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第5章ー6

 20世紀の最初の10年間、1900年代において、スペイン(いわゆる本土)の人口は約1800万人余りだったが、その内の約3パーセントが祖国に絶望して、南北アメリカ大陸へと400年前とある意味同様、移民として出発する有様だった。

 平均寿命は、15世紀末にスペインが「レコンキスタ」を完遂した頃と全く同じ、と言っても過言ではない35歳という有様だった。

 スペインの生業人口の約7割が農業に従事し、鉱山業や工業で働く人は2割に満たず、スペインの主な輸出品は農産物という、どう見ても後進国に、20世紀初頭のスペインは転落していたのである。


 だが、スペインには天佑が起きた。

 (第一次)世界大戦の勃発である。

(もっとも、その反動が大きく、それによって、スペイン社会の分断を、より酷くしたことを考えると、天佑と言うより災厄だったのかもしれない。)


 スペインは世界大戦に際して、全面的な中立を維持した(米西戦争等でボロボロになっていた為にそれ以外の路がスペインには無かったのだが。)。

 そして、中立国と言う立場を駆使し、スペインは、農産物を輸出し、鉱工業を急激に発展させた。

 これによって千を軽く超える新企業が創設され、出生率も上向く等、経済的な奇跡を引き起こした。

 だが、世界大戦という特需が終わると、スペイン政府は保護主義を再開し、スペイン国内には失業者が溢れることになった。

 世界大戦特需でいい思いをしており、更にロシア革命、ソ連の建国という事態を見聞したために、失業者達は、スペインの現体制に対する失望と怒りを却って大きく溜めこむことになった。

 そして、失業者達は、今、職のある労働者達と手を組み、労働組合運動を急進させた。


 スペインの労働組合運動の源流は、19世紀前半にまでさかのぼるが、労働組合運動が活発化し、急速に勢力を伸ばしたのは、世界大戦がきっかけだった。

 世界大戦は、スペイン全体では好景気をもたらしたが、大戦特需に伴う物価の上昇に見合った労働者の賃金上昇が行われず(世界大戦勃発前と終結時の物価と賃金を比較すると、大よそだが物価は2倍になっていたのに、賃金は25パーセント程しか上がらなかった。)、労働者の生活は大幅に苦しくなったのである。

 こういった状況から、1919年末には、スペインの労働組合員数は、90万人近くにまで膨れ上がり、ストや争乱がスペイン国内で頻発するようになった。

 また、出生率の上昇は、超短期的な視点にはなるが、農村部の若者の都市部への流入を招き、流入してきた彼らを、いわゆる赤く染めることになり、スペイン国内の混乱をより酷くした。


 1923年9月、こういったスペイン国内の混乱を鎮めるために、プリモ・デ・リベラ将軍(以下、「プリモ将軍」と呼称する。)が、国王の暗黙の支持の下、軍を背景にクーデターを起こし、スペイン全土を戦争状態と宣言し、騒擾を武力で鎮圧した。

 プリモ将軍は、スペインの独裁者として、彼なりに努力したが、実力も運も無かった(1929年に世界大恐慌が起こり、金本位制を無理して採用していたスペイン経済は大打撃を受けた。)ために、軍からも民衆からも国王からも、最終的には見放されてしまい、1930年には国外に亡命する羽目になる。

 

 だが、このことは王政にも結果的に致命傷を与えた。

 リベラ将軍の独裁が崩壊した後、共和派等は急速に勢力を伸ばし、1931年の総選挙で共和派が大勝する。

 こういった状況から、国王アルフォンソ13世は、1931年4月14日に国外亡命を余儀なくされてしまい、スペインの王政は崩壊し、共和政がスペインに成立する。

 だが、スペイン国内の様々な対立は、全く収まっていなかった。

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