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第5章ー2

 前田利為少将は、イベリア半島、スペインの古代からの歴史を思い返した。

 かつて、聖書の「乳と蜜の流れる土地」のようだった、あの豊かな大地が、何故にあそこまで荒廃してしまい、人心を荒ませてしまったのだろう。


 イベリア半島の遥かな古代史は、文字の記録が無く、正確なところは不明と言う他ない。

 ようやく朧気ながら、少しずつその歴史が分かり出すのは、第一次ポエニ戦争でローマに大敗し、シチリア島等を失ったことから、その復讐を誓ったカルタゴ(より正確に言うと、当時のカルタゴの有力者のハミルカル・バルカ(古代の有名な名将、ハンニバルの実父))が、ローマに対抗する国力を蓄えようと、イベリア半島(当時の呼称は、ヒスパニア)の開発に乗り出した頃からである。


 開発が進んだヒスパニアは、カルタゴに第二次ポエニ戦争に踏み切るだけの力を与えることになり、そのためにローマとカルタゴの第二次ポエニ戦争は、第一次ポエニ戦争と異なり、(西)地中海一体に影響を与える大戦争となった。

 そして、第二次ポエニ戦争の結果、ヒスパニアは(一応は)ローマの支配下に入った。


 だが、この頃は、カルタゴにしても、ローマにしてもヒスパニアの沿岸部を主に支配していたに過ぎず、内陸部はまだまだ独立した勢力(部族や氏族等)が健在で、新しい支配者のローマに豊かな大地を奪われてはたまるか、とローマが支配の手を伸ばそうとする度に抵抗した。

 最終的にヒスパニア全土が、ローマの完全な支配下に入るのには、約200年の歳月が掛かり、その間に共和国だったローマは帝国へと、姿をほぼ変えてしまう。


 それから700年余りの時が流れ、その間にゲルマン民族の侵入等により、ローマ帝国は崩壊し、戦乱の後で、最終的にほぼイベリア半島全土は、ゲルマン民族の1つ、西ゴート族の支配下におかれ、西ゴート王国が収めるようになったが、その頃までのイベリア半島は、かつてカルタゴが目を付けたのも当然、と思われる程、豊饒な大地だった。

 だが、宗教抗争の嵐が、イベリア半島に襲い掛かった。


 7世紀にアラビア半島でマホメットによって開かれたイスラム教は、瞬く間に勢力を急拡大し、100年も経たない内に、「イスラムか、貢納か、剣か」を掛け声にして、北アフリカ全土までも征服した。

 そして、イスラム教を奉じるウマイヤ朝は、当時、カトリック、キリスト教を国教としていた西ゴート王国に襲い掛かり、711年にグアダレーテ河畔の戦いで西ゴート王国軍を大敗させ、数年の内にイベリア半島全土をほぼ支配下に置いた。

 だが、西ゴート王国の貴族ペラヨ等、一部のキリスト教勢力はイベリア半島西北部に718年、アストゥリアス王国を建国、ここにキリスト教徒とイスラム教徒の長きにわたるイベリア半島における抗争、いわゆるレコンキスタが始まった。


 このレコンキスタは8世紀近くに及び、最終的に1492年のスペイン王国(細かいことを言うと、この時点では少し違うが)によるグラナダ陥落により、キリスト教徒の勝利に終わる。

 そして、この勝利は、スペイン王国内のキリスト教狂信を強めた。

 同年に、コロンブスによるいわゆる「新大陸発見」もあり、イベリア半島の2つの国、スペインとポルトガルは、キリスト教、カトリックによる世界征服に乗り出す。


 世界征服とは、大げさな、と思われるだろうが、実際、トルデシリャス条約やサラゴサ条約によって、スペインとポルトガルは、地球を2つに分けて、1つはスペイン領、もう一つはポルトガル領と定めている(この当時、日本は、スペイン、ポルトガルに未知の国だったが、サラゴサ条約を単純適用すると、日本はほぼポルトガル領となっている。)。

 散々、迷ったのですが、スペインの古代史から語ることにしました。

(そうしないと、何故、スペイン内戦という悲劇が起こったのか、小説とはいえ、分かり難い気が私にはしました。)

 念のために申し添えますが、史実を私なりに理解し、この世界に合うように改変して述べた歴史叙述ですので、細かい史実とは違う点が多々出てくると思いますが、ご寛恕ください。

 

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