気にするな。」
「事実だとしてもよぉもう少し言い方なんとかならんかったのかよ。というよりなんで俺らが召喚されたんだ?」
「それはあそこにいる人達が教えてくれるんじゃないか。」
そう言って目を向けた先には大きな杖を持った聖職者っぽい服装の女性と段差を上った先にある豪華な椅子に座る初老の男性がいた。
初老の男性が椅子から立ち上がり近くまで来ると威厳のある渋い声で話しかけてきた。
「ようこそ勇者様方。ここはパラシャン。我々はあなた方を歓迎しますぞ。我はエルナリア王国国王トランバルト・ロス・エルナリアである。よろしく頼む。」
トランバルト国王の挨拶が終わると後ろにいた女性が前に出てきて、
「いきなりのことで混乱されているかと思います。ですがこちらもこうするしか無い事情があるのです。ここから先の話は別の部屋にてさせていただきます。付いてきてください。」
と言って広間の出入り口の一つに国王と一緒に向かっていった。俺たちも後に続いた。
俺たちは会議用の机と椅子の用意された部屋に案内された。
王様と神官服の女性の対面にまとめ役の一宮 正俊が座りその右に教師でたった一人連れてこられた佐々木 修治先生が座って他のみんなは適当な椅子に座っている。
クラスの殆どが未だ起こったことに意識が追いつかずのようでここまで誰一人として話をしていない。この部屋に来るまでに一宮は今の状況を理解したようだが佐々木先生は未だ現実を理解できてないようでまるで使い物にならなくなっている。
全員が着席したのを見て女性が話し始めた。
「挨拶がまだでしたね。私はエルナリア王国第一王女リリアナ・ロス・エルナリアと申します。いきなり見知らぬ場所に飛ばされて混乱しているかと思います。ですが先ほど申しましたようにこの世界の為こうするしか無かったのです。その理由をお話しします。」
彼女の話からこの世界には人族と獣人族、亜人族の3種類の種族が存在する。この3種族はそれぞれ国を作って生活していた。ところがある時邪神が現れ彼らを滅ぼす為、自らの眷属として魔人とそれを従える魔王を生み出し戦争を始めた。それを見た神エレステレナが魔王を倒す為に勇者召喚の術を授けられエレステレナが邪神と、異世界からの勇者が魔王と戦い邪神と魔王を倒すことに成功する。が、邪神が最後の足掻きとして100年感覚で魔王が現れるように世界に干渉を行ってしまう。こうして100年ごとに魔王が現れるようになり、そして前回現れたのが100年前、つまり魔王がまた現れる年であり実際1ヶ月前に現れている。
「普通の魔族であれば聖騎士クラスの者であれば倒せるのですが、幹部となると倒せる者は限られてきます。問題なのは魔王の方で、魔王は異世界から来たものしか倒すことができないのです。」
どうやら邪神がそういう風に生み出したらしい。
「このままではこの世界が滅んでしまう。だから貴方達を呼んだのです。魔王を倒してこの世界を救ってはくれませんか。」
「一つ聞きたい。」
「はいなんでしょう。」
「俺たちを元の世界に戻すことはできるのか?」
事の大きさに唖然としていた皆んなが一宮の質問にはっとして答えるであろう王女の方へ期待の目を向けた。
「元の世界に戻す方法はあります。しかし今はそれは使えません。」
しかし王女の答えにより場は騒然となった。
「おい! どういうことだよ!」
「さっさと返してよ!」
「今すぐ帰せないってふざけないでよ!」
誰もが帰れないことへの怒り、不満をぶつけていく。俺の隣の拓磨も「まじかよ・・・」と呆然としている。俺はこうなる可能性があることが分かっていたし、今は使えないつまり条件を満たせば使えるという事が分かったからこの言葉を冷静に受け止めることができた。
喧騒の中一宮が
「落ち着け皆んな!」
と一言言うと沈静化した。
「王女様もう一つ聞きたい事が出来ました。」
「あなた方を送還する条件ですね。」
「はいそうです。」
「条件は召喚目的の達成です。」
やっぱりそうか。一宮も同じ考えだったようで納得した顔をしていた。
「もう一度お願いします。この世界を、私達を救ってください。」
そう言って国王様と王女様は俺たちに頭を下げた。
「頭を上げてください。皆んな俺は魔族と戦おうと思う。どのみち魔王を倒さないと帰れないんだ。みんなも感じていると思う自分の中にある力を。」
「召喚された勇者様は、皆色々な力を持っていますし、神様からギフトと呼ばれる力が与えられているそうです。」
「その力があれば魔族と戦える。なら俺はこの力を使って戦おう。皆んなはどうだ?」
一宮の問いに
「お前一人じゃ心配だからな俺もやるぜ。」
「そうねここに閉じこ持ってたからって戻れないんだから私も戦うわ。」
「俺もだ。」
皆んなが賛同していく。皆んな行き先が真っ暗な中現れた一つの希望にすがりつく、そんなかんじだった。
国王様と王女様は俺たちが魔王の討伐を承諾するとホッとした顔をして
「有難うございます。」
とまた頭を下げた。