No.05
扉が薄く開く。
そこにひょこりと頭を出したのは、長い耳を持つピンク色の何かだった。
「!?」
扉の中間より随分上の方にそのピンクの物は漂っていたかと思うと上下し始めた。
その動きに合わせて後ろから先ほどの渋い声を無理やり上げているのか、掠れた変な声が部屋に入り込む。
「お嬢ちゃん!起きてるかな?起きてたら手を叩いてね!」
思わずとポカンとそのピンクのものを見つめてしまう。
そんな事をしながらそのピンクの何かを見ていると動きが止まったかと思いきや今度は体全体をブルブルと激しく振り始めた。
「!?」
だんだんと“おどろき”より逃げ出したくなるような……“こわい”が体を占めた。
「あれ?おかしいの?小さい子ならこれで喜ぶはずだが……やっぱり眠っておるのかの?お嬢ちゃん?入るぞー」
渋い声はそう言うと扉を押した。
微かにギィと扉の開く音がした。
ピンクの何かの後ろから出てきたのは頭を灰色に輝かせた男だった。
頭だけを覗かせた男はキョロキョロと何かを探すように見渡すと
パチリ
私と目があった。
「おー!お嬢ちゃん……!?」
灰色の男が目を限界まで開く。
「どうしたんだ!?お嬢ちゃん!?」
そう叫んだ男は、頭だけを出していた扉から慌てて飛び出す。
大きな体が俊敏に動き私の前まで来た。
そして男は持っていたピンクの何かをベッドに置くと私に手を伸ばした。
「!?」
近づくその大きな手に体がびくりと跳ねた。
何をされるのか分からなくて思わず目を強く閉めた。
胸の辺りで握られている両手に力がこもるのが分かる。
真っ暗な視界の中、男が動きを止めたのがわかった。
そのまま何もしないのかと思いきや、今度はゴソゴソと服を探る音が聞こえた。
ジッと固まったまま待っているとそっと目の当たりに柔らかなモノがポンポンと触れた。
「!」
何をされているのか分からず、柔らかなモノの正体を見るために薄く目を開く。
すると灰色の男の顔が顔の真ん前にあった。
髪と同じ灰色の無精髭がよく見える。
そんな近距離に目を見開き“おどろいて”ビクリと身を引いた。
「おー、すまんすまん。驚かせてしまったな。」
見開いた私の目に合わせて穏やかな碧が目を細めた。
細められた目には今まで見たことがないほどに穏やかな色が見られた。
その穏やかな色を見つめると奥の方から穏やかな春の暖かな日差しのような波が感じられた。
この人、魔族だ。
認識する。
少しだけ胸の中の重苦しさが消えた気がした。
そんな中、その碧を持つ男は口を開いた。
「お嬢ちゃんどうしたんだい?私のこのうさぎちゃんが怖がらせたかの?」
そう言ってそばに置いてあったピンクの長い耳を持つ物体を手に持つ。
残念そうな眼差しをその“うさぎ”と言うものに向ける男。
「失敗だったかの……、私の娘や孫娘はよく喜んでくれたもんじゃが……」
そんな様子を見ていると鼻から水が垂れてきた。
それに気がついた男が私に白い柔らかそうなハンカチを前に持ってくる。
鼻を挟むように置かれる。
ジェイドと同じ動き。
鼻をまたキュッと締められる痛みに身をすくませる。
だが予想に反して男は私に声をかけてきた。
「お嬢ちゃん。ほら、思いっきり吹きなさい。」
「?」
首をかしげて男を見ると男は目を更に目を細めて口を開く。
「鼻だよ。ほら、鼻水垂れて嫌だろう?」
「?」
“はなみず”?
なんだろう?
この鼻から出てる水の事?
更に首をかしげると男も首を同じ方向にかしげる。
二人して目を合わせたまま首をかしげる。
目を瞬かせると男も目を瞬かせた。
「?鼻水だよ。鼻から垂れとるだろう?」
「!」
ああ!この鼻から出てくる水の事か!
この水を“鼻水”と言うのか!
鼻から垂れる水の名前を知って目を見開く。
そうすると男も同じように目を見開かせた。
「まさか……知らなかったのか?」
首を元の位置に戻して頷くと男は目を見開いたまま「そう……か。」と呟いた。
そして調子をとりなすようにまた明るい声を上げた。
「それは兎も角さっさと鼻水を吹いてしまいなさい。」
思いっきり鼻から息を吹きなさいと、真っ白なハンカチを構えたまま急かされそのままブゥーーと息を吹き出した。
そして男は離れ際に思いっきり鼻を摘んで離れていった。
鼻からの呼吸が楽になる。
その感じにニコニコとお顔が綻んだ。
男は持っているハンカチを丸めるとナイトテーブルに置いた。
さてと男は向きを変えると改めて私に目を向けた。
「じゃあ、自己紹介だ。私の名前はテル。お嬢ちゃんならおじいちゃんと呼んでくれていいぞ。お嬢ちゃんは?」
「……」
お嬢ちゃんは?なんて聞かれても……
と、思っていると男は何か勘違いしたのか「自分の名前を言ってくれればいいぞ」と言う。
言ってと言われても……
この男……テル……テルおじいちゃん?……テル爺は私が声が出ないのを知らないのだろうか。
とにかく首を横に振る。
「ん?なんだ?」
……よく伝わらなかったようだ。
もう一度首を振ると男は訝しげに顔を顰める。
「いや、お嬢ちゃん小難しく考えなくていいんだぞ?普通に名前を言ってくれればいいんだ。名前がないわけじゃあるまいし、ましてや喋れない訳じゃない……んだ?。」
喋れないの所で肯定するように首をブンブンと縦にふるとテル爺は言葉を途切れさせた。
「え?本当か?」
コクリと力強く頷くと固まった。
今回もお読み頂き有難うございます!
先週は更新すること叶わず本当にすみませんでした。
私事で色々バタバタしていまして……すみません……。
と言うことで今回テル爺が新たに出てくることとなりました!
なんだかテルのキャラがまだ定まっていないような感じです……
しかしテルはもう55歳おじさんをもうすぐ通り越しておじいちゃんな歳なんです。
少しずつ練っていきたいと思います!
それまで少しの間ご辛抱を……
しかし、テル爺……うさぎで何がしたかったのか……笑
ところで、この話普通の動物などの名前はこっちと大体同じになるかと思います!
伝説上の生き物とかそこら辺は考えたり引用させてもらうことになるかと思います。
ところで今回、先週の分も兼ねてもし今日中に間に合えばもう一話書かせてもらうこととなるかと思います!
できるだけ間に合わせてみますが……いえ!とりあえずやってみます!!
今回も本当にありがとうございました!
ではでは!また次回でお会いしましょう!




