第7話〜『彼女』の先輩①。
「よぉ! 君たち。もう慣れたかな?」
部活が終わり片付けをしていた僕達に、元気な声を掛けて来た人がいる。
バレー部マネージャにして「ミス南高」でもある、黒田ユウコ先輩。
学年は1コ上で、選抜クラスの7組所属。成績は常にトップクラス。
頭脳明晰、容姿端麗。
でも本人は、そのことを全く鼻にかける風でもなく、明るく人当たりよい性格なので、誰からも好かれている。
特に男子の間では、憧れの的だ。
「センパイのお陰で、ずいぶん慣れましたぁ!」
軽薄そうな口調でアキラが答える。
綺麗な人だよなぁ……
僕はいつも見とれてしまう。
くっきり二重のぱっちりした目、鼻筋の通った高い鼻、形のいいピンクの唇。
とてもスタイルが良く、肉感的な体付きはいつも目のやり場に困る。
「…ウスケ君は?」
「え? はい!」
長い間見とれてたみたいで、話の流れがわからない。
「コイツ話聞かずにセンパイに見とれてたんですよ。むっつりスケベっすから」
「へ、変なこと言うなよ!?」
余計なこと言いやがって!
「へぇ? リュウスケ君てば、むっつりスケベなんだぁ? やぁらしいー」
明らかにからかい口調の先輩の前で、僕は顔を赤くして俯くしかなかった。
「でもセンパイなら、コイツじゃなくったて見とれちゃいますよ。ホントかわいいですもん」
サラッと出る褒め言葉が、僕には出来ない芸当だ。
「ありがとう。みんなそう言ってくれるよ」
と、先輩はイタズラっぽく笑う。
僕だってアキラやトシクニみたいに、女の子と楽しくお喋り出来たらいいのになぁ……
「でもさ…」
思案顔になった先輩の口から思いがけない名前が。
「『サヨ』にはかなわないよねぇ」
「サヨ、ってあの『イケウチサヨ』っすか?」
アキラが勢い込んで訊いた。
「そう。その『イケウチサヨ』」
少し笑いながら先輩は答える。
『彼女』だ。
ここで聞くとは思わなかった、忘れられない『彼女』の名前。
意外な話の展開と、早く続きを聞きたい気持ちがいっぱいになって、僕はまた先輩の顔を見つめてしまった。