表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

あれ……?

お久し振りです。


 ~7月10日~


 ~教室~


 「よう!ちゃんと学校に来たな!」


 教室に入ると、いつもの定位置に見慣れた男が居る


 「よっ、なんだ、藪から棒に」


 「いやなに……、ゲームにハマって学校を休むかと思ってな」


 今日も今日とて、アホなことを言う男


 「アホ、んなわけあるか」


 「アホちゃうわ、俺は今日休むか真剣に悩んだぞ!」


 日に日に馬鹿さ加減がアップしていっている男


 「悪い、馬鹿だったな」


 「馬鹿でもねえよ!」


 まるで一昔前の人工無能(NPC)の様だ。近頃のNPCは、比べ物にならんくらいに賢いが……


 「すまんすまん、NPC(村人A)だったな」


 「誰が村人A(NPC)だ!」


 「何時も何時でも同じ場所に居るんだろ?お疲れ様!」


 昼夜問わず仕事をするその勤勉さ、モブスピリッツに完敗だ!


 「モブでもねーよ!?」


 「違うのか?」


 「ちげーよ!」


 なんだ、尊敬して損したぜ


 「まぁ、そんな事はどうでもいい……」


 「いやいや、どうでもよくねーよ?!」


 相変わらず騒がしい奴だ


 「んで、何か用でもあるのか」


 「……はぁ、まあ用って程でもないけど、あれからどうだ?」


 どこか疲れた様子の護は、まるで子供にどう接していいかわからない父親みたいな聞き方をしてくる


 「どうって何がだ?」


 「ゲームだよ!わかってんだろ!」


 「わかってるよ」


 「こっ……!…………っ……ふぅ……、いや、お前が俺をおちょくってるのはわかってる。だが、話が進まんからいい加減真面目にだな……」


 口元をヒクつかせて握り拳をつくる護、短気は損気だぞ


 「冗談はともかく、まぁ真面目に答えるとだ……」


 「……おう」


 護の口元が一度、大きくひきつる


 「…………特に何もないな」


 「おい!?」


 「いやマジで何にもねえよ。強いて言うなら宿屋の娘と森に虫取にいったくらいだ」


 「何やってんだよ。じゃあレベルとステータスは?」


 「んなもん上がる訳ないだろ」


 「……マジで何やってんだよ」


 かなり呆れの含んだため息をつかれた


 「ゲームだろ?」


 何を言ってるんだという目を向ける


 「…………」


 無視された






 因みにこのやり取り、細部は違えどほぼ毎日やっている。まるでNPCの様に毎回同じことを聞いてくる護



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 午前の授業が終わり、昼休みになった


 「しっかしお前は、凄いのか凄くないのか分からんな」


 「何がだ?」


 教室で昼飯を食いながら、護と朝の会話の続きをする


 「だってお前、最初の二日で高レベルにトッブプレイヤーなみの称号を獲ったりしたのに、それから一週間でまったくレベルが上がってないとか……訳わからん」


 「ふ~ん、そうか」


 適当に聞き流しつつ、本日の弁当に意識をやる


 「ふ~んって、気の抜けた返事だな」


 「まぁな」


 本日の弁当のおかずは、玉子焼き、野菜の春巻き、焼き魚、プチトマト、カットしたリンゴの五種類


 「まぁなって、たぶんプレイヤーの中じゃレベル10台はもうお前だけだと思うぞ。一部のトッブプレイヤーはレベル50台後半らしいし、一般プレイヤーでもレベル20台後半は最低でもあるし」


 「まぁ気にする程でもないだろ」


 二切れある玉子焼きの内、一切れの半分を食べる。ふんわりとした焼き加減に、トロリとした中身、ほんのり甘く、絶妙な塩加減がご飯に合う


 「……はぁ、お前はそれで良いかもしれんが、もう少し周りも気にしろよ。あんまり突拍子もないことをやってると、いざって時にパーティーに入れて貰えなくなるぞ」


 「ん~……まぁ、のんびりやるさ」


 野菜の春巻きをかじりつつ適当に返事をする。うん、スティック状の野菜がサッパリしてて、酸味のある特製ダレが食欲を刺激するな


 「ふぅ……、本当はお前と一緒にパーティー組みたかったんだがな」



 「そうか……ングッ、……モグッ……残念だったな」


 何の焼き魚かは分からないが、醤油をベースに大根おろし多めに生姜少々、ほんの少し梅酢を入れた特製ダレがかかった白身魚で、白飯を頬張る。夏の暑さが気にならないサッパリ感があるな!


 「九十九、お前……俺の話し聞いてるか?」


 「むぐ……ん~、んぐっ……まぁ、もぐ……」


 「…………はぁっ」


 そんな感じで適当に昼休みが終わった



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 [17:48]


 学校が終わり、家に帰る道中に護に「もうちょっと頑張ってレベル上げといた方がいい」と言われた


 まぁ、そんな事はどうでもいい。成るように成る


 ヨソはヨソ、ウチはウチだ


 「っと、着いたな」


 考え事をしていたら目的地を通り過ぎるところだった


 目的地の店の扉を開け中に入る


 「いらっしゃいませ~……って、あら?クドー君じゃない、こんばんわ。今日はどうしたの?」


 店に入ると、店の奥からターラさんが出てきた


 「ターラさん、こんばんわ。実は昨日の事が気になって、もしよかったら今日教えて貰えないかと思って来てみたんですが……」


 ターラさんに挨拶をして、昨日言っていた服の仕掛けが気になり、その事を教えて貰うのに今日は大丈夫かを聞く


 「ふふっ!そう、良いわよ。今はお客さんも居ないし、どうぞ上がって。中で話しましょ」


 ターラさんは微笑むと、快く了承してくれて店の奥に招いてくれた



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 店の奥ーーと言っても、開けた扉一枚向こうの部屋で、休憩室のような場所だが


 「さて、何から話そうかしら?」


 ターラさんは、壁寄りに置かれた机の椅子に座り、俺も椅子を勧められて座ると、ターラさんがそう切り出した


 「クドー君は何から聞きたい?」


 「そうですね…………、とりあえず昨日の服の効果、服の仕掛け、あとターラさんさえ良ければ、昨日売った蝶からどうやって鱗粉を採って、どうやって薬にするのか知りたいです」


 最後の提案は、薬屋であるターラさんには何言ってるんだ、と思われるかもしれないが、気になって仕方ないから、失礼を承知で聞く


 「そうね、じゃあ順番に説明しましょうか」


 そう言いとターラさんは、「ちょっと待ってて」と言って奥の部屋に入っていき、一着の服を持って戻ってきた


 「この服だけど、昨日の服と同じ造りの物なの」


 机の上に、昨日と同じ型の服を広げて椅子に座るターラさん


 「確かに、昨日着ていた服と同じ刺繍ですね。昨日のは薄緑色で、こちらの服は薄めの黄色ですが」


 昨日の服とは服の色が違うだけで、刺繍の色なんかは同じみたいだ


 「ええ、服の色にも意味は有るんだけど、本命は刺繍の方で、〈魅了チャーム〉の魔術が掛かってるの」


 「〈魅了〉の魔術ですか?」


 「そう、〈魅了〉の魔術。女の人がこの服を着て、そして男の人がこの刺繍を見る又は視界に入れると、〈魅了〉を仕掛けられるの」


 魅了とは……、なんか物騒そうだな


 「魅了の魔術って、何となくは分かりますけど、具体的にどれくらい効果があるんですか?」


 「どれくらい……そうねぇ、特に訓練とか修行なんかをしていない一般の男性に、何かこの人の役に立ちたい、この人を守りたい。そう言う感情を軽く持たせるくらいかしら」


 「一般の男性ってことは、冒険者なんかには効かないんですか?」


 「そう言う訳じゃないんだけど、この服に掛かってる〈魅了〉の魔術は、そこまで強いものじゃないから、ある程度精神力の強い冒険者なんかは効かないか、効きが悪いのよ」


 なるほど、確かに一般人は冒険者と違ってレベルなんかはスキル以外は関係無いしな。冒険者みたいに個人の生体レベルが上がる訳じゃないし、そうなると精神力なんて、何らかの訓練や修行でもしないと強くならんか


 「なるほど」


 「因みに、〈魅了〉は【魅力】のスキルかアビリティで覚えることが出来るわ」


 「【魅力】のスキルかアビリティですか?」


 「そう、人を……いえ、生物を惹き付ける程の魅力を身に付ければ、【魅力】のスキルかアビリティを覚えられるわ」


 ……俺には関係無いな。魅力とか、俺には無いし


 「ついでに余談だけど、【魅力】にはもう一つ〈集団統率リーダーシップ〉って言う技と言うか特性みたいなものがあるわ」


 「〈集団統率〉ですか」


 これも俺には関係無いな。人の上に立つとか俺の趣味じゃないし、そんな器でもないしな


 「そう。もうちょっと付け足すなら〈魅了〉は〈魔性イノセンス〉に変化するし、〈集団統率〉は〈威光カリスマ〉になるわ」


 「なるほど、〈魅了〉の効果については分かりました。それで、【魔術】は【魔法】とは何か違うんですか?」


 【魅力】のスキルは、俺には縁の無い話だな


 「う~ん……そうねぇ、私の覚えてる範囲だと、【魔法】には主に三種類あって、一つが〈詠唱魔法〉で呪文を唱えるタイプの魔法。二つ目が〈儀式魔法〉で魔方陣を使った結界や召喚、大規模な魔法等に使うタイプの魔法。三つ目が〈精霊魔法〉でこの世界に溢れる精霊達に力を貸してもらい、大規模な魔法や精密な制御を必要とする魔法。この三つが魔法の大まかな分類。それで、主な基本的な【魔術】が〈儀式魔術〉〈供物魔術〉〈刻印魔術〉の三つ。〈儀式魔術〉は魔法とそう大差ない感じで。〈供物魔術〉はこれから使おうとする魔術に見合った魔術的な供物を代償に発動する、所謂等価交換タイプ。〈刻印魔術〉は人や物に魔術的な意味を持った文字や紋章、造形等を付加する魔術ね。人によっては〈刻印魔術〉じゃなくて〈造形魔術〉が基本の魔術の一つだって人がいるけど」


 「う~ん……、魔術と魔法にいくつか種類が在るのは分かりましたけど、結局は魔術と魔法ってどう違うんですか?」


 俺には何がなんだかサッパリだ


 「そうねぇ~……、簡単に説明するなら、魔法が術者の魔力を主に消費するのに対して、魔術は術師の魔力以外にも他所の魔力ーー魔力を持った、又は魔力を帯びたアイテムーーを代替に使用する事も出来る。そんなところかしらね、私が知ってるのは」


 は~ん、ようは自家発電か外部電源かの違いか


 「まぁ、何となくは分かりました」


 「そう、それじゃあ最後に蝶の薬についてだけど、教えるのは問題ないわよ」


 「本当ですか」


 「えぇ、本当よ」


 一応言ってみるもんだな


 「ありがとうございます」


 「ふふ、いいわこれくらい。ただ、これからもウチを利用してくれたらね」


 そう言ってイタズラっぽく笑うターラさん


 「もちろん。これからも使わせていただきます」


 「ん、それじゃあ奥の飼育部屋にいこうか。実際に見ながらの方が分かりやすいし」


 「あっはい」


 椅子から立ち上がったターラさんの後を追って奥の部屋に移動する



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 [18:12]


 ターラさんの後を追って入った、ターラさんが飼育部屋と呼んでいる部屋は、南側にある窓の他に天井ーーと言うより屋根には採光用の大きな窓が二つ付いていて、部屋全体の壁に沿うように一抱え程ある幾つものガラスの飼育ケースが並べられていた


 「クドー君、こっちの蝶が鱗粉を採取する前の蝶で、隣のこっちの蝶が鱗粉を採取した後の蝶よ」


 窓際に置いてある飼育ケースの中を見ると、採取前のケースに入った蝶は濃い緑色をした羽根をしていて、採取後の蝶は羽根の色が抜けたのか、色のない半透明の羽根になっていた


 「こっちの採取前のケースの蝶は昨日捕まえた蝶よりも羽根の色が濃いですけど、逆にこっちの採取後のケースの蝶は緑色の羽根の色が無くなってますね。どういうことですか?」


 それに、鱗粉は確かに取れるだろうけど、羽根の色が抜けるというか落ちるというか、そんな風には普通ならないんじゃないか?


 「これはね、緑薬蝶や白療蝶にみられる特性ーーって言って良いのかな。薬草や毒消し草の蜜を吸うと、吸った草の蜜の成分を羽根に蓄えて、その成分によって羽根に色がついてくみたいなの。そして、羽根に蓄えた成分を鱗粉にして放出するの」


 へ~、なるほどね。でも……


 「どうやって羽根に蓄えた成分を鱗粉して取るんです?」


 「それなんだけど、ちょっとコレを見てくれる」


 そう言って飼育ケースの台になっている机の引き出しから、薄いケースの様な物を取り出してこちらに渡してきた


 「? ……標本ですか?」


 渡された薄いケースは、緑薬蝶と白療蝶の標本らしきモノだった


 「ええ。それで、その四匹の蝶(雄と雌の対)の羽根をよく見てほしいんだけど……、なにが言いたいかわかる?」


 ……ん~、四匹の羽根……じーーっ(【見る・次】発動)…………おぉ? ……(確認中)…………もしかしてコレか?


 「もしかして二種類の雄と雄、雌と雌の羽根の紋様が同じってことですか?」


 本当によく見ないと分からないほど薄い紋様が、雄と雌に分かれて付いている


 「正解。緑薬蝶と白療蝶の雄と雌は何故か、雄と雄、雌と雌で全く同じ紋様が羽根に在るの。勿論理由はあるんだけど、わかる?」


 ぬ……、緑薬蝶と白療蝶の雄と雌に同じ紋様が在る理由…………


 「ん~……、御先祖様が一緒だったとか?」


 そう考えるのが、一番生物学的にありえそうな理由だな


 「ん~っおしいっ! 御先祖様がって言うより、生物として同一の生き物って言うのが正しいかな」


 生物として同一?


 「どういう事です?」


 「つまり……緑薬蝶と白療蝶は、生物学的には同じ名前の生き物で。でも見た目に違いが有るから便宜上名前を別にして区別してるの」


 「……つまり、緑薬蝶や白療蝶は、区別する為の名前であって、正式名称は別に有ると……?」


 「えぇ。生物学的な正式名称は収器蝶しゅうきちょうと言って、元が同じ生物で、何故か成長過程で緑薬蝶と白療蝶に分かれるため、名前が一緒じゃ呼び難いってことになって……」


 う~ん……詳しくは知らんが、ヒラメカレイみたいなもんか?


 「なるほど。まぁ、緑薬蝶と白療蝶が同じ生き物だってことは分かりました。それで……、どうやって羽根から鱗粉を取るんですか?」


 「ふふっ。それはね、蝶が自然に鱗粉を放出するのよ」


 「自然にですか?」


 「そうよ。緑薬蝶と白療蝶は羽根に成分を蓄えていくんだけど、それは一種の求愛行動なのよ。自身の羽根に成分を蓄えて飾る、雄も雌も番となる相手を探すために多くの成分を蓄えようとするの。そして、お互い気に入って番となる相手を見つけたら愛情表現として、羽根に蓄えた成分を鱗粉に変えて放出しながら飛び回るの」


 「なるほど。そういうことですか」


 「えぇ。そして全部の蓄えを放出し終わったら交合して、普通の草木の葉に卵を産み、二・三日生きて生涯を終えるの」


 「……? 薬草の葉っぱとかじゃないんですか?」


 「薬草なんかは動物に食べられたり、人が採ったりするからね。種の保存の為に幼虫の時は、動物なんかが食べたりしない葉っぱで成長するのよ」


 なるほどねぇ……


 「そう言う訳だから、鱗粉を取る飼育ケースには予め下に採取用の受けが置いてあるの。採取前のケースの鱗粉を放出し終わった蝶は、採取後のケースに移しかえて繁殖できる様にするの」


 あぁ、だから採取前のケースには薬草(花付き)が何本か植えてあって、採取後のケースには小さい木が植えてあるわけか


 「まぁ、全部が全部上手いこといく訳じゃないから、昨日みたいに蝶を捕まえたのを買い取ってるんだけどね」


 「はぁー、大変そうですね」


 「相手は生き物だからねぇ。色々気を遣うわ」


 俺にはちょっと無理そうだな


 「んーで、そうやって取った鱗粉を集めてボールに移して、根っ子には粘りのある成分が在るから、薬草(花付き)の根っ子をぶつ切りにして根っ子が浸るくらいの水で煮込み、灰汁を取って煮込み続けて少量の粘りがある煮汁にする。葉っぱには微弱だけど薬効を持続させる効果があって、薬草(花付き)の葉っぱをすり鉢で擂って滑らかにする」


 へー、薬草って結構無駄なく使えるんだな


 「滑らかに擂り潰した薬草(花付き)の葉っぱと、根っ子の煮汁を鱗粉が入ったボールに入れてよく馴染むように混ぜ合わせる。混ぜ合わせたらトレーに移して悪くならない様にシートをして置いておき、軽く水分をとばす。そしてある程度水分がとび、手で捏ねて丸めれる様になったら掌の四分の一サイズに丸め、もう一度トレーに載せてシートを被せて、最後まで乾燥させたら完成。因みに白療丸も同じ作り方よ、材料は毒消し草(花付き)になるけどね」


 …………コレって所謂【調合】ってヤツになんのかな


 「大体こんな感じだけど、よかったかしら?」


 「あっはい! ターラさん、ありがとうございました」


 「そう、それなら良かったわ」


 そう言って笑ったターラさんの顔はとても満足そうだった



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 [19:37]


 あれから飼育部屋で色々聞き、外が暗くなったところで帰ることにした


 「ターラさん、今日はありがとうございました」


 「ふふっ、いいのよ。私も楽しかったわ」


 今日は色々聞けて有意義だったな


 「それじゃあ、また近いうちに来ますね」


 ターラさんに挨拶をして、店を出ようと動こうとした時ーー


 「あっ! 待って。そう言えばクドー君って、スキルを覚えたいんだっけ?」


 ターラさんが昨日の事を思い出したのか、帰ろうとしたところを呼び止めてきた


 「えっ? あぁ、はい。何か覚えられたらいいな、とは思ってましたけど……」


 動こうとした足を止め、質問に答える


 「それじゃあ、クドー君さえ良ければ、私が【調合】のスキルを教えてあげるけど?」


 「それは……、教えてもらえるのなら、嬉しいですが……。急にどうしてそんなことを?」


 ターラさんにそう答え返すと、ターラさんは少し苦笑気味に笑った


 「ん~……実は今日、クドー君に会ってからなにか忘れてるな~と思ってて。ずっと考えてて、それでもなんだったか思い出せなくて。それでクドー君がお店に立ってるのを見て、はっ……! と思い出したのよ。それに、私としては教える事に何も問題ないし」


 ターラさんの提案は、純粋に好意からのものだろう。俺としてもスキルを覚えられるのなら覚えたい


 「俺も問題ありません。むしろ逆に、ターラさんが良ければ俺からお願いしたいです」


 「ふふっ、それじゃあ今日はもう遅いから、今度時間のあるときに始めましょうか」


 「俺は風、火、水、金、土の日は今日くらいの時間か、闇の日と光の日は朝から大丈夫です」


 今のところ現実リアルでは特に用事も無いしな


 「そう……それなら、クドー君がいいなら明日から始めましょうか? 一日に少しずつの方が覚えやすいでしょうし」


 「ターラさんがいいならそれで良いですよ」


 「ん! じゃあそれで決まりね。準備があるから今日はこのくらいにしておきましょうか」


 「分かりました。それでは今日は帰りますね」


 「えぇ。また明日」


 「はい。また明日」


 笑顔で小さく手を振るターラさんに見送られ、馴染みとなった宿屋に帰っていく



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ~7月11日~


 [17:56]


 「ターラさん、今日からよろしくお願いします」


 約束通りにターラさんの元にいき、【調合】を習うために頭を下げる


 「はい、よろしく。じゃあ時間も勿体ないし、すぐに始めようか」


 そう言って飼育部屋とは違う調合部屋とターラさんが呼ぶ部屋に向かう


 「それじゃあ、これからの予定を先に言っておくわ。まず今日明日は座学ーーつまり【調合】に必要な知識を最低限覚えてもらって、明後日は実習ーー簡単なポーション造り、明明後日は座学で、闇の日の午前に座学で、午後から実習、光の日は一日実習でポーション、毒消し薬、抗麻痺薬造り。このスケジュールでいこうと思うんだけど、クドー君は何か言いたいことある?」


 部屋に向かう途中にターラさんがこれからの予定を話してきた


 「いえ、特にはないですね。ターラさんが決めたのならそれでいいです」


 特にこれといった予定は無いので、教わる身としてはよっぽどの事がない限り、これといった意見はない


 「ん、それじゃあこのスケジュールでいきましょ」


 今後のスケジュールが決まったところで一つの部屋の前に着いた


 「じゃあ始めましょうか。分からない事があったらすぐに聞いてね」


 「はい。よろしくお願いします」


 「ふふっ、頑張ってね」


 調合部屋の中に入り、今日の座学が始まった



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ~座学~


 「…………がこうなる訳で、この成分が………………」


 「はい。こっちの成分とはどう違うんですか?」


 「こっちの成分は…………で、………………なる訳で、それでこっちの成分はゆっくり作用…………となる…………」


 「……なるほど」


 「で…………となって、こっちの成分が……で、……混ぜると…………なるわけ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ~7月12日~


 ~座学~


 [18:46]


 「……で、正反対の…………作用して……、毒素………………役割があるのよ」


 「こっちと…………関わりが有る……、……言うことですか?」


 「えぇ、…………ると、……事がある…………注意が……。……にも関係…………」


 「そう言うことですか」


 「因みに………………違えると、…………事が…………!」


 「気を付けます」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ~7月13日~


 ~実習~


 [18:07]


 「……分量を…………こと、いい加減に…………なるから、…………を守ること」


 「はい」


 「丁寧に……、…………ないしね」


 「確かにそうですね」


 「…………大切よ」


 「はい」


 「……不純物を…………、材料には…………」


 「わかりました」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ~7月14日~


 ~座学~


 [18:29]


 「この前の続き………………ところから…………、同じ成分…………わけじゃなく、…………ということ」


 「性質としては同じなのにですか?」


 「そう、たとえ似た成分…………あるの。そして…………すると、…………といった事に……」


 「肝に命じます」


 「ふふっ、慎重に…………事じゃないわ」


 「はい」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ~7月15日~


 ~座学~


 [8:24]


 「今日は毒素について勉強しましょう」


 「はい」


 「毒素とは、ほぼなんにでも…………で、【調合】を…………この事を…………あるわ」


 「はい」


 「どんなに…………って、摂り過ぎ…………なるし。また………………害の無い……でも、ある………………交わると……………するわ」


 「なるほど」


 「……今簡単に…………けど、…………毒素とは………………上で………………毒、発熱…………頭痛目眩………………嘔吐、……麻痺に…………、……単体で摂取………………有害…………ものよ。でも【調合】を………………、…………成分が毒………………ことを………………てね」


 「わかりました」



 ~実習~


 [13:06]


 「今日は座学でやった毒を使いましょう」


 「はい」


 「マスクを…………して、周りに………………ように…………作業を…………」


 「はい」


 「一つ間違え…………自分の………………作業…………、毒を…………場合は………………ように」


 「はい」


 「それじゃあ…………落ち着いて………………」


 「はい」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ~7月16日~


 ~実習~


 [8:08]


 「それじゃあ今日は初めにポーションを造って、次に毒消し薬、最後に抗麻痺薬の順に造りましょう」


 「わかりました」


 「じゃあ、始めていいわ」



 ーーーーーー


 ーーー


 ー



 「後は順に入れて馴染むまで混ぜ合わせる……っと」


 「そう、順番にもちゃんと意味があるから、その事も考えながら造るようにね」


 「はい」



 ーーーーーー


 ーーー


 ー



 「ポーションの次は毒消し薬ね」


 「はい」


 「大丈夫だと思うけど、毒物だから慎重かつ丁寧にね」


 「はい」



 ーーーーーー


 ーーー


 ー



 「ふぅ……あとちょっと」


 「そうね、でも気を抜いちゃ駄目よ」


 「はい」



 ーーーーーー


 ーーー


 ー



 「最後は抗麻痺薬ね」


 「はい」


 「注意事項は前の毒消し薬造りと同じだから、気を抜かないようにね」


 「はい」


 ーーーーーー


 ーーー


 ー



 「……混ぜ合わせた煮汁を濾して、濾した煮汁を瓶に移して、数種類の薬草と木の実を漬けて…………完成っと」


 「うん、大丈夫そうね」


 「ありがとうございます」


 「ふふっ、いいわ。私も楽しかったし」


 「いえ、また今度何かお礼をさせて貰いますよ」


 「あらそう? それなら楽しみにしてるわ」


 「…………出来る限り頑張ります」


 「ふふっ」


 ピコーン


 『スキル【調合】を覚えた』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 7月16日現在のステータス



 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲



 statusステータス


 name(名前):クドー sex(性別):男

 level(レベル):17

 job(主職業):人形師level7

 HP:280⇒290=5%up

 MP:470⇒493=5%up

 Str():18⇒19=5%up

 Vit(守り):13⇒14=5%up

 Agi(敏捷):20⇒21=5%up

 Dex(器用):35⇒46=31%up

 Min(精神):30⇒41=38%up

 Int(賢さ):30⇒36=20%up

 ※⇒右の数字は%分up済(五捨六入する)

 skill(スキル)

 【採取】level1【採掘】level1【細工】level10【錬金術】level5【見る・初】level20【鑑定】level3【魔力糸】level7【集中】level11【裁縫】level3【鍛冶】level1【片手剣】level1【盾装備】level1【短剣】level1【調合】level1

 ability(能力)

 ≪耐える≫ ≪熱耐性≫ ≪火耐性≫

 title(称号)

 ≪師弟関係≫≪才在る者≫≪見定める者≫≪発明家≫≪芸術家≫≪マエストロ≫≪造形師≫ ≪想像する者(イマジネーター)≫ ≪裁縫師≫ ≪双子女神のお気に入り≫ ≪銘柄保持者ブランドオーナー≫ ≪測り見る者≫


 ¥40シム



 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲



ヤバイ!主人公が金欠に(笑)

作者もビックリ( ; ゜Д゜)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ