僕の恋が続く限り
夜中にふと目が覚めて、怖い夢を見た訳でもないのに、背筋を冷たい何かが駆け抜ける。
そういう事は時々あって、決まって必ずその後は、朝が来るまで寝付けなかった。今までは。
今は隣に君がいて、いつも決まって僕の腕をまくら代わりに寝ていて。その重さが妙に心地よく、気がつけば朝、なんて日の方が増えた。
でも今日は、眠れない日だったらしい。
待てども待てども睡魔は来てくれず、君の重さでじんわりと腕が痺れてきていた。
仕方ない、腕を抜いて起きるかな。そう思って、腕を抜こうと思うのだけど。
まるで「いかないで! 」とばかり。抜こうとするたびに、君はぎゅっと腕を掴んでくる。
起きてるのかな? そう思うけど、聞こえてくるのは心地よく刻まれた寝息だけ。
なんだか、親をなくした子猫みたいだな。と、思ったらクスリと苦笑いと、胸に広がるじんわりとしたぬくもり。
君は僕が必要? なんて聞かなくても、いつも答えはこんな風に、君の知らない所に転がっている。
いつもそう。君はこうやって、僕の心も捕まえて行く。
初恋は一度きり。誰だったか、最近僕に言った言葉だ。一度を終えたら、もう来るはずのない恋。
そんなせつない話なんてあるもんか。君といるとそう思える。
確かに、初恋は幼い頃に済ませてしまったんだろう。単に外見が好きとか、そういうありきたりな理由で。
だけど、愛してるも好きも、何かが違うこの感情。甘酸っぱくて、言葉に出すと何かが逃げてしまいそう。
そんな気持ちにさせるのが恋ならば、僕はずっと君が初めての恋のまま。
「君はずるいね。僕ばかりこんな気持ちにさせちゃってさ」
小さくこぼしたら、君はムニャムニャと寝言で返事。そういうところもずるいんだ。
起きている時の君に、直接聞けない情けない僕への答え、寝ている時にすら出してくれない辺りもさ。
本当はわかってる。君のしぐさが、僕への答えだって。だけど、たまには言葉で聞きたいじゃないか。
「おやすみ、いい夢を」
僕の腕の中の小さな恋。逃がさないように、腕の中に閉じ込めて。
夢の中の君も、起きている君にも、幸せが待っていますように。
そう祈りをも込めて抱きしめていたら、段々と睡魔が襲って来た。
「君とずっとこうして毎日眠りにおちれたら、幸せだな……」
まどろみ始めた意識の中で、普段言わない言葉をひとつ。
「ずっと一緒に居よう」
君はまた、ムニャムニャと返事。
でも、僕の願望がそうさせたのかな? 聞き取れなかったけれど、ハイって答えが聞こえた気がしたんだ。
幸せな眠りで満たしてあげたいのに、僕が幸せな眠りにつけるなんて。
やっぱり君は、ずるいなぁ。
初めての恋は。僕の初恋は。願いが叶うと同時に、二度目の初恋に切り替わった。
きっとそうやって、僕は君にずっと恋をし続けて行くんだろうね。
何度も君に恋をする。そんな幸せな未来が、僕に、二人に訪れますように。
そしてそれが、死が二人を分かつまで、続きますように。
このたびは、読んでくださり、ありがとうございます。
にゃん椿3号さまの新春萌え企画「初恋は二度くりかえす」に勝手に参加させて頂きました!
素敵な企画を作ってくださって、ありがとうございます。