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No.06

腕に抱えたしろがねを見つめる。


銀もためらう事なく私を見つめ返した。

未だに潤んでいる瞳はしかし、もう涙を生む事は無かった。

その事になぜかホッとする。


見つめ合っていると子供が唐突にニコリと微笑んだ。

どうすれば良いのか分からなくて思わず固まる。


そんな正反対な反応を示している私達に近づくのはテル隊長だった。


年を取った事で灰色へと変化した髪を後ろになで付け同じく灰色の無精髭を生やせた顔に汚らしい印象はなく、これまでの人生を感じさせるようなワイルドさが醸し出されている。

今は甲冑などの武具は見えるところには殆ど付けてはいないが、隙など一切見当たらない。


静かな足取りで左腕におとなしく座る子供に向き合うように立つと手を伸ばした。

ワシワシと子供の細い髪を撫でる。

それを子供は気持ちよさそうに隊長の手を受け止めた。


「よかったなー、お嬢ちゃん。眠気を我慢してまでジェイドを待っていたからな。」


眠気……。

そういえば、子供は大人より早く寝る。

そろそろ体が眠いと感じているのだろう、子供は大きな欠伸をする。

子供が私の体に寄りかかった。


しかし、私には子供に一つ許可を取らなければならない。


「おい、眠いだろうが質問に答えてくれ。」


軽く子供の体を揺すりながら問いかける。

すると、かろうじて薄く開いた目が私を見る。

一度腕の中から降ろす。

子供は驚いたように私を見返したが改めた空気に気がつききちんと立つ。

なかなか聡い子だ。

空気が変わったのをこの歳で読み取れるのはなかなかできる事ではない。


テル隊長と目を合わせて意思を伝える。

すぐに私が意図する事をすぐに察したテル隊長は、顔を引き締め小さく頷く。


そしてまた子供に視線を合わせると、子供も顔を上に向かせて視線を返してくる。

その視線に合わせるために片膝をつく。


「私、ジルオス国宰相ジェイド・グエン・アルフェイトが代表し貴女の記憶を記録し証拠として王族、許可のある関係者が見る事を許可して貰いたい。」


其処までを言い一度止める。

この子供が私が言っていることが殆ど分からないことは分かっているが、これはテル隊長のような証人がいる時にしなければならない大事なことだ。

自分の名と家名を名乗り許可を得ることは、かなり重い事だ。

もちろん一通り言った後子供がわかるように噛み砕いて話すつもりだ。


「記録する記憶は今回に関係のある事柄だけだと私の名において誓う。そしてもしも悪事に利用されることがないよう、証拠として使い終わった後直ぐに処分する。

処分するときは貴女の目の前でする。また、貴女の記憶を見た関係者は必要な時以外は口外をしない様に誓約書を作って書かせる。誓約書に名を連ねたものは両王と神の名で拘束される。」


思っていた通り子供は私が何を言っているのか一切分かっていない様だった。

首をひねっている。

細い髪が左に寄る。


「つまり、私達はお前の記憶を見たい。だが、お前の不利益……お前が嫌がる様なことには使わない。見た者は勝手に誰かに話もしない。証拠として見た後はお前の目の前で記録したものを壊す。だから、お前の記憶を記録することを許してくれ。」


分かり易い様に言葉を選びながら話すと、子供は分かってくれた様だ。

何か思い悩む様な素振りも見せず直ぐにコクコクと頷く。

その事に少し戸惑う。


普通は自分の記憶を覗かれる事に嫌悪する人が多いだろう。

なのにこの子供は、ためらう事なく頷く。

あの様な屋敷に閉じ込められて見られたくない事も多そうだが……。


チラリとテル隊長を見ると、テル隊長は子供を何か痛々しい目で見ていた。



また子供に視線を合わせると何かキラキラした目で私を見ていた。

一瞬子供と子犬が重なった様な気がした。


とにかく、もう一度子供に確認する。


「本当にいいんだな?」


そう言うと子供は力強く一度頷いた。


「分かった。……礼を言う。」


そう言うと肩の力を抜く。

テル隊長も終わったと同時に息を吐いた。


空気が緩んだのがわかったのか子供が私に抱きついて来た。

そうやら、また抱き上げて欲しいらしい。


それを察して子供を抱き上げる。


子供はニコニコと機嫌よくそのまま私に寄りかかった。

そんな私達をテル隊長は腕を組みながらニマニマと見つめていた。

その視線になんだか少し不愉快になる。


「なんですか。」


「いや、のお?“あの”ジェイドの若造が、子供に懐かれてるなんてなぁって思ってな。」


「別に懐かれてなんぞいません。」


「じゃあ、なんでお嬢ちゃんはお前さんにそんなに甘えているのかの?」


ニマニマとしながらテル隊長がおちょくる様に聞く。


「最初に会ったのが私だったからではないですか。」


「いや、違うのぉ。私と二人きりでも此処まで甘えてくれる事は無かったぞ?きっとこの子にとってお前さんは特別な人なんだのぉ。」


ほれ、とテル隊長に指をさされて腕の中を見ると、子供はいつの間に寝息を静かに立てて眠り込んでいた。

グッタリと安心しきった様に力が抜けた体は少しだけ重く感じた。


「いやあ、すっかり眠っておるな。」


うんうんと頷きながらテル隊長が子供の顔を覗き込む。

そんなテル隊長を見ながらも、子供がバランスを崩してしまわない様に右手を子供の体に添える。


しかしずっと抱えてるわけにもいかない、兎に角ベッドへ運ぼう。


子供の顔を覗き込むテル隊長をすり抜け、ナイトテーブルが添えられている子供には大きすぎるベッドに静かに足を進めた。

テル隊長も後ろから静かについて来た。


ソッと子供を起こさない様にベッドに下ろすと温もりのないベッドに子供が身じろぎをする。

そして体を抱え込む様に位置を落ち着けると、もう動く事なく眠りの世界へと飛び立って行った。


そんな子供の動きが止まるのを目の端に移しながら、ポケットから掌に収まる小ささの長方形の薄い鉄板の様な物を取り出す。

鉄板には円を基調とした恐ろしく正確な術式が組み込まれていた。

それを片手に持ち子供の頭に翳す。

そして、自分の魔力を鉄板に流しつつ唱える。


「術式展開。記憶解析、記録。」


そう言った瞬間に鉄板が光を放つ。

そして、術式から子供の記憶が溢れてきた。


今回もお読みいただきありがとうございます!


そして、すみません!

また更新が遅れる事となってしまいました……

すみません……


しかし、今回あんまり進まなかったですねー…

難産が途切れ途切れに続いております……塚宮です。

今回でジェイドがエルから記憶を見る事に許可を取りましたが、皆さんでしたらどう思いますか?

自分の記憶が必要な分だけとはいえ、ほとんど知らない人に見られる……

私だったら恥ずかしすぎて精神的にバンジージャンプな感じです笑


ちょっと前から思った事……活動報告ってどうやって使えばいいんだろう……


という事で!今回もお読みいただきありがとうございました!

ではでは、また次回お会いしましょう!

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