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第9章ー3

 少し場面が変わります。

 スペイン共和派の内輪揉めの話が主になります。


 その頃、スペイン共和派内では、酷い内ゲバが起こっていた。

 北部戦線の崩壊の最大の責めを負うのは、誰か、または、どこの勢力か、ということで敗戦責任の追及が行われたのである。

 勿論、これ自体は悪いことではない。

 敗戦があった場合、責任者がその責めを負うのは当然のことだった。

 だが、それが責任の押し付け合いになり、関係の無いところにまで責任が負わされるようになり、更に内部分裂まで引き起こすようになっては、極めて悪いこととなる。


 スペイン内戦勃発後、スペイン共和派内で徐々に力を付けていた共産党系は、この北部戦線の崩壊の最大責任は、無政府主義者系や社会党系、カタルーニャ民族主義者系といった非共産党の勢力が、北部戦線救援に非協力的であったためだと主張し、その根拠として、スペイン国民派が行う、スペイン共和派内に我々への内通者、第五列が数万人いるという宣伝まで持ち出すことで、共産党系以外の勢力の弾圧に乗り出した。

 当然、無政府主義者系や社会党系、カタルーニャ民族主義者系も、この共産党系勢力の弾圧に、反発することとなり、所によっては、共産党系勢力と、非共産党系勢力とで、同じスペイン共和派内の部隊同士が容赦なく銃口を向けあい、発砲して、双方に死傷者が出る事態が発生するようになった。


 トハチェフスキー元帥ら、ソ連から派遣された軍事顧問団等の中立派は、何とか双方を宥めようとしたが、限界があり、例えば、マルクス主義統一労働党(POUM)は解体され、党首アンドレウ・ニンは強制収容所送りになった後、完全に行方不明になった。

(その後、スペイン共和派の公式発表によると、ニンは、イタリア兵によって編制された特殊部隊が、強制収容所を襲撃した際に脱出した、おそらく、ローマへ亡命した、とされた。

 だが、内戦終結後の、スペイン国民派の公式発表によると、ニンは、スペイン共産党系が掌握していた秘密警察により、強制収容所内で拷問死したとされる。

 ちなみに、伊政府は、ニンの救出作戦等、実行していない、と公式発表している。

 これこそが真相だ、と主張されるスペイン国内外の研究も多々あり、21世紀に入っても、ニンの最期については、未だに謎めいたままであり、スペイン内戦の謎の一つとされたままである。)


 こうした内輪揉めに、スペイン共和派が明け暮れている間に、北部戦線を制したスペイン国民派は、こちらに寝返ったバスク自治政府の支援までも得て、1937年5月初めから、東部戦線で大攻勢に転じた。

 北部戦線の整理に成功したスペイン国民派の兵力が大幅に増える一方、スペイン共和派の兵力は大幅に減少しており(この大攻勢が発動される前、後方警備に当てる部隊を除き、前線で戦えるスペイン国民派の兵力は、30万人近くに達していたが、スペイン共和派の兵力は、北部戦線の兵力を失ったことにより、やっと20万人を数えるにまで減少していたとされる。)、更に、カタルーニャ民族主義者の多くが、スペイン共和派内の内輪揉めに愛想を尽かし、地下への潜伏、亡命に奔ったため、この攻勢は大成功に終わり、同年6月の終わりには、スペイン国民派の先鋒部隊は、終にバレンシア州の地中海に面した港湾都市ビナロスを占領することに成功し、スペイン共和派の勢力は南北に分断された。

 いうまでも無く、この大攻勢には、「白い国際旅団」も投入されている。


 事ここに至っては、スペイン共和派は、自らの政府によるスペイン統一を当面は諦め、次の攻勢に運命の全てを託すしかない、と覚悟を固めざるを得なかった。

 次の攻勢に成功を収めることで、少しでも自分達に有利な講和、または停戦を勝ち取るしかない、と考えたのである。 

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