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第4章ー5

 この辺りは、関係者が基本的に沈黙を守るので分かり難いが、好みの問題もかなり入っていたのだろう。

 海軍航空隊は、空母や戦艦等を護るために、できる限り大威力の機関銃を好んだ。

 一発でも当たればいい、それによって味方の艦船を攻撃してくる敵機を破壊する必要がある、という発想である。

 そのために、エリコン20ミリ機関砲の導入に、海軍航空隊は奔った。


 それに対し、空軍は、機関銃の命中率を重視した。

 そのために、ブローニング12,7ミリ機関銃を、日本国内で改造したホ103機関銃を導入した。

 また、下手に12、7ミリで炸裂弾を実用化できたのも、後知恵だが悪かったともいえる。

 それにより、12,7ミリでも充分なのではないか、という発想になったのである。

(厳密に言えば、炸裂弾が実用化できたのは、1938年の話なので、この頃にはできるのではないか、というレベルの話をしていた。)


 そのために、第二次世界大戦初期は、日本の海軍航空隊と空軍では、軍用機の基本装備の航空機関銃の種類が違う、という事態が引き起こされるのである。

 もっとも戦争が激化するにつれ、どちらかに統一しようという話になり、更にエリコン20ミリ機関砲の改良が、順調に進み、弾道性能が向上、命中率も向上したことから、日本空軍、海軍航空隊御用達の機関銃に、エリコン20ミリ機関砲はなる。

 また、大戦末期には、日本で開発された、エリコン20ミリ機関砲の更なる改造型、30ミリ機関砲が、日本の航空機関銃の代表になるのである。


 少し話が先走り過ぎたが、日本国内の航空機関銃の改良に合わせるように、日本の軍用機も防弾等への配慮が払われるようになった。

 これも、第一次世界大戦の膨大な航空戦における消耗が影響していた。


 いざ、戦争となると、航空隊を動員、整備するために、速やかに航空隊の人員を確保、拡充すると共に、機材も整備する必要がある。

 そのために教育制度を整備し、大量生産の下地を整えていってはいたが、消耗を減らすのも重要だった。

 軍用機が、木製布張りが基本だった頃は、防弾することは、まず無理と言っても過言では無かったが、全金属製の軍用機が主流となった頃から、防弾により、搭乗員を保護しようという発想が生まれたのである。

 もっとも、そんな防弾を軍用機に施すには、まだまだ時代が完全に追いついているとは言えなかった。


「何とか搭乗員を防弾板、防弾ガラスで守れるようにしたいが、現状では、それさえも難しいか」

 山本五十六将軍は、井上成美将軍に諮問した。

「今の日本の航空エンジン事情では何ともなりませんな」

 井上将軍は、少し渋い顔をしながら言った。


 この頃、日本の戦闘機用航空エンジンで、最良と言えたのは、鈴木重工が開発製造していた「寿」シリーズだった。

 この航空エンジンは、英国のブリストル社のジュピターエンジンや、米国のP&W社のワスプエンジンのライセンス生産権を、鈴木重工が獲得して、自社内でその技術を咀嚼した上で、開発したものだった。

 離昇馬力は、開発当初は600馬力台だったが、その後、鈴木重工が独自の改良を施したり、使用する燃料やオイルの質が向上したこと等もあり(黒龍江省油田から産出される原油が、余りにも重質であったために、その原油を活用しようとすると、日本は石油化学工業の発展を図らざるを得なかった。)、最終的には800馬力近い出力が発揮できるまでに改良された、(当時としては)傑作エンジンである。

 だが、このエンジンでは、7.7ミリ級の機関銃に対して、充分な防弾を図ろうとすると非力なエンジンであることが明らかであり、日本の96式戦闘機等は、量産当初は、防弾無しで戦うことになった。 

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