No.07
遅くなりました!
体を丸めて、“なみだ”を流したまま暫く待つ。
どうしても顔が歪む。
口から入る空気が一々喉で引っかかる。
「……っ。……っ。…………っ。」
エディー……エディー……苦しいよぉ。
なんで?なんで行っちゃったの?
私……もう……一人ぼっち……?
“こわい”……こわいよぉ……。
何故か、体が震える。
その時足音が扉の外から響いてきた。
コンコンと扉が叩かれる。
ガチャリと扉が開いた。
入ってくる足音は一つだけ。
コツコツと近づいてくる。
「どうした。」
一言。
その声を聞いて体が反応した。
ガバリと起き上がりベッドを降り、少しの距離をその人の脚に向かって走り寄ってしがみつく。
「……どうして震えている。」
ジェイドはそう問うが、何もしないまま益々力を込めて抱きついた。
「……」
はぁ……と上からため息が降ってきた。
唐突に腕を差し込まれ抱き上げられる。
そして、そのまま左腕に座らせる様に移動させられる。
私は反射的にジェイドの白いシャツを強く握る。
動かされている間私はずっと俯いたままだった。
ジェイドは何も言わないまま移動する。
そして、扉のまで行くと外に控えていた先程の侍女に声をかけた。
「このまま朝食にする。この子供もまだ食べていないだろう?」
「はい。」
「では、この子供の分の朝食も運ばせろ。場所は分かるな?」
「いつもの場所で宜しいでしょうか?」
「そうだ。」
そう言ったジェイドはそのまま長い脚を動かしその場を離れていった。
何も言わずにスタスタと歩く。
私は未だ止まらない“なみだ”をジェイドの服を掴んでいない方の手で何度も何度も拭った。
その手をジェイドがいつの間にか伸ばしていた手に捕まれ止められた。
「擦るな。腫れる。」
それに素直に頷く。しかし視界が悪い。
ボンヤリと床が滑る様に移動しているのを見ていると、ジェイドが自分のポケットから綺麗に折りたたまれたハンカチを取り出した。
しかし俯いた私では目の場所が上手くつかめないらしく、暫く動きが止まった。
脚の動きも止まる。
「おい、こっちを見ろ。」
声に反応して顔を上げる。
ジェイドはそのまま無言で目の辺りを擦らないようにポンポンと優しく叩きながらなみだを拭ってくれた。
明瞭になった視界に目を瞬かせる。
そしてなみだの無くなった私の顔に満足したのか、ジェイドは少し湿った自分のハンカチを元のポケットに入れるとまた動き出した。
∞∞∞
ジェイドは暫く歩くとある大きな扉の前で脚を止めた。
扉の両脇には全身を鎧と剣で固めた兵士が二人いる。
すっかり元に戻った視界で辺りを見渡す。
自分の部屋とずいぶん離れたみたいだ。
ジェイドが兵士に声をかけた。
「ジルオス国宰相のジェイド・グエン・アルフェイトだ。」
「は!ご苦労様です!……して、その子供は?」
「この子供はあの保護された子供だ。王には連れて来ても良いとの許可が出ている。」
「は!失礼致しました!どうぞお通り下さい!」
二人はジェイドに頭をさげると扉を開いた。
扉を開けると大きな広間に出た。
中央には縦長の机が置かれており、部屋の両側には大きな窓が朝の光を差し込ませていた。
窓際には五人ずつ騎士が控えている。
そして、中央の机には数人の人が腰かけていた。
中央の一人席には大柄な男が座っている。
そして机の右側面の男に近い所にいるのは、煌びやかな格好をした女性が上品に座っている。
その横に座っているのは、金髪の男。
その隣には見覚えのない端正な顔立ちをしている男がいる。
左の側面にいるのは藍色の髪をした若い男。
二人には見覚えがある。昨日部屋に来た藍色と金色だ。
ヒクリと喉が引きつった。
ジェイドにしがみつくように抱きつく。
それに気付きながらもジェイドは席の中央にある椅子に座る人物に向かって頭を下げた。
「遅くなりまして申し訳ありません。ただいま戻りました。」
その人物は少し老いた顔を破顔させながらもジェイドに答える。
「よいよい、気にするな。して、その子供が噂の子かな?」
「そうでございます。」
「そうかそうか。……どれ」
そう言った男は立ち上がりこちらに向かって歩を進めてきた。
じっくりとその男を“見て”みると、魔族ではなかった。
体に震えが走る。
益々力を込めてジェイドにしがみつく。
その男はジェイドの目の前までくると脚を止めた。
「ユーリから聞いたが、この子供の瞳は大層美しい色だと聞く。少し見せてもらってもいいかな?」
どうやら私に聞いているらしい。
しかし私は頷くことも首を振ることも出来ずにただジェイドにしがみつく。
「……申し訳ありません。この子供はどうやら人見知りするようでして……。」
「そうか?ジェイド殿にはずいぶん懐いているようだが?」
「……私にも原因は分かりませんが……」
「いや、気にしないでくれ。では食事にしよう。」
「はい。では失礼致します。」
そう言った男はまた自分の席へと戻って行った。
ジェイドも藍色の隣の席に向かう。
その席に向かう前にその隣の席で脚を止める。椅子を引くと私を自分から剥がそうとする。
しかし、私は離れるのが嫌で服を握った手離すことができなかった。
近くに何人かいるニンゲンの気配が肌に突き刺さるようで、どうしてもジェイドから離れたくなかった。
ジェイドはとりあえず私の体を椅子に下ろす。
手と顔はジェイドの服にくっついたままだ。
ジェイドはなんとか手で私の手を剥がそうとするが上手くいかない。
「おい、離せ。」
「……」
嫌だと首を振る。
「……私の席は、お前の隣だ。別に遠くに行くわけじゃない。」
だから離せとジェイドは続ける。
でも、と顔を上げるとジェイドは眉間に皺を寄せたまま私を見返す。
その向こうにはあの藍色のが心配そうにこちらを見ている。
「……分かった。お前の所に少し寄せられるか聞いてみよう。」
そう言ったジェイドは、幾分か自由の利く頭を先ほどの男に向ける。
私からはあの男の顔は見えない。
「国王よ、この子供に椅子を寄せてもよろしいだろうか。」
「もちろんだ。ほら、お前たち動かしてあげなさい。」
誰かに向けて国王と呼ばれた男は指示を出す。
そうすると何者かが数人の近付く気配がした。
それにビクリと体を震わせジェイドにもっと体を寄せようとする。ジェイドは私に引っ張られ少しだけ動くが、それ以上は動かない。
そしてジェイドの後ろで何かがゴトゴトと動く音がした。カチャカチャと机に乗っていた皿も動かされているようだ。
その音が止むとジェイドは再度私に手を離すように促す。
まだ離れないと分かると今度は自分の後ろを指差す。
「見ろ。」
そう言って指されたのは随分と近くにある椅子と皿たちだった。
ジェイドが座れば私の手が届くだろう距離だ。
それを確認し手の力を緩める。
ジェイドはそれを感じて少しずつ慎重に、確認するように服から私の手を外し隣の椅子に座った。
今回もお読みいただき有難うございます!
そして遅くなりましてすみませんでした!!
最近運動してないせいか、体が弱ってるんですかね……少し体調崩してしまいまして……
ということで!
今回やっとエルたちが朝食にありつけることができました!
よかった!
王様たちが悩みに悩んでいた食事の事などはこの半年でなんとかなったみたいです。
聞いてくれたのはユーリ!
随分と胃を痛めたみたいで……笑
この半年のことはいつが何かの時に書きたいと思っているのでお楽しみに!
それともう気づいている人もいるかと思いますがやっと章をつけることができました!
最初はちょっと大変だったんですよ……序章の所にフェノーラ国編とか書いちゃって……なんとかなってよかった!
今週はもう一話出そうと思って思っていますが、ほんのりと期待をしておいてください……
そして何か読みにくいところがあれば是非ともお教えください!
感想もお待ちしております!
ではでは、また次回お会いしましょう!




