No.00
そこは、何もない暗闇の中だった。
そう、ただの真っ暗な四角い部屋に私は居た。
時折出されては暴行を受けた。
いつからここに居るのか分からない。
物心ついたときからここに居る。
最低限の食事と下着はそろっている。
始めは私以外にも人はいた。
赤子の私を何とか数人の人で育てていたらしい。
私が一番幼く一番弱っていたため、他の人たちは自分の数少ない食事を水に浸したりして柔らかくし口に含ませてくれていた。
此処に来たときにはどうやら、乳を飲む時期は過ぎていたようで何とか柔らかくしたパンなどは食べられたらしい。
そのうち人が減り始めたことに気がついた。
人が減っていくことに疑問は感じなかった。
たとえ居なくなった人が二度と帰ってこなかったとしても……
そのことに気がついてから数年。
ついにそばにいた人の最後の一人が行く事になったみたいだ。
その人は、ガリガリに痩せて細っていて今にも倒れこみそうにフラついていた。
扉の外から聞こえてくる足音が小さく聞こえてくる。
音を聞きつけてその人は扉からは死角の扉の裏に私を連れて行く。
そして私の目線に合わせるようにしゃがみこみ目を見つめて口を開いた。
「きっと、僕がいなくなったら君はすぐに見つけ出されてしまう。それはもう避けられれないことだ。だけど最後まで生きることを諦めてはいけないよ。何があろうとも……」
そこでその人はいったん口を閉じて何かをこらえるように目をぎゅっと閉じてまた開く。
私には、何を言っているのかまったくわからない。
言葉は伝わっているのに意味がワカラナイ。
何を必死になっているの?
なんで目から水が滴っているの?
なんで眉を寄せて可笑しな顔をしているの?
だが残念ながらその問いは口にすることはできない。
私はなぜか言葉を発することはできないのだ。
黙ったままその人の言う事に耳を傾ける。
「いいかい?これだけは覚えておいてね。
君も何日かずつに分けて外に出されて……その……体を男に触らたりしているだろう?
そして、たまに殴られたり……って殴るってわかんないか……えと……だから痛いことをされたりするでしょう?」
その人の言っている事にやっと理解ができることが出てきて顔が綻ぶのがわかる。
男が触ってくる事も痛いことをされる事も理解ができる!
実際に自分がされていることだ。分からないわけがない。
うんうんと笑顔のまま勢いよくうなずく。
その様子を見てその人は微妙な顔をしながらも理解ができたみたいでよかったよ、とつぶやいた。
「しばらくはその男に君は”使われる”だろう……僕のように、ボロ雑巾のようになるまで……僕の顔見えるだろう?僕の顔にあざ……色が変わっているところがあるだろう?」
その人の顔をよく見ると確かに色が変わっているところが沢山ある。
それを認めてうんと頷く。