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あんこ丸と食べること

作者:

あんこ丸は真っ白な秋田犬。

みんなからあーちゃんってよばれている。

でもおとうさんとわたしだけ、

いつもあんこ丸ってよんでいる。


あんこ丸は食いしん坊だ。


だいたいいち日のほとんどを、

居眠りしたりごろごろしたりして、

のんびり気ままにすごしているのに、

あんこ丸はとにかくよく食べる。


だれかがなにか食べているのを見つけると、

お腹を出して寝ているのかと思っていても、

いきおいよくばっと起きあがり、

わたしにもひと口味見させてくださいって、

あまえ顔でよってくる。


朝と晩のご飯どきになると、

わたしのご飯はまだですかって、

台所にいるおかあさんのまわりを、

そわそわと待ちきれないように、

うろうろ行ったり来たりする。


「もうすぐできるからね

あっちでまっててね」


とおかあさんが言っても、

あんこ丸はおかあさんから離れない。


そこらじゅうをよだれだらけにして、

やっとじぶんのご飯がやってくると、

あんこ丸はまるで飲み込むように、

あっという間に食べおわり、

なごりおしそうにお皿をなめている。


そんなわけであんこ丸のお皿は、

洗いたてのようにきれいだ。


じぶんのご飯を食べおわって、

満足そうに大きなため息をついて、

大きな舌ではふはふお水を飲んでいても、

まだだれかがご飯を食べていたら、

あんこ丸は気になってしかたがない。


おばあちゃんは食べるのが遅いから

あんこ丸はおばあちゃんのよこで、

わたしが手伝ってあげますよって、

ピンクのしめったごむ鼻で、

お椀の中をのぞきこむ。


「あーちゃんざんねんだねぇ

もうなくなっちゃったねぇ

ざんねんだねぇ」


と言いながら、

おばあちゃんはゆっくりだけど、

いそいでご飯を食べる。


朝ご飯のあとは、

おとうさんもおかあさんも、

おねえちゃんもわたしも、

みんな出かけてしまう。


そんなときあんこ丸はとても、

つまらなさそうにベランダから外を見ながら、

たまにわぅって吠えたりする。


いい子でおるすばんをしていると、

おばあちゃんはどこからか、

おやつをがさごそ持ってくる。


「あーちゃんおやつだよ」


あんパン、

メロンパン、

クリームパンにジャムパン。


あんこ丸はあまいパンが大好きだ。


まえにだいふくを食べたときは、

もちが歯にくっついて、

あんこ丸はこまったように、

鼻をぺろぺろなめていた。


だからだいふくや団子は食べない。

でも夏のアイスやみかんも大好きだ。


晩ご飯のあとおとうさんはビールを飲む。


「あんこ丸こっちへおいで」


おとうさんはあんこ丸に、

今日あったことの報告をする。

だいたい仕事のはなしばかり。

あんこ丸は大きなあくびをして、

たいくつそうに聞いている。


おねえちゃんはソファに座って、

テレビを見ながらお菓子を食べる。

お菓子のふくろを開けるおとがすると、

おとうさんをそっちのけにして、

あんこ丸はだいこうふん。


なにを持っているのですか?

おやつですか?

わたしも食べたいです、

わたしにもひと口くださいって

おねえちゃんの前で飛びあがる。


「あーちゃん

テレビが見えない」


おねえちゃんがおこると、

あんこ丸は少ししゅんとする。

でもすぐまた飛びあがってさわぎだす。


「お菓子はもう明日にしなさい」

とはおかあさん。


けっきょくおねえちゃんは、

あんこ丸にお菓子をひと口あげて、

残りをしまって明日にとっておく。


わたしは宿題をしたり、

お風呂に入ったり歯みがきをする。

それからあんこ丸を枕にして、

いっしょにごろごろしてすごす。


あんこ丸はことしで10才になる。

若いときと比べると、

散歩の時間もみじかくなった。

それでもあいかわらず食いしん坊で、

毎日ほんとによく食べる。


むかしよりもたぷたぷになった、

あたたかいお腹にあたまをのせて、

わたしの家のにぎやかないち日が、

あんこ丸の大きな寝息とともに、

いつものように過ぎていく。

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