006相打ち?
竜巻の中は案の定暴風の渦で、舞う花びらは俺の機体の薄皮を切り裂く、吸い込まれそうになるのをこらえ一枚花びらを取ってみるが摘まんだ指が切れて慌てて手を離した。
『どうやらこの花びらは君の撃ったガトリングガンの弾丸のようだね。どうやったのかはわからないが質量を変えず姿だけ変えているようだね』
マジもんの魔法だなそりゃ。
つまりこの花びら全て弾丸なみの質量を持つってことか。
さっきの感触金属のように花びらは硬かった。
そんな物が暴風のなかで大量に舞っているのだ、普通の機体など簡単に切り裂いて破壊するだろう。
さっき竜巻に吸い込まれた機体はこれでやられたようだな。
「じゃあさっさと脱出しうますか」
『そうだね準備は万端。この程度のそよ風喰鉄機の腹の足しにもならないさ』
「そうだな喰牙」
すでに【捕食成功】のアイコンは出ている。
竜巻の中心ではないとはいえ空気の端を掴めば捕食は可能という事か。
俺の掛声とともに花びらの踊り狂う暴風は俺の腹部に吸い込まれていく。
「ほほう! 見事な脱出魔法のお手並みしかと拝見いたしました! 種はその腹部の口ですね?」
【捕食解析完了。特殊スキル天候操作】
頭に天候操作の概要の情報が流れ込んでくる。
「そんなことはどうでもいい! 続きだ続き!」
「若さとは吹き上がる情熱と無謀への挑戦、年長者たる者として高い壁として立ちふさがりましょう!」
「じゃあ次はこれだ」
俺は喰鉄穿ちを刀の形にしてシンプルな接近戦を装備を出す。
そして申し訳程度にギミックをいれてもみた。
「いくぞ!」
一気に近づいて上段から斬撃を行う。
相手の機体は頭につば広帽のようなものをかぶっている。
そのせいでルベナスの上方には死角があるだが当然ルベナスも承知の上だろう。
そのまま刀は吸い込まれるようにルベナスの機体切り裂いた。
だが。
「!?」
明らかにおかしい手ごたえがあまりない空気を切り裂いたかのようだ。
真っ二つになったルベナスの機体に目を向けて警戒する。
次にポンという軽快な音と共にデフォルメされたルベナスのまるっこい空気人形が現れた。
「第三の魔法を使った脱出マジック! 月並みではありますがそれは偽物でございます」
軽く頭を下げ会釈するルベナス。
「ならこれはどうだ」
喰鉄穿ちをショットガンに変形させた。
刀はまだ右手の中だ。
片手でショットガンを発射するこれは一度に千発の弾丸を広範囲にばらまくようにしてある。
撃った時の反動だとか損傷だとか細かい部分を考えるのは止めた。
そう信じればそうなるそれが喰鉄穿ちだ。
そのまま連続で3発発射2発は左右に残りは下方に。
「やれやれ若い! 若すぎる! この程度の童子の遊戯で私を倒そうとはそうならば一流のエンターテイナーとして格の違いをみせてあげましょう!」
そのままルベナス穴だらけとなり動かないが、本体に当たってはいないだろう。
そんなことは織り込み済みだ。
天候操作でエネルギーの流れの変化を感じる。
天候操作とは特定の場所に細分化したエネルギーを与え自然現象を操作する技だ。
それを利用し特定の位置にエネルギーを仕掛けておけばその場の動きを感知できるのだ。
動いた予想通り。
天候を操作し、俺は先ほど撃った個所の上方に刀を投げた。
次にパンと先ほど聞いた経過な音とともに空気人形が現れた。
「狙いはよろしいですが、この程度では私を倒すのはとてもとても」
俺の予想は当たっていたが体をひねられ簡単に交わされてしまう。
これも予想通り天候操作を同時に開始。
「マクティーン・カインとかいたな。アンタがこの大会にかける願いはなんだ?」
「この場合先に尋ねる側が告げるのが礼儀ですが、若さゆへの無知として指摘は控えましょう。私の願いは無限の魔力、私の魔法と無限の魔力が合わされば私は全ての世界に並ぶ物がいない至高の魔法使いなる事が出来るのです! そうなれば私の名は百年いや千年は語り継がれるでしょう!」
「俺の願いは俺の世界を救う事だ」
「それは素晴らしい願いな事で、しかしこれは大会勝利こそ全て」
「その通りそのための第一歩だ」
次にルベナスの首が落ちた。
なきほど投げた刀を天候操作で操ったのだ。
ルベナスは首が落ちる刹那。
「考える事は同じですか」
その言葉のあと喰鉄機の首が根元から切れた。
首には細長い糸が見える。
「全くだ」
切断された首を眺め俺はそう吐き捨てる。