薬屋
お久し振りです。
夏バテに夏風邪を喰らいダウンしてました。
そうでなくとも筆(指?)が進まないのに。
気持ち短いです
〔大人の薬屋・SM〕
店の中は怪しい空間が広がっていた
店の中に入った俺が目にしたのは、灯りには怪しいピンク色の照明にピンク色のキャンドルランプ、黒いカーテンで窓は塞がれ、紫色の壁に怪しげな絵や置物が飾られ、店の至る所にある怪しい商品、奥のカウンターには怪しい男がーー
居た訳ではなく、想像に反して爽やかな空間だった
暗すぎず明るすぎない優しい灯りの照明、窓は開けられ新鮮な空気が入れられ、白塗りの壁に観賞用の花が掛けられ、左右の壁際と店の真ん中に一つずつ、計三つの棚にキレイに整理された商品が並んでいて、奥のカウンターには、緑色の服を着た居眠り中の巨乳のお姉さんが居た
「…………」
……素晴らしい御胸様だな。メロン……、それも最高級の……
悶々とズレた方向に思考が回転していく
はっ!?そうだ!こんな時こそ【見る・次】の出番じゃないか!よしさっそくーー
「お兄ちゃん?きゅうに止まってどうしたの?」
キアラちゃんに袖を引っ張られて我にかえる
「……はっ?!ん……ん~ん、何でもないよ。想像してたよりお店の雰囲気が良かったから、感心してたんだ」
危ない危ない、思考が暴走してた。なんて破壊力だ、危うく人としての何か大切なものを失うところだった
キアラちゃんを撫でて癒されよう
「ん……、どうしたの、お兄ちゃん?」
撫でられながら見上げてくるキアラちゃん
「見た感じ良いお店みたいだから、感謝しておこうと思ってね。ありがとう」
あと、人としての何かを守ってくれたお礼の気持ちも込めて
「ん!持ちつ持たれつなの」
嬉しそうな満面の笑顔のキアラちゃん
「お~、キアラちゃんは偉いね」
キアラちゃんの笑顔は癒しだな……
「ん!」
まだまだキアラちゃんを撫でて癒されていたいけど、あんまり遅くなるといけないからここまでだな
「さてキアラちゃん、お店の人はあの人かい?」
いまだカウンターで寝ている女性を見る
「そうだよ、ターラさんって言うの。おクスリのこと、とってもくわしいの」
そうか、ターラさんと言うのか
「そのターラさんは寝ている様だけど、どうするの?」
店番、と言うか営業中なのに熟睡しているようだ
不用心だな。いくら此処が比較的平和な、治安の良い街だと言っても、ゴロツキなんかがいない訳では無いんだから
「普通に起こせば起きるよ」
「熟睡してるみたいだけど?」
背凭れに肘掛けの有る椅子に、体を沈める様にして寝ている。口から涎垂れてるし
「大丈夫、見てて」
そう言うとキアラちゃんは、熟睡中のターラさんの元に向かう
カウンターの後ろに回り、ターラさんの横まで行くと、ターラさんの耳に顔を近づけーー
「ふーーっ」
耳元に優しく息を吹きかけた
「ふひゃわんっ?!(ドスッ!)」
耳元に息を吹きかけた途端、熟睡していたのが嘘の様に反応し、その拍子に椅子からずり落ちた
「ぁいったたた~っ?!」
カウンターの向こうから、痛がるターラさんの声が聞こえてきた
「ねっ(ぶい)」
キアラちゃんは足元で痛がるターラさんを一度見てこっちを向くと、胸の辺りまで手を上げ、笑顔で一言添えてVサインを作った
いやいやキアラちゃん、耳元に息を吹きかけるのは普通の起こし方じゃないよ。そんな良い笑顔されても、ターラさん足元で傷みに呻いてるし
「キアラちゃん……、なかなか面白い起こし方をするね」
「よく寝てるターラさんを起こすには、これが手っ取り早いの」
実感のこもった返事が返ってきた
「そんなに起こすの大変なの?」
「よく寝てるターラさんは、普通にゆさぶっても、大声で呼んでも、寝ぼけてて直ぐには起きないの」
なにか思い出したのか、キアラちゃんの笑顔に困ったような表情が混ざる
「前に何かあったの?」
「ここに来るようになって、ターラさんが寝てることはよくあったの。だいたい声をかけたら起きてくれてたんだけど……、よく寝てる時はいっぱいゆさぶって、いっぱい大声で呼んで、やっと起きたと思ったら寝ぼけてるの」
う~ん、言葉の端々に苦労が滲んでるなぁ
「ちなみにどんな感じに寝惚けてるの?」
「抱きついてきて抱きまくらにしてくるの。あばれて大声出しても、全然はなしてくれないの」
なんかキアラちゃんが喋っていくうちに、疲れていっている気がする。
「あ~……キアラちゃん、大体分かったからもういいよ、ありがとう」
もうこの話を切り上げた方がいいな
「もういいの?」
「うん、お疲れさま」
「ん……、大丈夫」
キアラちゃんはどうやら、こっちの考えをわかってくれたらしい。
キアラちゃん……マジ賢い
「ぅ~ん、ぁたたたた……キアラちゃん、びっくりするじゃない」
キアラちゃんとの会話が終わる頃に、椅子から落ちた衝撃から回復したターラさんが、カウンターに手をついて、カウンターの下から立ち上がった
「ターラさんは普通に起こしてもなかなか起きないから、直ぐに起きる方法をとっただけなの」
「そんなことないわよ。普通に起こしてくれれば起きれるわ」
「よく眠ってるターラさんは、普通に起こすと寝ぼけて抱きついてきて、はなしてくれないからやなの」
「だってキアラちゃんあったかいし、可愛いし、抱き心地が良いんだもの。不可抗力なのよ」
「それでもやなの」
…………
キアラちゃんとターラさんのやり取りが続く中、蚊帳の外な俺は、店の商品を【見る・次】や【鑑定】を使って確認していく
別に疎外感を感じたからって、不貞腐れてる訳じゃないからな。……本当だからな!
まぁ……そんな感じで商品を見てると、コレってアレじゃないかって商品を見つけた
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name:緑薬丸
made:〈ターラ〉
item type:〈薬〉〈消耗品〉
rank:【E】
rarity :【普及】
effect
1分間、5秒毎にHPが、HP総量の3%ずつ回復する。
memo:緑薬蝶の鱗粉を固めて造ったもの。生命力が持続的に回復する。
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name:白療丸
made:〈ターラ〉
item type:〈薬〉〈消耗品〉
rank:【E】
rarity :【普及】
effect
毒、麻痺を治す。又、1分間、毒、麻痺に対して耐性(弱)がつく。
memo:白療蝶の鱗粉を固めて造ったもの。体内の免疫力を高めて解毒し、一定時間耐性をつける。
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やっぱりコレって、今日捕まえてきた蝶が材料だよな
虫籠の中じゃ名前が分からなかったけど、緑色の蝶は緑薬蝶で、白い蝶は白療蝶って言うのか
値段はーー緑薬丸は600Sで、白療丸が750Sか
緑薬丸は三粒で1セットと言うことは、一粒200Sで、白療丸は250Sってことか。薬の相場が分からんから、高いのか安いのか判断できんな
前に覗いた東区の露店市場に売ってたポーションは、相場が平均一個100Sで、HP回復量は15%前後だったけど
しかし……蝶の鱗粉を固めて造ったってあったが、蝶一匹からの鱗粉の取れる量なんて微々たるものだろう……、蝶を乱獲してる訳じゃないだろうし、どうやって量を集めてるんだ……?
「あの……お兄ちゃん、ゴメンね……待たせちゃって」
う~む……と、自分の世界に入って悩んでいると、キアラちゃんに呼ばれたので思考を中断し、カウンターの前にいく
「あぁ、大丈夫だよ。ちょっと気になることがあってね、そのこと考えてたから」
「えっと……、邪魔しちゃった?」
カウンターの後ろから出てきていたキアラちゃんは、待たせてしまったのと、考えを邪魔したのではないかと言うことで、申し訳なさそうな顔をしている
「そんなことないよ。知らない物ばかりだしね、楽しく待たせてもらってたよ。だから気にしなくていいからね」
「本当に?」
「本当に」
コレでおしまいとばかりに、髪がボサボサにならない程度に強く撫でる
「ん~~……!」
いつ見てもキアラちゃんの笑顔は癒されるな
「あなた、キアラちゃんの知り合い?」
キアラちゃんで和んでいたら、ターラさんに声をかけられた
そう言えば挨拶がまだだったな。何時までも自己紹介しないって言うのは失礼だし、そろそろちゃんと自己紹介しといた方がいいな
「そうです。初めまして、クドーと言います。キアラちゃんとは一週間程前に泊まった宿で会いまして、今日は予め虫取りをする約束をしていたため、それで森に行って虫を捕った帰りなんです」
ターラさんは、俺が自己紹介をする間、上から下まで怪しくないか観察していた
「……うん!あなたはさ信じて良さそうね。私の名前はターラよ、この薬屋の店主をしているわ。仲良くしましょ。よろしくね」
ターラさんは俺の何処を見て、何を見たのか分からないが。友好関係は築けそうだから問題ないだろう
「はい、よろしくお願いします」
俺とターラさんは、お互いに手を出して握手をした
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[19:06]
握手をした後、俺はターラさんに冒険者で職業が人形師である事。また、様々なスキルを覚えたい為に、スキルを教えてくれそうな人を探している事を話した。
「なるほどねぇ、冒険者なら納得だわ」
ターラさんは、何やら納得した様子で頷いている。…………その度に胸が少し上下する
「……?何が納得なんですか?」
「ん……実はね、この服にはちょっとした仕掛けがあって、その仕掛けがあなたには効いてない様だから。冒険者って言われて、見た目あんまりそうは見えないけど、あぁそれならあるかなって納得したの」
服に仕掛けがあると言われて、改めてターラさんの姿を観察する
髪形は濃いめの茶髪を、肩甲骨が隠れるくらいまで伸ばしたストレートヘアで、顔は少し艶っぽいきれいな顔で
体形は胸は大きく出ていて、腰は細過ぎず適度に肉が付き、お尻も大きくも小さくもない大きさで、手足も柔らかさのあるキレイな手足で、全体的に見てバランスのとれた健康な体つきだ
そして話に出た服は、薄緑色の布地の、首周りと胸元が大きく開いた、長袖のセーターの様な服で。胸の真ん中に、布地より少し濃い赤い糸で花の刺繍があり、花の刺繍の左右に、青い糸で花の周りを飛んでいる二匹の蝶の刺繍がされていた
下は、薄い茶色の布地の、シンプルでゆったりとした膝下までのスカートだった
まぁ……確かにあの服は、男の俺には眼の毒だよな。……眼福だけど
「……服に仕掛けですか?何か有るようには見えないですけど?」
【見る・次】や【鑑定】のスキルを使っても、服に何か有るようには見えなかった
「ふふっ、いいわ……教えてあげる。でもまぁ、今日のところは本来の目的だけにしておきましょ。今から説明すると時間が掛かるし、だいぶ遅くなってきたから、キアラちゃんもお家に帰らなきゃいけないしね」
う~ん……、残念だが確かにもうだいぶ時間が遅いしな。仕方ないか
「そうですね。今日は本来の目的だけにしておきます」
本来の目的ーーキアラちゃんは蝶を売りに。俺は何かスキルを覚えられないか、あと若干の好奇心だ
「キアラちゃん、蝶を売ったら帰ろうか。アミラさんが心配しちゃうし」
隣で話を聞いていたキアラちゃんに確認を取る
「うん、それでいいよ」
キアラちゃんは開いている窓から外を見て、外が暗くなってきたのを確認すると、帰ることに賛成してくれた
「それじゃあコレ、全部売りますんで、よろしくお願いします」
「おねがいします」
肩に掛けていた籠をターラさんに渡すと、キアラちゃんもターラさんに籠を渡した
「ふふっ、お願いされました」
ターラさんは虫籠をカウンターに置くと、少し待つように言って、店の奥の部屋に入っていった
「よいしょっ……と、ふぅ、お待たせ」
奥の部屋に入っていったターラさんは、三分も経たない内に、一抱えほどの透明なガラスケースを持って戻ってきた
ガラスケースの上部は、同じガラス製の蓋が付けられていて、蓋には開け閉めできる開口部が付いていた
「さて、それじゃあ計算するわね。ちょっと待ってて」
ターラさんはキアラちゃんの虫籠を持ち上げて、ガラスケースの蓋の上に置き、ガラスケースの開口部を開け、虫籠の中の蝶をガラスケースの中に移し始めた
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[19:18]
「えーっと、キアラちゃんの方が、緑薬蝶が十二匹、白療蝶が六匹、計十八匹。緑薬蝶一匹の買い取り価格が60Sだから、十二匹で720S、白療蝶一匹の買い取り価格は80Sで、六匹だから480S、合計金額が1200Sになるわ」
……えっ?!マジで!虫ってそんなにすんの?!
「それで、クドー君の方が、緑薬蝶が十四匹で840S、白療蝶が五匹で400S、計十九匹の合計金額は1240Sね」
虫でそんなに稼げるなら、明日から虫でも取りまくろうかな……
「どう、1200Sと、1240Sで買い取らせてもらうけど、いいかしら?」
「あっはい、俺はそれでいいです」
「わたしもそれでいいよ」
俺は、買い取り価格の相場がどんなもんかは知らないが、キアラちゃんは常連客みたいだし、ある程度知ってるだろうから、キアラちゃんに文句がないなら、俺には言うことはないな
「そう、それじゃあ……はいっこれ。キアラちゃんに1200Sと、クドー君に1240Sね」
ターラさんはカウンターの後ろで何やらゴソゴソやって、それが終わって取り出したのは、チャリチャリと音の鳴る分厚い布の袋
「その袋はあげるわ。キアラちゃんはお得意様だし、クドー君とはなんとなく、長い付き合いになりそうな気がするしね」
ターラさんが言うにはこの袋、どうやら簡単な仕掛けがされた財布で、持ち主意外は開けられない使用らしい。見た目普通の巾着袋なのに、どういう仕組みなんだ?
「へ~、ありがとうございます。大事にします」
「ありがとうございますなの」
疑問は一先ず置いといて、ターラさんにお礼を言って頭を下げると、キアラちゃんも一緒にお礼を言って頭を下げた
「ふふっ、どういたしまして」
そう言ったターラさんの顔は、どこか母性の様なものが見えた気がした
「それでは、今日はこの辺で帰ります。色々聞きたい事があるので、また今度来ます」
話に一区切り着いたところで、帰宅することにするーー俺は宿だがな
「ターラさん、またね」
「ふふふっ、うちは結構暇だから、いつでもいらっしゃい♪」
「では、また来ます」
「バイバイ、ターラさん」
「クドー君、また来るのを楽しみにしてるわ。キアラちゃんもまたね。気をつけて帰るのよ」
それから、ターラさんの店からキアラちゃんの家ーー宿に帰り、とりあえず一泊分部屋を借り、夕食の時にキアラちゃんが来て、アミラさんも交えて今日の出来事を賑やかに話し、一時間ほどしたところでお開きになった
キアラちゃんが「なのっ子」になってしまった。
色々御意見、御感想、御指摘を頂きましたので、一区切り着いたら、これまでの話を修正したいと思います。