汚れた制服
am 7:48 空は一面、雲に覆われ今にも雨が降りそうだ。和也は青い折りたたみ傘をかばんに入れ、7:57の電車に乗るため、駅へ向かった。和也は、今年の4月に蔵切南高校に入学した。高校生になって5ヶ月も経つのにまだ友達はいない。休憩時間はいつも一人でいる。誰かと居たい気持ちもあるが、一人でもいいという気持ちもある。そんな事を考えていたら、駅に到着していた。
am7:59 駅には、誰もいなかった。次の電車は48分後、学校には8:30までに行かなくてはいけない。この地域を通る電車は、朝は1時間に一本来るが、これ以降は2時間に一本ペースになる。
学校までは歩けば30分掛かる。でも、体力は全然無い。どうしようか迷っていたが、和也は歩くことにした。遅刻は今までに4回したことがあった。5回目で反省文を書かされ、10回目で生徒指導され、20回目で退学処分らしい。この制度で何人か退学処分になったらしい。学校には行きたくないが、親が、「将来、仕事しなくちゃいけないから、学校に行きなさい」と、言うから学校に行っている。
奥には雲に隠れた山、横には米を収穫し終えた後の田園風景が、広がる。いつもは電車の車窓から見ている風景だ。歩いていくことは、こういう日だけだから、とても新鮮に感じる。和也はこっそりスマホを持ってている。学校のルールでは禁止されているが、実はみんなも持ってきている。スマホの時間を見たら、時刻は8:21だった。和也はかばんのチャックを閉めずに走り出した。昨日の雨のせいか道路は濡れていて、滑りやすくなっていた。とにかく走り続けた。
am8:36 汚れた制服を冷たい目で見ている。クラスの人は、突然開いたドアに驚いたのか、和也を冷たい目で見ている。「早く座れ」と言う声が聞こえた。クラスで一番元気でうるさい、体育会系男子の藤本敦士だ。彼は運動ができて勉強も出来る。理科と数学が得意だと聞いた事がある。和也は、こういう人が苦手で何も言わず、窓側の一番後ろの和也の席に黙って座った。濡れた道路を走っていて、転けたから制服が汚れている。
1時間目が、始まる前に担任の小野田先生に呼ばれ、生徒指導室に連れて行かれた。こうなるとはだいたい予想がついていた。「何回目だと思っているんだ。」
「…」
「何か言い訳でもあるのか。」
「あの…」
「何かあるのか。」
「…何でもない。」
「そうか、じゃあこれをやるから、たくさん書いてこい。」
授業中ずっと書いていたから何度か注意された。