表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/120

第1章ー1 海兵隊の戦車開発

第1章の始まりです。

海兵隊は戦車を開発するために、悪戦苦闘します。

 1936年早々、海兵本部の軍備課長を務める土方歳一中佐は、頭を抱え込む羽目になったいた。

 海兵隊で戦車を開発する、その事実上の責任者を、周囲から(職務上、仕方ないとはいえ)、押しつけられる羽目に、土方中佐はなっていたからである。

「陸上兵器の花形ともいえる戦車を、海兵隊で開発するだと、冗談にも程がある」

 それが、土方中佐の偽らざる内面の言葉だった。


「それにしても、どの程度の戦車を我が国は保有できるのだろうか?」

 土方中佐は、自分なりに考えをまとめていくことにした。

 

 第一次世界大戦後、日本は、国防上の観点から、国鉄の標準軌化という改軌を行っており、ほぼ日本全土の国鉄の改軌を、1936年の現在までに完了していた。

(なお、それに合わせて、日本の主な私鉄も軒並み、標準軌の採用なり、改軌なりを1936年までに行っている。)

 これは、地方の鉄道整備を遅らせるという副作用、犠牲があったが、(第一次)世界大戦で戦車の威力を知った陸軍や海兵隊としては、狭軌のままでは、戦車の輸送に支障が生じ、諸外国より劣った戦車を日本は整備せざるを得ないという事態を回避するためには、止むを得ない犠牲であった。


 その代償として、日本政府は道路整備、バスやトラックといった自動車の普及を進めた。

「地方では、鉄道を作らない代わりに、道路を整備して、バスやトラックを走らせます」

 というのが、日本政府の方針となった。

 特に、世界大恐慌から脱却する手段として、地方での道路整備が進められたことは、この流れを推し進めることになった。


 こういった流れから、30トンまでなら戦車を国内で運用することに、1936年現在の日本では、余り問題は無いのでは、という状況が生まれていた。

(何しろ、第一次世界大戦で運用された戦車は30トンクラスも普通にあったのである。その程度の戦車が運用できる交通網整備は、必須だと陸軍等は考えて動かざるを得なかったのである。)

 また、大陸に戦車部隊を輸送する際には、基本は関釜連絡船等で運び込もうという発想である。


 とはいえ、海兵隊で戦車を開発することを考えると、無い無い尽くしというのが、偽らざる現状だった。

「戦車の主砲も無い。装甲板も無い。エンジンも無い。懸架装置も無い」

 土方中佐は、半ば自嘲せざるを得なかった。


 まず、問題として考えられたのが、この新戦車に乗せる主砲である。

 海兵隊の戦車関係の面々からは、対戦車用にも使える主砲が求められた。

 そして、歩兵支援用の火力を落とさない事も求められた。

「ぜい沢を言うな」

 それが、土方中佐の偽らざる考えだった。


 これらの要求を全て満たすとなると、主砲としては、57ミリ長砲身の戦車砲を、海兵隊の新戦車は搭載する必要があった。

 57ミリ未満の口径では、歩兵支援用の火力が落ちてしまうからである。

 だが、具体的なそれに適合する砲を、海兵隊は、保有していなかった。

 ちなみに89式中戦車が搭載している主砲は、57ミリ短砲身で、対戦車用には全く向かない砲だった。


 勿論、日本陸軍も手をこまねいているわけではない。

 対戦車用にも使える戦車用の主砲として、47ミリ長砲身の砲を開発、製造しようとしていた。

 ちなみに、この砲は、新型対戦車砲として開発、製造しようとしていた砲を転用した砲でもあった。

(相前後して、97式対戦車砲として、制式採用され、陸軍の戦車砲としては、通称、99式中戦車(正式名称は、97式中戦車改)から、搭載されるようになる砲である。)


 だが、この程度では、どうにも海兵隊の戦車関係者からすれば、満足のいく戦車砲からは、程遠い戦車砲と言わざるを得なかった。

 そのために、土方中佐の下に圧力が掛かった。 

ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ