漫才脚本「占い師」
A……ボケ担当。B……ツッコミ担当。
コンビ名は考えていないので☓☓としました。
A・B、ステージに上がる。
A「どうも~☓☓です!」
B「よろしくお願いしま~す!」
A・B、観客に向かって軽く頭を下げる。
A「B君。俺最近、憧れてる職業があるの」
B「何に憧れてるの?」
A「占い師って、かっこよくない?」
B「ああ~占い師ね。人の悩みをズバリと言い当て、スマートに解決。確かにかっこいい」
A「少なくとも、B君の無様な生き様よりはかっこいい」
B「それ、ものすごく失礼だよ?」
A、平然としながらスルー。
A「で、今から俺が占い師をやるから」
B「はいはい」
A「B君は、その隣の屋台をやってる焼き鳥屋をおっさんやって」
B「……おう」
A・B、それぞれの立ち位置につく。
A、立ったまま天を仰いでいる。
B、威勢よく焼き鳥を焼く動作をする。
B「へい、安いよ安いよ! そこのお兄さん、うちのつくね、最高だよ!」
A「……ふう」
B「おっとそこのべっぴんさん。一本いかが? 今ならサービスしちゃうよ?」
A「今日も客、ゼロか」
B「やっぱそうなっちゃうよね! 一度乗ってはみたものの、やっぱ二人でからまないと、何の進展もしないよね!」
A「いやー……お客さん、来ると思ったんですけどね」
B「来るわけないだろ。客の役をやる人間が、この場にいないんだから。やっぱ俺、客やるわ。今から俺が客の役をやるから、お前は存分に占い師を演じてくれ」
A「優しいなあ、B君は。今度お礼に、魚の骨をとってあげるからね」
B「そんなお礼いらねえよ! いいから、さっさとやるぞ」
A・B、再び立ち位置につく。
B「ここが噂の占いの店か。よし、入ってみよう」
B、のれんをくぐる動作をする。
B「すみませーん」
A「あ、おっちゃん。焼き鳥売れてる?」
B「焼き鳥屋はもういいんだよ! 俺はこの店に来た客です!」
A「いやあ、ははは。すみません。あなたと隣のおっちゃん、顔も声もよく似てるもので」
B「そりゃあそうだろ。同一人物が演じているのだから」
A「で、今日は何を占いましょうか?」
B「ちょっと、金運の方を」
A「ははは。そんな感じの顔してますもんね」
B「微妙に失礼だな」
A「ではまず、人相占いで行きましょうか」
B「はあ。人相占い、ですか」
A、Bに顔を近づける。
A「えーっと、まずは……ぶわっははは!」
A、腹を抱えて笑う。
B「え? どうしました?」
A「勘弁して下さいよ。にらめっこじゃないんだから、変顔の方は控えて……」
B「してねえわ! これで変顔認定されるんだったら、世の中まともなフェイスの奴、誰一人としていねえわ!」
A「ふふん。お客さん、怒りっぽいってよく言われるでしょう?」
B「お前が怒らせてるだけだ、馬鹿野郎」
A「では、再び人相占いの方を」
B「今度笑ったら張り倒しますからね」
A、Bの顔面にギリギリまで顔を近づける。
B、露骨に嫌そうな顔をする。
B「そんなに近づく必要、あります?」
A「うーん。むむ~う……おっ」
A、Bから離れる。
A「こ、これは……」
A、深刻そうな顔をする。
B「何なんですか。そんな、悪い相でも出てるんですか?」
A「まつ毛が目に、刺さりそうになっている」
B「占い関係なくねえ? それ、誰が見てもわかることだから!」
A「しかも、二本同時に」
B「わかった、わかった。これでいいだろ、これで」
B、目をこすってまつ毛を取る動作をする。
A「ふむ。お客さんの場合、人相占いじゃない方がいいかもしれませんね」
B「あんたの技量が足りないだけだろうが」
A「では、今度は、タロット占いで行きましょうか」
B「ああ、はいはい。タロットね」
A、カードを机に広げる動作をする。
A「う~ん。はっ!」
A、カードを一枚抜き取る動作をする。
A「おおっ。これは!」
B「どうですか、結果は」
A「見て下さい。ドロー2!」
B「それ、ウノじゃねえか! ウノでどうやって占いするんだよ!」
A「いやあ、タロットカードを買う余裕がなかったんで、これで代用しようと思ったんですけどねえ」
B「タロット買えないって、あんたの金運の方が心配になってきたんだけど」
A「お客さんの言う通り、やっぱりこれじゃあ無理っぽいんで、水晶占いにしますね」
A、水晶玉を取り出す動作をする。
B「水晶玉は一応あるんですね」
A「ええ。奮発して、百万円の奴を買っちゃいました」
B「(呆れるように)あ~。それでタロット買う金なくなったのね」
A「ではでは。あなたの将来を、この水晶を通して見て見ましょう。ふんっ!」
A、凄まじい眼力で水晶に手をかざす動作をする。
A「むう~! お、見えました!」
B「見えましたか? どんな感じですか」
A「全体運は吉。ただし、突然の出費に要注意」
B「何か、いいんだか悪いんだか微妙ですね」
A「当たるも八卦。当たらぬも八卦。それが占いというものです」
B「はあ。言われてみればそんなもんでしょうね」
A「では、そろそろ代金の方を」
B「ああ、はい。そうですね。いくらですか」
A「占い料、三十万円となっております!」
B「突然の出費って、お前のことかよ! もういいよ」
A・B「どうも、ありがとうございました~!」