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第8章ー15

 オビエドを中心とする攻防戦は、1か月近く続いた。

 土方伯爵ら、「白い国際旅団」の幹部等は、オビエド攻防戦こそ、スペイン内戦の帰趨を決める終わりの始まりとなると見切っていた。

 実際、後世の研究によると、ソ連から派遣された軍事顧問団長のトハチェフスキー元帥も、似たような見解を持っていたらしい(らしい、というのは、直接的な証拠が無く、間接的な証拠しかないため。)。

 1937年2月当時、スペイン国民派、共和派共に、オビエドよりもマドリードの攻防戦こそ重要と考えていたのだが、実際にはオビエド攻防戦こそ、スペイン内戦攻防戦の天王山といってよい戦いとなった。


 オビエド救援を目指す共和派軍の攻勢は激しいもので、当初は、「白い国際旅団」中、最精鋭と共に自他共に認める日本人義勇兵は全てオビエド攻略に投じられる予定だったのが、半数がオビエド救援を目指す共和派軍に充てられる有様だった(アラン・ダヴー少尉ら日系人義勇兵中隊は、こちらの任務に投入された。)。

 だが、攻勢を行う部隊の練度が低かったことから、この攻勢は上手くいかず、ダヴー少尉らの日系人義勇兵中隊等の名を後に挙げる結果をもたらした。

 しかし、その一方で、オビエド籠城軍は、最後まで意地を貫いた。


「かなわんな。市街地での戦いには、38式歩兵銃は向かんな。自動小銃とは言わないまでも、短機関銃が欲しいものだ」

 そう嘆きながら、土方勇志伯爵自らが陣頭指揮を執って、オビエド攻略に「白い国際旅団」は全力を尽くす羽目になった。

 オビエド市街にある建物一つ一つが、固定トーチカといってよい存在となって、共和派軍の民兵が立て籠もるようになっており、そこで民兵は勇戦敢闘した。


 軽迫撃砲では建物は潰せず、38式歩兵銃の銃弾は建物の壁を貫通せずで、「白い国際旅団」は悪戦苦闘する羽目になった。

 爆撃や野砲の砲撃が浴びせられるのだが、敵の瞳の色が分かる範囲にまで接近して戦え、を合言葉に近接戦闘を挑もうとする共和派軍の民兵に、実際に接近されては、砲爆撃は誤爆等を警戒する余り、行えない状態になってしまい、最後は歩兵同士の半ば肉弾戦となってしまうのだった。

 こうなると、ボルトアクション式ライフルの38式歩兵銃より、サブマシンガンが遥かに役立つ戦場となってしまう。

 オビエド市街地の戦いに、「白い国際旅団」は悪戦苦闘を強いられた。


 だが、最終的に先に息が尽きたのは、共和派軍だった。

 まず、オビエド救援軍の過半数が死傷する有様となった事から、共和派軍はオビエド救援を断念し、オビエド救援軍が守勢に入ることが決断された。

 そして、それを知ったオビエド籠城軍も、これ以上の抗戦を断念し、2月10日、降伏を受け入れた。

 双方が約6万人を投入したオビエド攻防戦において、共和派軍は最終的に約4万人が死傷、または捕虜となって失われ、国民派軍は約2万人を死傷させて失ったと伝わる(国民派軍の損害は、「白い国際旅団」以外も含んだ数字である。)。


 ここにアストゥリアス州は、スペイン国民派の手に落ちたといえる状況となり、北部戦線で共和派が抑えている地域全てが、国民派の手に落ちるのも時間の問題と言える状況となった。

 こうした状況に陥ったことから、共和派のバスク州自治政府は、石原莞爾大佐がうごめいたことで、ローマ教皇庁(と英等)が仲介の労を執る、と呼びかけてきた国民派との単独和平交渉に応ずる動きを示すようになるのである。


 これによって、北部戦線は雪崩を打つように国民派が優勢となった。

 また、それによって戦局全般の不利が明らかとなった共和派は、大反撃を成功させることによって少しでも有利な講和を目指すことにもなるのである。

 第8章の終わりです。

 次から、第9章に入ります。


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