001俺たちの世界は終わっている
人類が栄華を誇った事は今や誰も覚えていない。
世界はもう人類の物ではないのだ。
「走れサクラ!」
「待ってタクト!」
「なんでアイツら影がこんなところに……」
影、今世界を支配し俺たちを追っている存在。
彼らは常に黒い影を纏い俺たちを追いかける。
姿は様々で四足歩行の個体もあれば二足歩行さらに六足と統一性はない。
共通する点は、球体の体に対して不釣り合いなほど手足が細いぐらいだ。
奴らの母船は唐突に現れ世界に影をばらまいた。
人類の抵抗は虚しく失敗に終わり世界の人類はほとんど残っていないはずだ。
すでに俺たちのコロニーと他のコロニーとの連絡は絶たれ外の状況は知る由もない。
俺たちは物資補給のために町に降りた途端見つかってしまい、このありさまというわけだ。
「もうだめ走れない……」
サクラが足を止めた。
「いいから走るんだ! おいつかれたら吸収されるぞ!」
吸収――奴ら影は、人間を見つけると追いかけ、追い詰めると体から手を伸ばし覆いかぶさるように圧し掛かり人間を吸収する。
どこに行ったかは誰も知らない。
生きていると主張する者も死んでいると主張する者がいるが、生きていても死んでいても、誰もかえってこない以上死んでいるのと同じだ。
『そこの君助かりたいならその先の十字路を右だ』
「サクラ何か言ったか?」
「何も言ってないけど」
『これは君だけにしか聞こえないよ。そういう設定だからね。それよりすぐ後ろに影は来ているよ。この先僕が言った所以外は何もない行き止まりだよ』
設定? なんだかわからないが、この状況信じるしかないか……
「右に行くぞ! サクラ」
「まってタクト! もう限界……」
「この先の右の道に行けば助かる!」
はずだ。
当然根拠なんてない。
だが、頼れるのは謎の声だけだ。
「分かったタクト!」
そう首肯を返すサクラの右手を引いて十字路を右へ。
だが。
「どうするの? 穴が開いていて通れないけど……」
『穴に飛び込むのさ! 時間はないよ早く決断することをお勧めするよ!』
その言葉に思わず躊躇してしまった。
目の前の穴に飛び込めと言われて躊躇しない方がおかしいが。
それがいけなかった。
「穴に飛び込むぞサクラ!?」
「どうしたの? きゃ!」
影はサクラのすぐ後ろに来ていて、細長い手を伸ばしてサクラの左手を取っていた。
「今助ける!」
とサクラの手を引こうとするが。
「タクト駄目みたい。穴には貴方だけで」
「サクラァアアアアアアアアアアアア!!!」
そう言って右手で俺を押して俺は穴に落ちていった。
次の話で主人公機だします。
ついでに世界観を説明してさっさと大会に行きたいところ