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No.07

遅くなりました!

∞∞∞


俯きながらすぐ横にいるジェイドの服を握る。

ジェイドも何も言わずに握らせたままだ。

周りでは何かを喋っているようだがなんのことを話しているかさっぱり分からない。

そんな事をしていると、食事が運ばれてきた。

普通なら私の身長ではテーブルに頭を出すのがやっとの高さの椅子には、木の箱のようなものを乗せて高さを調節している。

その目の前にほんのりと温かみがある食事が置かれた。

私のところには昨日と同じ“おかゆ”が置かれた。

昨日のように白い煙はほとんど立っていないが、いい匂いが鼻腔をくすぐった。

置かれたスプーンを手に取ろうとしてジェイドに止められる。


「待て、まだ食べるな。」


「?」


「王が神に祈りを捧げてから食べられる。」


そう言ったジェイドは服を握っていた私の左手を握ってテーブルの上に出す。

ジェイドはもう片方の手を藍色に伸ばし持ち上げるように繋いだ。

チラリと他の座っている人を見ると同じように繋いだ手をテーブルに乗せるように置いている。

各々の前には食べ物の乗ったお皿が置いてある。

そして王はぐるりと周りを確認して目を閉じた。


「では祈ろう。自然の神ノノルイ神よ。貴方が守り育てた者たちをいただけることに感謝し祈りを捧げます。これからも我らと貴方の民でもある農民を見守りください。」


そう言って王は閉じていた目を開け「では食べよう」とみんなを促した。

それを聞いてジェイドも目を開ける。そして私の手を離す。

私は離した手でまたジェイドの服を掴む。それを見たジェイドは微かに眉を寄せながらも視線を皿の方に向けた。

私もお皿に目向け、スプーンを手に取った。昨日のようにこぼさないように慎重にスプーンに“おかゆ”を乗せ息をゆっくりと吹きかける。十分に息を吹きかけた後零れないように引き寄せパクリと食べる。

口に入れた瞬間広がるのは昨日とは違う味。

しかしこれもまた胃を刺激するような後味を引き、十分に美味しい。


食べられた!と、ジェイドの方を見ると、ジェイドも手を止め私の方を見ていた。

ニッコリと顔を弛ますとジェイドも僅かに眉間の皺を弛ませた。

ジェイドはそのまま視線を戻して自分の分を食べ進める。

私も自分の“おかゆ”をゆっくりと食べ進めていった。

しばらく食べて食事がひと段落した。少し膨らんだお腹をさする。

満足し力を抜いて椅子にもたれかかっていると視線を感じた。キョロリと見渡すと王と言われていた人がこちらをニコニコと見つめていた。

ビクリと体を震わせ慌てて目をそらし俯く。


「ははは!本当に人見知りだな!しかし、チラリと見えたが本当に美しい瞳だな!」


王はそう言って豪快に笑った。

体がブルリと震える。ジェイドの服を握る力がどうしても強くなる。

ジェイドは返事ができない私の代わりに王の言葉に答えていた。


「この子供は言葉を発することが出来ませんので私からお礼申し上げます。」


「あ……喋ることが出来ないのか?」


「はい」


「そう……か。」


バツが悪そうに答える王。

なんとも言えない空気を払拭しようとしたのか、反対側の煌びやかな衣装を着た女性が明るい声を出す。


「そ、そうだわ!今日は貴方方との交流会があるのだけど貴方も参加するのかしら?」


その質問に答えかねてジェイドを見上げる。


「この子供は参加しない予定ですが。」


代わりに答えたジェイドに女性はパアッと顔を輝かせて手を合わせる。


「参加なさいな!そこまで堅苦しい会ではないでしょうから!」


「……この子供の体調が良いのであれば参加させましょう。」


渋々といった様にジェイドが承諾するとそうだわ!と女性が声を上げる。


「参加が出来る様でしたらドレスは私が用意しますわ!」


「それは名案だ!」


その意見に王も賛成という様に頷く。

ジェイドもそれを聞いて少し考える様に俯く。


「……わかりました。ではその様になりましたら、宜しくお願い致します。」


「ええ!分かったわ!」


承諾したジェイドに女性は嬉々として目を輝かせた。

その話を向かいの端の席の方で聞いていた、端正な顔立ちをしている男が口を開く。


「今夜の交流回は其方のシェフも料理をされるという事で、どんな料理が出てくるのかすごく楽しみですね。」


それに答えるのはジェイドの左横にいる藍色。


「こちらの料理人は少なからず緊張はしていますが、こちらで自分たちの料理の腕を振るう事ができると聞いて喜び勇んでおりましたのでご期待に応える事はできると保証しましょう。」


にこやかにそう言い切ると運ばれてきた紅茶を口に含んだ。

私の前にも“おかゆ”はいつの間にか下げられており、小さなティーカップと何か丸い茶色いものが乗せられている皿が置かれていた。

ジェイドの方を見るとジェイドの前にも同じ様なものが置かれていた。

とりあえずジェイドと同じ様に紅茶を口に含む。少し熱いが我慢できないほどでは無い。コクリと飲み込むと苦い様な後味が残った。

苦味に顔を顰めるとジェイドがトントンと茶色の丸いものが乗っている皿の近くを叩いた。


「?」


何かと首をかしげるとジェイドは眉間の皺を深くさせる。


「食べろ。それはクッキーだ。甘い。」


甘いと聞いて少し考える。甘いと言えば暗い部屋の中にいた時に、一度誰かが白い粉を握り締めて持ってきてくれた事があった。それを舐めるとほんわりと舌を包み込む様な味がしたのをエディーがそれが甘みだよと教えてくれた。

その時のエディーと他のみんなはいつもより暖かい、何かを思い出す様な、ほんわかとした少し苦しげな表情をしていた。

いつもはしない様な顔に私もおどろきつつ、甘みと皆につられて顔が緩んだのを覚えている。

色と形は違うがあれと同じ様な味がするのかな、と思い一つ塊を右手で掴んで口に運ぶ。

端の方を齧る。噛み砕くとクッキーは口の中でホロリと形を崩して舌の上で味が広がった。


「!」


何も、思う事ができなかった。

未知の味に体は一度停止した。“おかゆ”の時とは全く違う衝撃が体を駆け抜ける。こんな、こんな、味は、今まで一度も食べた事が、無い。

顔を上げるとジェイドがこちらを見つめていた。

ジェイドはどうやら手をつけていない様だった。他の人の方を見るとクッキーを食べてそれぞれが感想を言っていた。


「うーん……もう少し甘くてもいいかな?」


「そうですね。私ももう少し甘い方が好みです。」


「私はこれが丁度いいですかね。」


なぜかはらわたが煮え繰り返る様な衝動に駆られた。

自分の手に視線を戻すと、一口、齧られた跡のあるクッキー。その光景と他の人たちがクッキーを食べている光景に目に力が入る。

なぜかなみだが滲んでくる。

俯いて手の中にある残りのクッキーを口の中に入れる。

噛むとさっきと同じ様な甘みが口の中を溶かした。


無性にエディー達の顔が浮かんでくる。


訳のわからない思いに支配されながらも、お皿にあった残りのクッキーも口の中に次々入れて咀嚼していく。

クッキーを噛み締めると口の隙間から頬を流れたなみだが入り込んでくる。

クッキーが少ししょっぱくなった。


俯いたままクッキーを噛み締めていると不意に頭をポンポンと軽く叩かれた。

顔を動かして見上げると眉間に皺を寄せたジェイドの顔が映る。

私が俯いていたからか、他の人は私がないている事に気が付いていな様だった。

楽しそうに談笑している。

ジェイドはそれを横目に椅子から立ち上がり、自分の胸に私の顔が向く様に私を抱き上げた。

私は全身でジェイドに抱きついている様な状態だ。

いきなり立ち上がったジェイドに他の人はビクリとしてジェイドを見る。

ジェイドは私を抱いたまま王に向かって頭を下げた。


「王よ、いきなりで申し訳ありませんが、どうやらこの子供が少し体調を崩した様なので退席しても宜しいでしょうか。」


そう言ったジェイドに王は目を丸くして言う。


「そうなのか?侍医を呼んだ方がいいだろうか?」


「いいえ。その必要はなさそうです。」


「そうか。もし容体が悪くなったらすぐに侍医呼ぶんだ。無理をするんじゃ無いぞ。」


「はい。お心遣い、誠にありがとうございます。」


では、失礼します。と言ってジェイドは礼をするとスタスタとこの大きな広間から出た。


今回もお読みいただき誠にありがとうございます!


今回中々大変でした……

さて今回エルが初めてクッキーを食べました!!

流した涙は感動の涙なのかそれとも……ここは皆様に少し頭を悩ませてもらおうと企んでしまったわけですが……どうでしょうかこのエルの気持ちつかめている方もいるかと思います。

ここが何気に難関でしたね笑

そして王様……かなり久しぶり?に出てきましたね!よかった出せて!

しかも王妃様もセット!出そうか迷ったんですが結局出しました!


そしてもうお気づきだと思いますが、今回から書き方が変わりました!

前までは横書きで読みやすい様にしようと思ってああなっていましたが、やっぱり段落付けてあんまり間空けない方がやっぱり良いのかなって思ってやってみました!

今まで段落てけてなかった!と気が付いて前の文もちょこちょこ直してはいるんですが……大変です!


ではでは、また次回でお会いしましょう!

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