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No.06

光魔法の効果によって作られる四角い画面に、子供の視点になった映像がボンヤリと映し出される。


少し見えづらい。

テル隊長に明かりを消す様に促す。

テル隊長もそれに頷き短く唱える。


「風よ。」


すると微かな風が吹きロウソクの光を消す。

暗闇に相反する様に光り輝く子供の記憶がよく見えた。


記憶と言っても子供が目に写したものを映し出すのだ。

本人があまりよく覚えていなくとも頭で一度認識したものは体内の魔素が覚えている。

それをそのまま映し出す。


どうやら暗い部屋の中にいる様だ。

暗くてよく見えないが、髪の長い女性に顔を覗き込まれている様だ。


「やっと……やっと生まれた私とあの人の赤ちゃん……」


途切れ途切れに音が聞こえる。


「よかった……」


その時、視点がガタリとぶれる。

どうやら誰か違う人に抱き上げられた様だ。


「やめて!その子を取り上げないで!返して!返して……っ!」


先程の女性の声が遠ざかっていく。

その代わりに抱き上げていた人の声が降ってきた。


「ごめん、ごめんね。貴女がそれなりに大きくなるまで私が育てるから。」


その人もどうやら女性の様だった。

映像を黙ってそのまま見る。

そこはどうやら闇市の一つの様だった。

そして育てると言った女性は魔封じという魔石を使った呪具を嵌められており、魔素を収集するのを防がれていた。

普通の魔族より魔素の保有量が多かったのだろう。

魔素を収集されて抵抗されると困るため呪具をはめたのだろう。


そしてその女性どうやらその闇市のオーナーの奴隷になっていた様だ。

自分の子供を丁度出産して母乳が出ていた様だ。

女性に自身の子供と共に育てられ約一年後、女性の子供と共に十代前後の子供たちが収容されている檻に移動させられる。


そしてすぐに四十人強の子供たちと共にあの貴族の元へ買われていった。


あの屋敷の暗い部屋の中に閉じ込めらる。

しかし、子供たちはなぜか自分より年下のこの子供を守る様に動いていた。

……いや、きっともう分かっていたのだろう。

自分たちが助かる事はほとんどないだろうと。


そして、何度もあの貴族が子供にした暴行が映し出せされる。


あの太った豚面に気味の悪い歪んだ笑みを浮かべ、様々な暴行を子供に施した。


そして一月に一人から二人あたりが姿を消し始める。

一人、一人と姿を消す。

それを繰り返すこと約三年。

それまでに子供は何度か死にかけた。

数回は病気、数回は傷からの感染。

しかし子供たちが何度もその危機を乗り越えさせていた。


そして、最後の一人が行くことになってしまった。

その少年は報告に上がっていたあの少年に間違いないだろう。


少年がいくらか話していると、子供が初めて声をあげて泣き出した。


「っ!」


初めて聞いた子供の声に息を飲む。


映像はそのまま進む。


「君の名前はエルディナだ。」


少年……エディーはそう、子供に名付けた。

その後は殆ど報告書に書いてある通りだった。


「保存、術式解除。」


静かに唱えると術式の光がゆっくりと静まっていく。

あまり重要じゃないところは飛ばしたとはいえ、三時間ぐらいは立っていた様だ。


「ハァ……。」


後ろからテル隊長のため息が聞こえる。

それは、呆れているからというよりも怒りを鎮めるためのため息の様だった。

現に映像を見ている途中から背後にいたテル隊長からは怒気が立ち上っていた。


「ジェイド……。今から付き合ってくれんか?」


「……いいですよ。少し待ってください。この子供の記録を保管してきます。」


「ああ……場所は騎士たちの訓練所か?」


「そこでいいです。王からそこの出入りはご自由にとの許可はもらってます。」


「わかった。そこで待っておるぞ。」


「わかりました。」


テル隊長は、扉を開けそのまま静かな足取りで訓練所へと向かっていった。

私も自分の客室に一度戻るために扉の外へと足を向ける。

チラリと後ろを振り向く。

子供はグッスリと眠っていた。

それを見てゆっくりと扉を閉めた。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


自分の客室出る。

左手には自分の愛用している長い細身の剣が握られている。

フェンシング様に間違われるが、一応細身の両刃剣だ。

片手で使うことも多いが両手で使うこともある。

片手で使う時はもう片方の手で魔法を使ったりする。


昔はよくテル隊長が剣の手ほどきをしてくれたが、宰相職と侯爵家を二十歳で父から引き継いでからテル隊長とも会うことは少なくなった。


しかしそれまではよくテル隊長に転がされていたな……。


懐かしく思う。

そんなことを考えていると目の前に訓練所があった。


どこか凹んだ後のある扉を開けると人気の殆ど無い地面がむき出しの訓練所の中が丸見えになった。

その中央にテル隊長が居る。


四本の指が入る様な幅広な自前の剣を地面に軽く押し当て、石突きの部分に両手を重ねて仁王立ちしていた。

その身からは言いようの無い威圧が漂っている。


夜の自主練習をしていた人間と魔族両方の騎士達も声をかけるのを躊躇い遠巻きにテル隊長の事を見つめている。


「はぁ……。」


ため息が出る。

あんな状態のテル隊長を相手にしなくてはならないとは……。

多少手加減はしてくれるだろうが……。


いつも事務仕事が主体の仕事ではいつも体力より精神力が削られている。

剣の稽古をしても殆ど付き合ってくれる人はいない。


……しかし、偶には思いっきり体を動かすのも悪く無いだろう。


容赦なくテル隊長の威圧が叩きつけられる中私はゆっくりと歩を進めた。


テル隊長の元に着くと更に注目が集まった。


「お待たせしました。」


「付き合わせて悪いの。」


「いえ、お気になさらず。」


「では、始めるかのぉ。」


「はい。」


テル隊長と五ルート※程の距離をとる。

テル隊長が鞘を投げ捨て抜き身の剣を構える。

私も剣を鞘から抜き周りを見渡す。

知っている顔の騎士がいた。


「おい、ドイル。」


「は……はいいいぃぃぃぃぃぃ!なんでしょうか宰相閣下!」


顔がこわばるドイル。

意識的なのか無意識的なのか敬礼とセットの返事だ。


「私の鞘を預かれ。」


「い、いぃぃぃ命に代えましても!」


ドイルはなぜか慌てた様に言った。


それにしても……命に代えてもとは……些か重すぎやしないか?


内心首を傾げつつもドイルに鞘を放り投げる。

「はひいいぃぃぃぃ!」と悲鳴を上げつつもドイルがきちんと受け取ったのを見届けてテル隊長に向き直った。


テル隊長を見ると剣の平たい部分にを肩に置きながら呆れた表情で私を見つめていた。


「お前さん……相変わらずだのぉ。」


「どういう事です?」


「そのまんまの意味だの。……よく噂は聞いていたから知ってはいたが……本当にあまり変わらん。図体ばかり大きくなりおって。」


「……」


返事が出来ずに黙り込む。

一応自覚している事だ。

テル隊長に言われるまでも無い。


それを見かねてかテル隊長が仕切り直す様に言葉を重ねる。


「取り敢えずだ。ルールは簡単魔法なし、剣技のみの試合だ。いいかの?」


「はい。」


「それじゃあ、折角だ。ドイルに合図を出して貰おう。ええかな?」


テル隊長はニコリと笑ってドイルに頼む。


「はい!隊長の願いとあらば!」


一歩前に出て誇らしげに胸を張りながら答えるドイル。


…………。


「では、僭越ながらこのドイルが合図を務めさせていただきます!」


そう言ったドイルは私の鞘を慎重に片手で持ちながら自分のポケットをまさぐる。

中から出したのは一枚の硬貨だ。


「この、硬貨が地面に落ちたと同時に開始です!……いざ!」


そう言ってドイルが宙高く硬貨を放り投げた。

ピンッと硬貨が弾かれる音がする。


直ぐに、カン……と地面に落ちた音が微かにした。


※1ルート=1メートル


今回もお読みいただき有難うございます!


いやはや今回、テルとジェイドの試合となりました!

なんて事でしょう!

そして今回あまり出てこれなかったエル……グッスリ眠っております!

ふと思いましたが……これ時間が大体真夜中前……11時半ぐらいですかねー

こんな時間に激しい運動をする……すごい体力です……


さて、次回ですが初の戦闘(?)シーンにとなります!

色々拙い点はあると思いますがどうかよろしくお願いします!


ではではまた次回にお会いしましょう!

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