No.00
本日三話目です。
コツンコツン……コツンと足音が扉の前で止まった。
エディーはこちらを見て人差し指を口元に持ってきてシィーと音を出した。
そして私が理解してないのがわかったのか、慌てて両手を口元に持ってきて口を塞いだ。
それを真似すると、そうそう!頷いて目じりを下げて口元を緩ませた。
ガチッと扉の鍵が外れる音がすると同時にエディーから今まで感じていた柔らかさが消えた。
なんだろう?あの顔は?
今まで私に見せたことのない顔をしているエディーがそこに居た。
なぜか背筋が冷えてぞわっとなって……また喉の奥がキュウッとなって、目から水が溢れてくる。
口を押さえてるせいで音は漏れない。
だが今度は鼻から水が……ずびっ
開いた扉の外には二人の男が待ち構えていた。
「おい、そこのお前。来い。」
淡々と言葉をつむぐ声のなかに感情が入っていないかのようだった。
するともう一人の男が何かに気づいたかのように「あっ」と声を漏らす。
「もう一人ガキンチョって居なかったっけ?」
「あー……どうせ、そこらへんにいるだろう。隠れる場所なんてほとんど無いに等しいからな。」
「ああー……そうだな!気にすることもねぇか!」
「おい、そこの異形・人外・この世のゴミカス。」
「うん、長いかな……相棒。」
「いや、ついついどう言えば迷ってな。……ふむ……では、魔族。お前の”処分”の時間だ」
言った後、この男は口の両端をにんまりと上げた。
エディーとは違う。温かみのあるものではなかった。
曲線を描く目には、うれしさが溢れていた。
「相棒、まぁた”処分”となるとホントに嬉しそうだねぇ?」
「あぁ、当たり前だろう?今までお館様が触らしてもくれなかった魔族をやっとなぶり殺しにできるんだ。嬉しくて当たり前だ。」
「そうかい?俺はなんとも思わないけどな?」
「そうか」
そう言って彼らは会話を一旦終了させエディーに歩み寄った。
扉の外は光にあふれていた。
エディーは光にさらされた。
すると暗闇にいたときは金色に光り輝いていた瞳が薄い茶色と瞳になった。
「相変わらず、すげえ目だよな。お館様が宝石みたいに大事にするのもわかるぜ」
「しかも、目をくりぬくとその機能が無くなってしまうからな。生け捕りが難しい上に魔族のいる土地は人間の住めないところにあるからな。それに、魔術も使う。」
「あぁそうだな。しかも大体のやつが美形だからな……。お館様の幼児趣味なんてちっとも理解できないぜ。俺だったたら大人の魔族を買い占めるのになぁ。
ああ、もったいねぇよ!あんなに上玉がそろってたのによ!」
「お前とお館様の趣味なんて知るか。とにかく運ぶぞ。」
男たちがエディーの両脇につき物のように引きずっていく。
エディーは抵抗もせずされるがまま床を引きずられていく。
エディーは扉の向こうへ消える前にこちらを目だけでチラリとこちらを見て頬を緩めた。
まるで僕たちのことを忘れないでと、君の名前を忘れないでと
言っているかのようだった。
その目に水はたまったが流れることはなかった。
その時屋敷に爆発音が響いた。