プロローグ
よろしくお願いします。
『輪廻転生』などというモノを知っているだろうか。
天寿を終えてあの世に還った魂が再びこの世に生まれ変わってくるという仏教やヒンドゥー教の思想である。別に僕が信仰の厚い教徒だったとかオカルトが大好きだったとかそんなことが言いたいのでは無い。
ただ1つ、あなた達に問いたいのだ。
”この概念は実在すると思うか?”と。
重い瞼を開くとゴツゴツとした岩肌が目に映る。顔を横に向けるとこの岩に囲まれた世界からの出口が見える。耳を澄ますと濁ったイビキに混じって聞こえてくる水の流れる音。近くで水が湧き出しているのだから当然か。いつもと変わらぬ周りの様子に短く溜息を吐きゆっくりと立ち上がる。…寝違えでもしたのだろうか。やたらと首が痛い。と思いきや先ほど横になっていた場所に同胞の腕があった。…どうやら寝ている間に殴られたらしい。軽く首を回して水音へ歩みを進める。それは風呂桶程度の小さな水溜りであった。ゆっくりと水を覗き込む。写るのは醜悪な顔をした怪物だ。目は黄色く淀み、鼻と呼べるか怪しい顔の中央に空いた1つの穴。その下に見えるのは唇が無く、歯茎までむき出しになった赤い裂け目。いつもと変わらぬ僕の顔だ。
水を片手に三本しかない指を使い痛む場所へ水をかけ冷やす。…多少は楽になった・・ような気がしないでもない。恨みを込めて僕を殴ったであろう同胞を睨みつけるがそんなものに意味もなく同胞はイビキをかき続けるだけだ。僕の緑色の血潮が熱くなるが、すぐに萎えていく。今度は水源の近くに腰を下ろしゆっくりと瞼を閉じた。
今、ここに僕は自信を持って述べよう。
【転生は実在するのだ】と。
誤字脱字等あれば連絡お願いします。