No.01
本日二話目です!
もうすぐでお正月です!
よいお年を!
……いや、逃げ出す。
なんとしてでも、あの子だけは。
僕たちの”希望”なのだから。
暗闇の中で白銀色に輝くあの子の目はなぜか故郷を思い出させる。
父や母、兄弟……家族を思い出す。
純粋な目が少しずつ輝きを失っていくのがとても悲しかった。
皆でいろんなことを考えて出した結論は……
”普通”を知らなければ、必要以上苦しまない。
だから、外の世界や故郷のことは口にせずただ傍で最後まで見守ろうと。
感情の名前を知らなければ……涙がなぜ流れるのか……自分が何故ここにいるのか……家族がなぜいないのか……全部全部何も知らなければ、苦しまない。
自分が何者なのか知らなければ苦しまない。
僕たちでエルの目をふさぎ耳をふさいだ。
でも、目と耳をふさぐ代わりにエルを外に逃がせるように……そしていつか幸せに……僕たちの変わりに人生を謳歌してもらえるように退路を一生懸命造った。
エルが笑って過ごす未来を想像すれば何もかもが報われるような気がした。
だからエルは僕たちの”エルディナ”なのだ。
そんなことをつらつらと頭の中で考えていると男がついに動き出した。
「さっき言ったこと頭の中に入ってるな?一瞬で終らせはしない。ゆっくりと刺してやろう。」
ナイフが男の言うとおりゆっくりと体を切り裂いてきた。
たまらず声が口から漏れる。
「……っ……ぐっ、ぐあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっああああ゛あ゛!!!!!」
想像を絶するような痛みが頭を揺さぶる。
だが元々死にかけの体だったため暴れる体力など無かった。
「くはっ!どうだ?苦しいか?痛みが脳ミソの中にまで浸み込んでくるようだろう?」
「相棒!もういいだろ?早く行くぞ!」
「……仕方ない。わかった」
今まで高揚感に支配されていた男は、もう一人の男にせかされいやそうな顔をしながらもまたゆっくりとナイフを僕に体から引き抜く。
ドバッと血が傷口から溢れかえる。
喉から何かせりあがってきた。
ガハッ!グフッ!ゲホッ……ゲホゲホ!
とめどなく堰と共に血の塊が吐き出される。
そんな僕の様子を、目と口を三日月のように歪めて男は見つめた後そのまま背を向けもう一人の男と去っていった。
その背中が廊下の角へと消えた瞬間、僕は壁につかまりながら立ち上がり今まで引きずられた道のりを気力を振り絞ってたどり始めた。
あの子……エルの元へ。
もう少しだけ真面目な話が続きます!
どうかご勘弁!