No.05
味がよくわからなかったがお腹の辺りがボンヤリと温かくなった。
そして何だかスッキリした香りと食欲をそそる香りが鼻を駆け抜ける。
お腹がグルルルとなった。
突然かなりお腹が空いていたのを自覚する。
その飢餓感に促されるままスプーンを器に差し込み“おかゆ”を掬って口の中に入れようとするとジェイドが止めに入った。
「おい、まだ熱いだろう。息を吹きかけて少し冷ましてから食べろ。」
そう言って立ったままだったジェイドはベッドの近くにあった椅子を引き寄せ座り、ベッドの脇の小さなテーブルに置いてあった分厚い本を取り足を組んで読み出した。
その一通りの動作を流れるように優雅にやったジェイドを横目に私はスプーンを“おかゆ”に潜らせ今度は思いっきり息を吹きかけた。
すると“おかゆ”は幸いスプーンから飛び散ることはなかったが、水面を波立たせボタボタとスプーンから器の中に落ちていった。
スプーンの中に残ったのはほんの少し……
なんでか眉が下がる。
それを音がした時にこちらを見たのかジェイドが声をかけてきた。
「おい、もっと静かに息を吹きかけろ。強く吹くからそうやって落ちるんだ。」
少し強く聞こえる言葉に侍女は少し眉を顰めたが何も言わずに私の様子を見た。
私はそれを聞いてもう一度“おかゆ”を掬い、今度はゆっくり慎重に息を吹きかけた。
今度は“おかゆ”はスプーンのから落ちることはなかった。
そのことに思わずと顔が綻んだ。
そしてその事を教えてくれたジェイドにその顔を向けると、ジェイドもほんの少しだけ目を細めた。
それを見て益々自分の口の端が自然と上がっていくのを感じた。
そのまま“おかゆ”のまた注目し口を大きく開いてパクリと口の中に入れて“おかゆ”を口の中に残しスプーンを引き抜いた。
「!」
その直後に口の中に仄かな暖かさを残した“おかゆ”の味が流れ込んだ。
マグマグと口を動かすたびに様々な未知の味が舌を翻弄する。
それらを噛む砕き飲み込んだ後に残るのは少しだけ後を引くアッサリとした何かと香り高いものそして食欲をそそる味だ。
その味に誘われ次々とスプーンを器の中に入れて“おかゆ”を冷ましながら口の中に夢中になって運び入れていく。
すぐに器の中が空になった。
私のお腹もパンパンに膨らんでいる。
もうこれ以上入らないよ……。
こんなにたくさん食べられたの初めて……。
満足げにお腹を撫でているとジェイドが席を立って何処かへ行こうとする。
「!?」
それに“おどろいて”思わずジェイドの揺れた背中まである長い黒髪をガシリと掴んだ。
そのまま歩いて行こうとしたジェイドが頭を仰け反らせる。
暫くそのまま私が髪を離すのを待っているのか、頭を仰け反らせた姿勢で固まっている。
待っても離さないのが分かったのかジェイドは頭を振り向かせた。
目が合う。
「何をしている。離せ。」
離したらジェイドはどこかへ行ってしまう。
離せるわけがなかった。
サラサラしたジェイドの漆黒の髪を更に力を込めて握った。
それに目をチラリと向けると体の向きをそのまま後ろ向きで歩いて帰ってきた。
私の元にたどり着くとクルリと体を反転させ私と目を合わせた。
私を見下ろすジェイドの目は決して冷たい物でなかった。
「ずっと戻って来ないわけじゃない。少し仕事を片づけてここで必要な物を持ってくるだけだ。待っている間、誰か魔族の者をここへ寄こそう。だから離せ。」
でも……
と私を見下ろしたままジェイドはまた口を開く。
「……できるだけ早く戻ってくる。だから待っていろ。」
その一言で俯いていた顔が上に上がった。
ジェイドと目を合わせると生真面目な顔をしたジェイドがこちらを見返す。
私はその言葉を信じて手の力を緩めた。
ジェイドはまた体を反転させ扉へ到着進んでいく。
手からジェイドの黒髪がスルリと抜けていった。
ジェイドはそのまま振り向きもせずに扉をガチャリと開き出て行った。
その背中を瞬きもせずに見つめて見送った。
侍女もお椀を持って「用事があるならば、そちらにあるナイトテーブルの上にある鈴を鳴らしていただければすぐに参りますので。」と言って一礼し部屋を出て行った。
部屋の中が急にガランとして広くなったように感じる。
自分一人の息遣いが聞こえる。
今まで一つの部屋に一人でいるという事はなかったためか、心臓がギュッとなるような感じがした。
まるでもう誰もこのまま待っても来ずこのまま一人でいるような感じがした。
心臓の締め付けが強くなり息が詰まるような息苦しさを感じた。
どうしよう……
なんだろうこれ?
胸が苦しい……
目から水がまた出てきそうだよう……
ジェイド戻ってくるって言ってたけどいつ戻ってくるの?
そういう考えが頭を占めた。
息が苦しくなって心臓も痛い。
思わずと俯いて両手で胸の辺りを押さえた。
水が出てくるのが嫌で目をギュッと閉じる。
座った姿勢のまま体が強張り丸まる。
不思議とギュッと閉じている目から水が染み出してきた。
それはどうやら雫となってシーツに落ちているようだ。
ポタッポタッとかすかなシーツを打つ音がする。
どれくらいかは分からないがしばらくの時が過ぎて、扉の方からコンコンと音が聞こえた。
ビクリと体が“おどろいて”跳ねる。
そろりと目を開け扉をぼやけた視点で見つめると扉の外から声が聞こえた。
「おーい!お嬢ちゃん!入ってもいいかい?」
渋い聞きなれない声に体が強張り“こわい”というのが体を締め付けた。
まだ止まっていない目からの水が今度は頬を伝ってシーツに落ちた。
扉の向こうの声の主はどうやら返事がないのを訝しんでもう一度扉を叩いているようだ。
またコンコンと音がなった。
「お嬢ちゃん?……あれ?寝ておるのかな……?」
その声が聞こえてしばらく音が止んだ。
何か考えていたのか少し間をおいて今度は控えめに静かに扉が叩かれた。
「お嬢ちゃん?……返事がなければこのまま扉を開けるぞー?」
開けると言われて思わずと身構える。
……と言っても胸が痛いままだから、両手はまだ胸の辺りで握り締められているままだし目からの水は相変わらず流れっぱなしのまま扉を凝視するだけだが……。
ガチャリと音がなった。
そして扉がゆっくりと開けられた。
今回も読んでいただき本当にありがとうございます!
ちょっと短かったですね……。
すみません。
次回はもっと長く面白い話が書けるよう精一杯やらせて頂きます!
さて今回ジェイドと侍女さんが舞台から一時退場しました!
そして出てくる謎の人物!
エルに迫るのは魔の手かジジ……皺くちゃな手なのか!?
ってここまで言えばもうわかる人にはわかるのではないでしょうか?
次回は会話が多くなってくれるかと思います!
何せ今まで口がきけないエルと口数の数ないジェイド、そして侍女という仕事柄あまり口を挟めない侍女さん……。
まあ、そんな訳でエルのところは殆どは心の中で思ったことを書くだけですが次に登場する人は程々に喋る人なんで安心してください!
ではではまた次回お会いしましょう!




