初任務~当日・午後-3
数哉と堕天使の戦闘が終わったばかりの現場。
「ちょ、ちょっ……か、数哉くんの持ってる剣って……も、もしかして……」
金剛が創り出した結界の中、美紅は透明な結界壁に両手を付け、数哉が手に持っている剣を凝視する。
「あ、ああ……おそらく、ミカエルの剣だな……初めて見るが、あの様相は伝承にある通りだ」
平静を装いながら結界壁に腕を組んで凭れ掛かり、金剛が美紅の言葉に答えた。
「……あ、剣が……空に帰ってっちゃった……あぁ、残念」
数哉の手から離れた〈ミカエルの剣〉が、光の筋を引きながら空に上がっていくのを見上げ、美紅は軽い溜息を吐いた。
「まぁ、仕方ない。アイツが行ったのは一時的な血の契約だったのだろう……しかし、熾天使であるミカエルから力を借りる事が出来るとは……」
空に走る一筋の光線を横目に金剛が感心したような口ぶりでそう言うと。
「ね! 数哉くんはとんでもない超新星だわ! 独学って言ってたけど、見た事が無い術も使ってたし!」
燥ぐ感じで美紅が数哉を眺めながら金剛を一瞥する。
「そう、それだが……」
「あっ! あ、あ、数哉くん?! どこ行くの~?! 数哉く~ん!」
美紅は金剛の言葉を遮るように結界壁をバンバンと叩き、その場から離れていく数哉に呼び掛ける。
「無駄だ。鏡界陣は単なる目くらましではない。完全にこちらの存在を隠すことが出来る結界だ。こちらの声が届くわけがない」
金剛は結界壁に凭れ掛かったまま足も交差させ、自信あり気にそう語った。
「なら、さっさと解いてよ」
「それは出来ない」
「な、なんでよ?」
言い切る金剛に、美紅は戸惑い怪訝な表情を浮かべる。
「急を要する状況で結界を張ったせいなのか、どこか不備があったようだ。なぜか解くことが出来ない」
「はぁ?! どうすんのよっ?!」
涼しげな表情で答える金剛に美紅は呆れ顔で怒鳴る。
「6³が張った結界の中に結界を張っていることが要因と思われる。おそらく、6³の結界が解ければ鏡界陣も一緒に解けるだろう」
「な、なんなのそれ……夕方までここにいろってこと? ……はぁぁ」
どこか気分良さ気に周りの景色を眺め始める金剛に、美紅は恨めしい視線を向けながら大きな溜息を吐いて、その場にへたり込んだ。