表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

一匹見つけたらいっぱいいる

作者: K-Chu

学生。

アパートにて独り暮らし。

掃除はしばらくしていない。

台所には洗わずに放置してある食器が積んである。

テーブルの上にはポテトチップスの袋。

カップラーメンのカップ。

いい加減に気になるレベルになってきたから、学校から帰ったら掃除をしよう。

学校へ向う。



夕方、アパートに戻ってくる。

帰宅部の特権でまだ日は落ちていない時間。

玄関を開ける。


ガタッ!ガサガサガサ!


でかい音。

なんだ!?泥棒か!?

鞄を放り、玄関に転がっていた傘を片手に部屋に入る。


ガサガサガサ。


奥の部屋から。


ゴクリ。

緊張で乾いた喉を唾で潤す。

行くぞ!


奥の部屋に飛び込む。


・・・?


誰もいない?

窓も閉まったままだ。

しかし気のせいのはずはない。

押入れが目に付く。

そうか、ここに逃げ込んだんだなクソッタレめ。

学生だからとなめるなよ。

足音を立てないようにそっと押入れに近づく。

手をかける。


・・・・・・1、2、3!


いた!

どろぼ・・・ぅ・・・め・・・・・・


あれ?


そこにいたのはおびえてこちらを上目遣いで見上げる少女。

この子が泥棒?

まぁいい。

部屋に無断で入っていたのには変わりがない。

しっかりとおしおきして親のところに怒鳴り込みにいってやるわ!!

そんな涙目で見ても容赦はしないからな!




「どうしたの? 大丈夫。お兄ちゃん怖くないから、どうしてこんなところにいるのか教えてくれないかな?」


事前の想いとは裏腹に口からは優しい言葉。

しまった。

普段から抑えることの出来ないいい人オーラが発動してしまった。

くっ!いや、まだ立て直せるはずだ。

ちゃんと言い直しt「わかんない」


・・・わかんない?


「わかんないって?」聞き返す。

涙目が少し薄まっている少女。

「わかんないの。気づいたらこの部屋にいたんだもん」


どういうことだろう。

そういえば、この子はどうやって家の中に入ったのだろうか。

朝、しっかりを鍵をかけて出たことを覚えている。

はて・・・?


少女の格好を見る。

少し薄汚れた白のワンピース。

茶色くストレートに腰まで伸びた髪。

ピコピコと勝手に動くアホ毛が2本。

「いつからここにいるの?」質問を続ける。

「えっと・・・お昼くらい・・・かな。でも、もっとずっといたような・・・」

首をかしげる少女。

どうやらそれもわからないらしい。


「名前は?」応えられそうな質問にしてみる。

「わかんない」

「いや、それはないだろう」

「だってわかんないもの」

名前がわからない?これは困った。


・・・カサ。


そのとき、部屋の隅から一匹のゴキブリが顔を出した。

うわー、そりゃこんだけ汚かったらゴキブリも出るよなー。


思い出す。

そうだ、部屋の掃除をしようと思っていたんだ。

少女を見る。

「もういいよ。お兄ちゃん怒ってないから、もう自分の家にお帰り」

問題を丸投げる。

「・・・わかった」

よし、これで問題は解決だ。



動こうとしない少女。

「帰らないの?」尋ねる。

「ここがおうち」返答。


「あのね・・・」

どう切り出そうか悩む。

「ここはお兄ちゃんのおうちであって君のおうちじゃないの」

うろたえる少女。

「でも、ここがおうちなんだよ?」

・・・・・・どうやらこの少女とは会話ができそうにない。

もういい。

しばらく放って置いたら勝手に帰るだろう。

台所に向う。

冷蔵庫からプリンを取りだす。

スプーンを取り出し、部屋に戻る。

少女にふたを開けて渡す。

「ほら、これを食べたら帰るんだよ」

スプーンをもの珍しげに見つめる少女。

プリンをすするように食べる。

まぁ、食べ方は人それぞれだ。


掃除を始める。まずは散らかったゴミの処分だ。

ゴミを片付け、散らかっていた服をベランダの洗濯機に放り込み、溜まっていた食器を洗い、適当に物を片付け、掃除機をかける。

ふと、気づけば、すっかりと夜になってしまっていた。

ずっと忘れていたが、流石に少女も家に帰っただろう。

押入れをのぞく。

・・・まだいた・・・


どうしたものか。

こんな時間となっては少女を独りで家に帰すわけにもいかない。

しょうがない。送っていくか。

少女に声をかける。

「おうちはここだよ?」

まだ同じことを言っている。

本当にどうしたものか。


クー。


少女のお腹から音。

ついでだ。晩御飯を食べさせてやろう。

早速きれいになった台所を使う。

買っておいた6枚カットの食パンに包丁を入れ、レタスとトマトとハムで簡単にサンドイッチを作る。

大皿に乗せ、テーブルへ。コップにはミルク。

「ほら、こっちに来て食べよう」少女を呼ぶ。

トテトテと台所に来る少女。


「いただきまーす!」パクつく少女。

随分とお腹が減っていたらしい。

少女のために用意したサンドイッチがすぐになくなる。

しょうがなく自分の分も渡す。

一心不乱に食べる少女。

ミルクをゴクゴクと飲み干す。


「ごちそうさまでした!」満面の笑み。

「よし、ご飯も食べたし、帰ろうか」

「はーい」元気な返事。


・・・トテトテと再び押入れに戻る少女。

またか・・・

少女を追って押入れへ。


少女ともう一人。


あれ?増えてる?

少女と同じような格好の女性。

顔立ちもなんとなく少女に似ている。

同じく2本のアホ毛。

お姉さん?


「妹を迎えに来ました」女性が言う。


やっぱりお姉さんか。

「ありがとうございます。すっかり妹がお世話になってしまったようで」 頭を下げるお姉さん。

「いえいえ、迎えにきていただいて助かりました」

「ほら、貴女もお礼を言いなさい」 少女に声をかける。

「おにーちゃん、ありがとー」 少女。


「それでは失礼します。今後ともよろしくお願いしますね」

「はい、こちらこs・・・今後ってどういうk」


ドロン!煙が噴出す。


驚き、目を瞑る。


目を開ける。


・・・二人がいない?

押入れをよく見る。


さっきまで二人がいた辺りに2匹のゴキブリ。

大きいのが一匹と小さいのが一匹。

二匹のゴキブリはしばらく触覚をサワサワと動かしていたが、やがて、押入れの奥に消えていった。

後日、学校から帰ると再び少女が押入れにいた。

こちらの顔を見ると満面の笑みで抱きついてきた。

どうやら懐かれたらしい。

もう一度押入れを見ると、少女のお姉さんと、見知らぬ少女がもう一人・・・



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ