No.05
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それから私達は影絵で暫く遊んだ。
テル爺は大きな筋肉質な手で様々な影を生み出した。
“いぬ”という形や“ふくろう”という形等を映して私につくり方を教えてくれた。
「そういえばお嬢ちゃん。もうそろそろ夕食の時間だが……」
「!」
もしかして、テル爺もどこか行ってしまうのか?
またあの考えに支配されてしまうのか?
“こわく”なって、ベッドの上の私の隣に胡座をかいて座っているテル爺の服の袖を掴んだ。
それをテル爺は目を丸めて見てから、口元を緩めた。
「私が聞きたかったのは私もここで食べてもいいか、ということだったんだがの」
「!」
私はその問いに大きく頷くことで答えた。
そしてテル爺は指をロウソク台や天井についているシャンデリアを順に指しながら何かを唱えると、それぞれの光が灯った。
私は“おどろいて”それを見つめいるとテル爺は後頭部を掻きながら「殿下なら念じただけで付けることができるんだが……どうも火魔法は相性が悪くての」そう呟く。
その後すぐにテル爺は侍女を呼び、二人分の夕食をこの部屋に用意させた。
夕食を持って来た侍女は先程のジェイドを叱った人だった。
台を二つ分ベッドの上に置き、食事を置いて端の方で控えた。
私の間に置かれているのはさっき食べた“おかゆ”で何かわからない緑のものが増えているようだった。
テル爺の方には、白く長い物が無数に乗っている物の上に赤いどろっとしたものが掛かっている物と、香ばしい匂いを放つ塊が二つの皿に分かれて台の上に置かれていた。
テル爺はその自分の食べ物を美味しそうに食べ、私も自分の“おかゆ”を食べた。
その後完食した私達の台や皿を控えていた侍女が下げて行った。
その間そばに置いてあった“うさぎ”を腕に抱き寄せた。
影絵でも活躍した“うさぎ”だ。
大きな怪物役として影絵でテル爺が動かしていたのを見て食べ物でもない事を理解できた。
ギュウッと抱きしめると気持ちがいいことにも気がついた。
このフカフカ、モチモチな心地についうっとりしていると眠気が襲って来た。
ウトウト、ウトウト、ベッドの上で船を漕いでいるとテル爺が見かねたように声をかけた。
「お嬢ちゃん、もう寝たらどうだ?」
しかし、私は首を振った。
ジェイドが帰ってくるまで私は起きている。
テル爺はそれを察したのか、頬を緩ませて頭を撫でた。
「ジェイドか?」
確認するように問うテル爺の言葉にコクリと頷く。
目を擦って眠気を耐える。
それを見ながらテル爺は呟くように言った
「お嬢ちゃんはジェイドに懐いておるのか……珍しいの……。」
その言葉を頭の片隅で聞きながら暫く待つ。
テル爺もその間私の眠気を覚ます手伝いなのか、光玉を四つをほど出して色々な動きを見せてくれた。
自由自在に舞う光玉を“おどろき”ながらも目で追うと少しずつ眠気が収まっていく。
そうこうしている内に時間が経ち、扉が静かに叩かれる音がした。
「ジェイド様が来られました。」
「通せ。」
侍女の声にテル爺が答えた。
ガチャリと扉が開き先程の侍女の後ろに付いてジェイドが入ってきた。
ジェイドを見てすぐさま体が反応した。
ベッドから飛び出すとジェイドの方へと走り寄る。
ジェイドは何もせず無感情に私を見つめるが、それに構わずジェイドの足に抱きついた。
「おい、離せ。」
上からジェイドの声が降って来る。
しかし、その言葉に私が従うことはなかった。
手だけではなく足も使ってジェイドの左足にしがみ付いた。
目が熱くなり鼻がツンとする。
胸が苦しくなる。
喉がしゃくり上がった。
そんな状態で暫くいると上からため息が聞こえた。
「?」
上を見上げるとジェイドが眉間に皺を寄せながらこちらを見つめていた。
その状態でジェイドが私に両手を伸ばす。
脇に手を差し入れられ持ち上げられる。
目の前まで持ち上げられる。
目が合わさった。
「……なんでまた泣いている」
ヒクリ
喉がまたしゃくり上げた。
後ろでベッドの軋む音がした。
ジェイドがそちらに目を向けた。
「おーー、ジェイド!やっと来たのか。お嬢ちゃんと待ちくたびれたわ。まったく」
足音が聞こえ、テル爺がそばに来たのが分かった。
「テル隊長、これはどういう事ですか。」
「どういう事とは?」
「……なぜこの子供はまた泣いているのですか。」
ジェイドの問いにテル爺は「ハハハ!」と声を響かせる。
「そりゃあ、お前さんがやっと戻ってきたからな!」
「……どういう事ですか。私の顔を見て泣いて逃げ出すならわかりますが、泣きながら抱き付いて来るのは意味がわかりません。」
その言葉にテル爺はニマニマしながら答える。
「単純にお前さんが恋しかったんだろうのう。」
「……恋しかったと。」
「そうだ。お前さんが目を覚まして、初めて得た信頼できる者だからの。」
「……そうですか。」
「ちなみに、私が部屋に来た時お嬢ちゃん一人で泣いておったぞ。」
「……」
黙ったジェイドはまた私に視線を合わせた。
両手で抱えていたのを左腕に私を座らせるように抱え直す。
「涙を拭いて泣き止め。私はもう此処にいる。泣く必要はないだろう。」
“なみだ”?
「?」
“なみだ”が分からなくてジッとジェイドを見つめる。
すると後ろからジェイドがテル爺が声をかける。
「あー……ジェイド。お嬢ちゃんどうやら物の名前やら、普通の事がよく分からないらしい。今もほれ、涙の意味が分かってないようだの。」
「分からない?」
「そうだ。」
「そうですか。先程に物の名前はよく分からないようだとは分かったのですが、当たり前な事まで分からないという事ですね」
「その様だの。だから分からそうな事は少しずつ教えていくといいと思うぞ。」
「そうですか。分かりました。」
そう言ったジェイドは右手で私の目の辺りを擦るように撫でると、私が見えるように手を見せた。
「これが涙だ。目から出る塩辛い水だと思えばいい。」
そうかと納得する。
この目から出る水が“なみだ”か。
掌で擦ると“なみだ”は無くなった。
今回もお読み頂き有難うございます。
さて今回やっとジェイドが帰って来ました!
よかったー!やっとジェイドをスタンバッてたところから呼び寄せる事が出来ました!
……『ずっとスタンバッてました』元ネタ知ってる方は心の中に秘めてください……笑
とにかく!次回はエルかジェイドの目線になるかと思います!
両方かもしれませんね……。
先週驚いた事……前回の物を確認がてら読んでいたらなんと光玉の読み仮名が普通についていた事
いや、本当にビビりましたよ!
なんでかちゃんと普通の位置についてる!?って笑
ではでは、また次回でお会いしましょう!




